4、星野メグ
手を握られ、お兄ちゃんと呼ばれて、なんだよこの展開……?
冷たい体温の小さい手が握られ、俺は彼女の歩くスピードに合わせてゆっくりめに足を踏み出す。
「そ、そうだ!名前!名前を聞いて良いかな?」
「ほ、星野メグ」
「星野メグちゃん。良い名前だね」
「…………あ、ありがとうございます」
赤面しながら下を向いてめっちゃ可愛い……。
初恋補正が働いていたとしても、年齢34歳だった俺がこんな一桁歳の子供に照れるってロリコンだったんじゃないかという焦りが出る。
いや、大丈夫。
俺も一桁歳。
一桁歳が一桁歳の子供に好意を持つのは普通だ。
そう、普通、ノーマル!
「お兄ちゃんの名前は?」
「月原太陽」
「そうなんだね。月と太陽が名前にあってお兄ちゃんの名前素敵だね」
「っっっ!?」
名前をそんな風に褒められたことがなくて、嬉しさの津波が襲ってきた。
むしろ、『月と太陽って矛盾してる変な名前』みたいに言われてきたからな……。
コンプレックスな名前をそんな風に言ってくれるとかメグちゃん天使じゃない!?
矛盾という概念を知らないのもあるんだけど、それでも褒めてくれるのはヤバい。
素敵とか嬉しい。
「ど、どう?メグちゃんのお姉ちゃんいた?」
「いない……。もうちょっとあっち」
「あっちは何もないよ。こっちだよ」
「じゃあ、お兄ちゃんにまかせる」
「行こうか」
メグちゃんの指を刺す方向へ歩きだす。
彼女はまだ、この祭が開催している公園の地理がわかっていないようだ。
結構広い公園だからな。
俺は光秀とよく遊びに来るからこの年齢でも問題なく地理が頭に入っている記憶はあるが、確かに似た景色ばかりだから迷いやすい。
しかし、俺が34歳のままだったら誘拐犯だよ……。
良かった、まだ子供で……。
「この辺は人いるからお姉さん居るんじゃないか?」
「居そう!さっきここ来たから」
「そっか」
結局、光秀と遊んでいた周辺に戻ってきた。
希望が見えたように、メグちゃんは目を輝かせる。
「いた、お姉ちゃんだ!」
「あー、良かったじゃん」
「お姉ちゃん!」
そうやって女の子がかけていく女性を見て、「ファッ!?」と声を出す。
「あ、見付けたメグ。どこ行ってたの?」
「お兄ちゃんが一緒に探してくれた!」
「へぇ、良かったぁ。ありがとうございま…………す?」
「…………姉貴?」
何故かメグちゃんが探していたお姉ちゃんとは、俺のガチ姉貴であった……。
いやぁ、若いね姉貴……。
なんて口を開くかどうか、言葉が出なかった……。
やり直しの新しい人生で、なぜか初恋の人がメイドとして家に住み着いてしまった……。 桜祭 @sakuramaturi
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