9. 手加減しよう。少しは。

「嫌なら嫌って言えばいいじゃん…」

 やはり、不機嫌な顔していたと思ったらそういう事だったのか…。

「気まずくなるだろ…」

「その気がないのに、ああいう態度はどうなの?」

 思わせぶりな態度には定評があるんだけど…。どうせ中身知って私の事なんてと去って行くだけなのだから。ほっとけ。同期よ。

「その気があったら、どうするの?」

「阻止する」

「なくても?」

「阻止する」

「阻止する必要ないんじゃない?」

「その気がなくても、いつか多田ただを好きになるでしょ…」

「ならないよ」

「なるんだよ。わかってないな…」

「嫌われるよりいいんじゃない?」

「恋愛的要素でなければ、ね」

「確かに…。それは面倒だな…」

「面倒って言うなよ」

「いつか結婚して幸せな家庭を築いてって漠然な事は想像するけど…。実感としては一生…」

「独りなら一緒にいるよ。俺が」

「そりゃ、どうも」

「多田のこと一番大切に出来るの、俺だけでしょ」

「それはわかんないよ?」

「いやいや、俺だけですよ」

 確かに、三戸みとだけかも知れない。

 こんな自然に本音で話せるのは、三戸しかいない…。

 でも、三戸には…幸せになって欲しい。

 あの時、避けたのに。何でまだ…。バカだな…。

 三戸も。俺も…。

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