第2話 誘拐(2)





この世界には、極稀に『生まれ変わり』が誕生する。

前世の魂を引き継いで、来世に生まれ変わってくるのだ。

その人自身は何もかも違うものの魂が前世の色で輝き続け、また稀にその魂をかき分けられる人がいる。妖怪はそのうちの生き物に分類され、人間の魂を嗅ぎ分けては食事とし、人間から生命力を得ている。


しかし、魂の召喚―――『生まれ変わり』には一つのルールが存在する。


それは、前世にて正確に魂を処理し、保管され続けることだ。処理をした上で儀式も行わなければならない。

佰乃はたった今、カラス達から、自分が妹の生まれ変わりだと云う話を聞いて疑問を得た。

此処数年の話ならばともかく、童話にも残るほど昔の話の時代に、魂の処理の儀式など行う事が出来たのだろうか?否、そんな説が昔から存在するのだろうか。

佰乃は学校の哲学の授業を受けた時に聞いた話を思い出す。

「ちょ、ちょっと待って。私が貴方達の妹さんの生まれ変わりというのはないと思うんだけど……」

そう云った私の言葉を全力で塞いでくる。

「其れは無い!貴方は俺達の妹だよ!絶対にそうだって!」

「いや、でも………」

「だって、僕感じたんだもん!」と小さい青年が自分の胸元に手を当てて云う。

「僕の心の中にある何かがドクンって高鳴ったんだ!君の姿を見た瞬間、この……この胸の中のよくわからないものがドキドキし始めたんだよ!」

「我々の中でも魂を感じ取れるのはこの末っ子のユーリアだけでな。私達は彼の感覚を信じて今まで過ごしてきた」と補足するように三白眼の青年が云った。

佰乃は云う。

「でも、それって……別の意味とかなんじゃ………?」

青年達はキョトンとした目で佰乃を見た。その目つきがカラスのようで少し怖かった。が、彼らから此方に敵意は感じられないので、佰乃は不思議と嫌な感じがしなかった。

「……」

自分で云うのは恥ずかしいけれど。

佰乃はチラリと上目使いで青年達を見る。

彼らも生前は人間だったのであれば、此の感情もある筈…………。




「………一目惚れ…………ってやつじゃ無い?」



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