55.「迷惑系動画を撮ろうかなって」

「迷惑系動画ぁ?」

 呆れたように広井さんが言った。

「人に迷惑をかけてでも……ありったけの富と名声をかき集めたい!!」

 そんな広井さんに対し、君は情熱のままに叫んだ。

 君は迷惑系動画配信者として世界に覇を唱えたいのだ。


「えぇ……で、迷惑系動画ってったって、どんな動画を撮るつもりなの?」

「初回動画では国会に乱入しようかなって」

「迷惑の規模が国家レベルなんだ……」

「迷惑もインフレが激しいんだ……今や、そんじょそこらの迷惑じゃ歯牙にも掛けられないよ」

「じゃあ、真っ当に生きなよ……」

「悪いけど、迷惑にかける情熱は人一倍だからさ」

「すっごい迷惑だねぇ……けど、そんなに迷惑をかけたいならもっといい方法があるよ」

「いい方法……?」

「殺人ピエロになって殺戮ショーを開催するんだよ」

「殺人ピエロに!?」

「どんな人間にも殺人ピエロになる殺人ピエロ因子が存在していると言われているからさ、よくわかんないけど頑張ってみたら殺人ピエロになれるんじゃないかなぁ~と思うんだ」

「なるほどなぁ、殺人ピエロと言えば世間的にも迷惑な存在だから迷惑系動画配信者と共通のスキルツリーをもっている気がするぞ!!」

 そう言って、君は拳を突き上げた。


「ようし!俺は殺人ピエロになる!殺人ピエロになって自分の殺戮ショーを動画サイトで配信するんだ!!マジで迷惑だし……なんなら動画配信サイトにとっても迷惑だから、もう世界中折れの話題でもちきりになるぞ!」

「うん、頑張るといいよキミ」

「じゃ、とりあえず殺人ピエロ修行に行ってくるよ。入学したばかりの高校だけど修行の旅は辛く苦しいから辞めないとな……ありがとう広井さん!」


 かくして君は殺人ピエロ系迷惑動画配信者を目指して修行を始めた。

 数多の困難が待ち受けているだろうが、夢見る力で乗り越えろ!

 君の戦いは始まったばかりだ!


【夢 END】

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