26.変なことをするつもりはない、健全に歌うのだ

「あ~~~~!!!楽しかったぁ」

 満足げな顔の広井さんと共に君は家路につく。

 広井さんの家は君の家と正反対の方向にあるので、広井さんを送っているとなると二倍の距離を歩くことになるが――そんなに大して問題はないだろう。


「ね、キミ……また遊びに誘ってよね」

 勿論、君は頷く。

「でも、次は……ちょっと変なことをしてきてほしいなぁ」

 ンヒヒと広井さんが笑う。

 沈みゆく太陽が最後の抵抗のように空を赤く焼いている。

 広井さんの顔が見えない。


「ま、でも今回はアタシの方から変なことをしちゃおっかな」

 そう言って、広井さんが少し早いたんぽぽの綿毛を拾い上げて君に向かって吹きかけた。


「間接投げキッス……なぁんて」

 そう言って、ンヒヒと広井さんが笑う。


 君の青春はまだ始まったばかりだ。


【変なことしないEND】

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