8. 見えない火花。

「あ、あの…」

「はい」

 同じ部署の後條ごじょうさんが、珍しく存在感を出して目の前に現れた。

「甘いモノはお好きですか…?」

「はい…人並みには…」

 極度に甘くなければ、大丈夫だよ。という微笑みで後條さんを見たら、凄く顔が真っ赤で…。何か…申し訳ない気分になった。

「こちらをお受け取り下さいませ」

「ありがとう…」

 今日は俺の誕生日でも、何かのイベントがあるワケでもない…。

 首を傾げながら、

「後條さん、何かあったの?」

「何もないです。何かなきゃお渡ししちゃいけませんか?」

「いや、いいんだけど…」

「美味しそう…」

三戸みと、コレは俺が貰ったの」

「食べてもいいでしょ?」

 後條さんに聞いて頷いた瞬間、1個奪われた。

「ありがとう…」

「いえいえ…」

 複雑な顔してる後條さんの気持ちを知ってか、俺の腕を掴んでいたのにもっと積極的にいつの間にか組んでいる…。

「食べよう。食べよう」

「いやいや、まだ仕事がある」

 後條さんから遠ざかるように移動した…。強制的に。

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