3話 説明
昨晩、魔法少女は居ると言ったよね。
都市伝説や噂話にもってこいのロー・ファンタジーだと思ってるだろう?
居るんだよ、本当にね。
この街どころか世界中に魔法少女は居るんだ。
何故断定出来るかって?
私が魔法少女だから、なんてのはジョークにもならない。
私みたいな大人の女性が魔法〝少女〟なんてとんだ笑い話だ。
何故魔法少女の存在を肯定出来るのか、それは魔法少女の存在意義に秘密があるのさ。
ああ、魔法少女と何度も昨日から言ってるがおおよそ日曜朝のアニメを想像してくれれば良いよ。
アレは少女達に魔法少女への憧れを植え付ける為に先達の悪魔が生み出した作品だからね。
さて、魔法少女の存在意義とは何なのか。
世に蔓延っているフォークロアによると、悪魔を退治し人々を守る為だなんて言われているね。
それは知っているだろう?
それは真実を知らない愚かな種族の希望に過ぎないんだ。
魔法少女は身体に魔力を宿している。
それも一般人とは比にならない程に多大な量の魔力だ。
だから空も飛べるし、光のビームだって放てる。
しかしそれは全て、仇敵である悪魔の繁栄の為のモノなんだ。
悪魔は食事を必要とせず、魔力を取り入れて生きる。
一ヶ月も魔力を食べられなければ死ぬ。
察しは付いたかな?
そう、魔法少女とは悪魔の食糧なんだ。
それも大変栄養価の高いスーパーフードみたいなものさ。
あっ、スーパーフードって知ってる?
人間も食文化に対しては貪欲だよね。
そんな面倒な方法を取らずとも点滴なりサプリメントなりで簡単に栄養は摂取出来るのにね。
すまない、話が逸れた。
どこまで話したかな。
そうだ、魔法少女は悪魔の食糧って話だ。
そう、魔法少女は悪魔が効率的に大量の魔力を摂取する為のスーパーフードなのさ。
しかし魔法少女は自然発生する存在ではないんだ。
君達が口にする野菜や家畜の肉が野生だけでは足りないようにね。
つまり、悪魔は食べる為に魔法少女を生み出し続けている。
厄介なのは食糧である魔法少女が生んでくれた悪魔様に反抗する事だが、それもちゃんと意味がある。
自然発生しない魔法少女がどうやって生まれるのか、それは魔法少女を生み出せる能力を持った悪魔が人間の少女と契約をするのさ。
アニメは観た事ある?
何の力も持たない少女が妖精さんと出会い、敵と戦う為に力を得るというくだりがあるだろう。
あれは実に真実に近い描写だよ。
そこまでやって大丈夫かと心配になる程にね。まあその辺はテレビ業界で暗躍している悪魔達が上手い事やってくれるだろう。
で、だ。
アニメに登場する妖精さんの姿、君も知っているだろう。
小さく可愛らしい獣のような見た目だよね。
まさに、君の新たな身体のようにね。
ははっ、その通りさ。
君は悪魔である私と主従契約を交わし人間から悪魔へと進化したのさ。
そして君こそが妖精さんって訳だ。
ならばもう、君の使命は分かるだろう?
少女と契約を交わし魔法少女を生むんだ。
大丈夫、騙せるさ。
その為に君達のような種族には特殊な能力がある。
願いを一つ叶えてあげられるんだ。
ああ、何だって叶うよ。
富、名声、力、人の心だって操れる。
あぁ、一つだけ叶えられない願いがあった。
死んだ生命を蘇らせる事だ。
一度死んだ命はどんな悪魔にだって蘇らせる事は叶わない。
それ以外の願いなら何でも叶えられる。
妖精さんである君が少女の手を取り、共に願うんだ。
ああ、それだけで良い。それだけで願いは叶う。
願いを叶えた代わりに少女は魔法少女になる。
体の良い文句は、そうだな。
悪魔と戦う力と責任を背負った、とかかな。
魔法少女の契約を結ぶとね、魔力を固めて物質化した物が顕現する。
人間界にある物で例えると金平糖かな。
それを一粒口に含めば少女は変身し、魔法を行使出来るようになるんだ。
一つ気を付けてほしいのが、金平糖は必ず一粒ずつ食べさせる事だね。
あれは叶うはずの無い願いを強引に叶え、その時に発生した世界の因果のうねりから生まれた物なんだ。
ああ、この辺の難しい話は知り合いからの受け売りだけどね。
間違っていたらすまない。
とにかく、金平糖は一粒ずつ。
このルールを違えば許容量を超えた魔力が魔法少女の身体に悪影響を及ぼす。
最悪の場合、魔力中毒を引き起こし死んでしまうだろう。
何せ魔法少女と言えど素体はただの人間だ。
魔力への許容量が悪魔と比べると低いのさ。
さて、そんな魔法少女は金平糖を使い切ると勝手に死ぬ。
都合が良いだろう?
それこそが私達悪魔が生み出した魔法少女への足枷さ。
金平糖は因果のうねりから生まれ、因果を強引に捻じ曲げたのは少女自身。
だから捻じ曲げられた因果は奇跡の代償として大元の生命力を奪い世界全体のエネルギー量の辻褄を合わせるのさ。
難しいって?
とにかく金平糖を使い切れば魔法少女は死ぬとだけ覚えていれば良いさ。
さて、魔法少女が死ねばどうする?
ご名答。
私達が食べるんだ。
しかしだ、悪魔は種族によって特別な能力を持っている。
妖精さんと呼ばれる種族にとっては魔法少女の契約がそれだ。
考えてくれよ、他の悪魔達は強力な能力を持っている。
魔法少女の亡骸を横から奪い取る事なんて容易だとは思わないかい。
何せ契約を終えた妖精さんには他の悪魔に対抗出来る能力が何も無いんだから。
だから妖精さんには自分が契約した魔法少女の亡骸を優先的に得られる魔律が存在するんだ。
人間界で言うところの法律ね、それくらい察してくれよ。
それを破ればどんなに強力な悪魔であろうと悪魔神の裁きを受け、死ぬ。
おいおい待ってくれよ、それでは妖精さんだけが魔法少女の肉を食べ続け膨大な量の魔力を蓄え、いずれ他の悪魔じゃ敵わないくらいに強大な悪魔が生まれてしまうじゃないか。
その為に生まれた魔律が、悪魔の主従契約だ。
昨晩のキスがその契約さ。
ああ、ちなみに契約をしたから君は悪魔になったんじゃないからね。
生身の人間が、悪魔が食べるべき魔法少女の肉を食べたから悪魔になれたんだ。
そこのところは勘違いしないでくれたまえよ。
妖精さんとなった君は悪魔である私と主従契約を交わした。
この契約により君は魔法少女の肉を独占出来ないんだ。
君に優先的に割り当てられる取り分は全体の三割だ。
それ以外は主である私に所有権が移る。
更にそれを主が何割かを取り、残りをその主、もしくは魔府に取り上げられる。
そうだ、人間界で言うところの政府だ。
ちなみに、魔法少女の肉を食わずとも一般人の肉からも魔力は摂取出来るからね。
しかし魔法少女の肉には一般人百人分の魔力が詰まっている。
元人間の君にとっては百人を殺すよりも少女を一人騙し殺す方が気が楽だろう。
長くなってしまったが、結論はシンプルだよ。
────少女を騙して魔法少女を生め。死にたくなければね。
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