2、再会する親友

「っ!?あ、あれ……?」


気が付くと、俺は祭りの喧騒の中に立っていた。

会社の棚に押し潰された記憶はあるんだが、意識を取り戻したんなら病院のベッドじゃないのか?

なんでいきなり祭りに放り込まれているんだ?


「わけわかんねぇ……。ここは、天国か?地獄か?」


ぼやきながらポケットに手を突っ込む。

とりあえずスマホで日付確認だ。

そう思いながらポケットの中にあった四角い物を取り出す。


「…………え?」


『ムーンシルバードラゴン』と印刷されたカードゲームのカードを取り出していた。

これは確か、『モンスターシード』っていう小学生の時に大流行していたカードだ。

しかも、俺の昔の切り札とかだった気がする。


いや、今も『モンスターシード』は現役の人気ゲームだが『ムーンシルバードラゴン』はもはや時代遅れの過去の遺物。

なんでこんなんがポケットに入っているのか理解に苦しむ。

そのままポケットをまさぐるが、スマホも財布も何もかもがない。


「ん?」


というか、目線が凄い低くなっている気がする。

意味わかんねぇと混乱していた時であった。


「うげっ!?」


突然首に痛みが走る。

労災の痛みがぶり返したか!?と、思ったがこれ人為的なもんだぞとのけ反り、転びそうになり気が付いた。


「なに、ぼさっとしてんだよ太陽」

「は……?み、光秀!?」

「あ?なんだよ人を幽霊かモンスターみてぇに目ぇ向けてよ?」

「…………え?」


高校の時に事故で死んだ豊臣光秀とよとみみつひでがなぜか目の前に立って、俺に話しかけてきた。

多分、彼にラリアットかなんかをくらったのだろう……。

そして何故か、小学生みたいな童顔でちっちゃい身長をしている。


いや、お前が幽霊そのものだわ……。

労災前に、こいつの命日で墓参り行った相手が目の前にいたら……、ここはあの世か?


あの世で納得しかけた時に、周りの人が目に入る。

ガラケーで電話している大人、ガラケーで撮影している女子高生。

ガラケーって……、古すぎ……。

『ムーンシルバードラゴン』、ガラケー、死んだ親友……。

しかも、この祭りの会場は俺ん家の地元じゃねぇか!





…………もしかして、これタイムスリップした!?




「ち、ちょっとトイレ!」

「行ってらぁ」


光秀のどうでも良さそうな声を聞きながら、内心で滅茶苦茶泣いていた。

なんだよ、これ。

なんだよ、これ!


労災が起きたあのブラック会社に、まさか次元の裂け目があったとかでタイムスリップしたってことか!?

見覚えのある道を走りながらトイレに駆け込む。


「5年くらい前に建て直しされたトイレがボロいやつだ……」


確信しながら鏡の前に立つ。

そこには、幼い男の子の姿が映っていた。

確かに、小学生の夏に光秀と祭りに来た日あったなと思い出す。


「…………マジ?」


こうして、俺のやり直し人生が始まった。


「あれ?この日って確か……?」


あの子を、見付けた日……。

後悔をしたあの日に、戻ったとでもいうのか……?

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