第4話 雨の日、のち晴れ(1)
二
残念なことに、雨の日が続いた。
雨の日だと、なおさら音音は学校に姿を表さない。早くも、音音を救うための手段が限られてきていた。
そしてちなみに、
「あー、優一郎ね。あいつは今仕事の方で忙しいから休学中だよ」と征爾が試験管を振りながら言う。
「仕事?」
佰乃は準備室の窓辺に腰掛けた。今、準備室には佰乃と征爾、ハルしかいない。
外では、ザーザーと雨が降っている。
「ああ。そろそろ佰乃にも手伝ってもらおうと思ってた。夜に陰陽師が行っている見回りだ。優一郎はある件を追っていて学校には来れていない」
佰乃は頷く。夜に行う見回りについては否定するつもりないし、陰陽師として当たり前のことなので良いのだが。
「なんで、はぐらかすの、お父さん。あの件って何?優一郎さんは何を追っているの?」
征爾は試験管を洗う。
「………兎だよ」
「兎って……」
「佰乃達が救おうとしている兎を、彼は祓おうとしている。はて。どっちが先に辿り着くかな?」
「お父さんの意地悪っ!」
佰乃は怒鳴ると、勢いよく準備室を飛び出した。
ハルも慌てて追いかける。
「ええ……。お父さん、意地悪したつもりはないんだが………」
「分かってるよ、お父さん」
ハルは去り際、振り返って笑う。
「生徒の個人情報、今回こそ漏らしてないんでしょう。もし、彼に言っていたらもう兎はやられているだろうしね」
そう言って、飛び出して行って、準備室に残された征爾は窓の外を見つめる。胸の内がざわざわして落ち着かない。
なんだか、嫌な予感がするのだけれど、
そこまで彼らに伝えてしまっては成長にならないだろうと、征爾は黙って作業を続けた。
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