第14話 依頼(2)



物語は、八人の兄妹と家族のお話。


あるところに王様と王女様がいて、二人には可愛い七人の息子がいた。

ただ、どうしても女の子が生まれなくて、頭を悩ませていたところ、八人目の子供が女の子だった。しかし女の子はとても体が弱く、清く聖なる水を汲んで浴びさせなければ生きられないだろうと云われ、王様は七人の兄に、井戸から其の水を汲んでくる様命じられる。

井戸の水を無事汲んだ七人の兄はお城に戻ろうとするが、道中で水をこぼしてしまった。其のため又、井戸へと引き返して水を汲みに行く。

一方、王様はお城で息子達を待つ。

なかなか帰って来ない息子達を思って王様は、

「どうせ道端で遊んでもいるんだろう。カラスになってしまえ」と云った。

云った途端、兄達七人はカラスの姿になってしまった。

数年経って、娘の姫は健康にすくすくと育つ。しかし娘は兄達がいたことを知らない。ある日、兄達がいたことを知ると、一人で探しに行く旅へと出かける。


太陽に会い、

お月様に会い、

星に会い。


協力してくれたのは星だけだった。星に兄達の居場所を教えてもらい、カラス山へと向かう。そこには、星がくれた鍵が必要だったが、来る途中で無くしてしまった姫は自分の指を切り落として鍵穴に差し込み、カラス山へと入った。

娘がカラスの山に入ると小人が出てきて、兄達はしばらくしたら戻ってくると教えてくれた。娘は、カラス達の食べ物と飲み物に少し口をつけ、家から持ってきた指輪を最後のコップに沈めた。

戻ってきたカラス達は、自分たちの食事を人間が食べた事に気がつき、誰が食べ物に口をつけたのか考えを巡らす。そうこうしているうちに最後のカラスがコップに残された指輪を見つけ、妹が救いにきてくれてば人間に戻れるのにと云う。

隠れていた娘が兄達の前に姿を表すと、カラスたちは人間の姿に戻り、みんなは大喜びで家に帰った…………。

と云う、話だ。

「……まぁ、随分と……残酷なお話だな……」

「中を読んだらもっと残酷だよ。お話で出てくる太陽は人間を食べてるし、月も人間を食べてるし、結構グロてすくだよ」

うえぇ。

「グリム童話ってそう云う残酷な話だっかりだよなぁ………」

ハルは本を捲った。

「前回の妖怪もそうだったけどさァ、童話にまつわる妖怪が多いのかなァって思ってハルは思ったわけ。このお話は兄妹のお話なんだけど、靁封町東地区で女性ばかり襲われてるってことは、其のカラス達も娘を探してるのかなァって」

「東じゃなくて西な」

「あ」

全く。

感が鋭いなって思ったけど、こう云うところはアンポンタンなんだよなぁ。

天人は捲られた頁から、少しずつ読んでいく。

読んでいけばいくほどわかる意味不明な不気味さ。これが子供に読ませる童話で良いのかと思いつつ、物語の伝えたい道筋なども見えてくる。

一通り読み終わったところで、俺は本を閉じた。

「じゃあ、其のカラス達を退治するには姫さんを見つければ手っ取り早いって事になるのか………」

「そうだけどさァ、抑、姫さん生きてるのかって話だよねェ。カラス達は妖怪だから寿命なんてあまり関係ないんだろうけど、姫さんは人間でしょう?もう遠い昔の話だったら死んでるんじゃ―――」

「死んでようが、生きてようが、関係ねーよ」

俺たちは半妖だぜ?

人間も、妖怪も、霊でさえ見れる。


いや、

俺なら確実に視える。



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