3
あれからどれくらい経っただろう。
私はどろどろになって、彼女の中で暮らしている。
彼女の外には出ていない。自分へ戻ろうとも思わない。医者としての仕事にはやりがいを感じていたはずだった。しかし……もうどうでもよくなっていた。
どろどろの身体がそう思わせるのだろうか。
ここは生温かく、湿っている。気が遠くなるほど心地がいい。生まれ出ない赤ん坊のように、彼女の体温と鼓動に抱かれる毎日に、いつしか満足するようになった。
彼女が眠ると、私は舌を
身体を発光させながら、喉の奥へ行き、肉壁に小さな両手を当てる。
唇をつけ、ちゅうと彼女に吸いつく。
そこに赤い痕がついた。そのすぐ隣にも吸いつくと、点は線になった。線はやがて文字となる。
こうやって愛を伝えるのか。
私は
愛が溢れると、意識が溶ける。
きっとその蜜のようなものを、どろどろが食らっているのだろう。
彼が消えたように、私もいずれ消えるのか。
それなら、それでもいい。
口づけを続けながら、私はそう思った。
〈了〉
どろどろの口づけ ピーター・モリソン @peter_morrison
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます