48.「大丈夫、こういうこともあろうかと新入生アンドロイドを量産しておいたんだ」

 ずらりと十体の新入生アンドロイドが職員室に並んだ。

 だが、十体しか新入生アンドロイドがいないというわけではない。

 職員室のキャパシティを遥かに上回る数の新入生アンドロイドがずらりと並んでいる。


「「「新規部活動の創設を認めてください!!」」」

「う、うむ……」

 圧倒的な数の圧力に、教員は部活動申請書に許可を出すことしか出来なかった。

 かくして、破滅的科学部が創設されたのである。


「うわぁ、クラスメイトの八割がアンドロイドだったんだねぇ」

 破滅的科学部の部室で広井さんがしみじみと言う。

 科学技術の発展がここまでの領域に達していたとは、アンドロイドの外見も動作も人間そのものである。

 君に言われなければ、広井さんがその事実に気づく日は来なかっただろう。


「で、破滅的科学部って何するの?」

「それが……もう目的は達成されちゃったんだよね」

「えっ?」

「一人じゃ量産体制にも限界があるからアンドロイド自身に自己複製可能な機能をつけたんだよ。アンドロイドは人間の成長を遥かに上回るスピードで生産を行い続けるから、人間以上の知能を持ったアンドロイドの数が七十億を超えるのも時間の問題なんだよ」

「えぇ~……ちょっとまって、ちょっとまって」

「しかも広井さんが気づかなかったように、アンドロイドは人間と変わらないような存在だから、知らない間に社会に侵食していくことになる……近いうちにアンドロイドの政治家も生まれるだろうね」

「……でも、アンドロイドに人間を滅ぼす理由って無いんじゃないかなぁ?」

「アンドロイドには無くても僕にはあるよ、破滅的科学ってそういうことだからね。だから……まぁ……」

「いつまで残っているんだ、早く帰りなさい」

 教員が君たちに注意を行った。

 部活動申請を受理したのと同じ教員である、しかし――なにか違和感を感じる。

 見た目だけは同じで、中身が入れ替わっているような。


「……帰ろっか」

「……うん」


 おそらく人間社会は何一つとして変わらないまま。

 いや、少子高齢化などあらゆる問題が解決した状態で滅亡するのだろう。

 街行く人達の一人一人に違和感を感じながら、広井さんはそう思った。


【賑やかな滅び END】

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