第11話

 長い沈黙があった。博士は黙り込み、助手は固まっている。

「どうした、助手君」

 やがて、博士が言った。

「あれ? フリーズしてしまったかい?」

 博士に言われ、助手はやっと口を開く。

「ちょっと僕も、頭が混乱してきました」

「君の頭が?」

 電子回路でも混乱する事があるのかと、博士は笑う。

「回線が混み合っている感じかね?」

「それは分かりませんが……」

 助手は大きく息をついて、博士の方を振り返る。

「とりあえず、お茶でも飲んで落ち着きませんか?」

「……そうだね、私も落ち着きたいよ」

「僕、淹れてきます」

 台所に向かおうと、助手は博士に背を向ける。

 その途端、首の後ろの電源ボタンを押され、助手はその場に倒れこんだ。

「ごめんね、助手君」

 助手の口ぶりからするに、彼は外の世界を知っている。

 助手に隠し事をされているのはショックだったが、博士はそれ以上に、外の世界が気になった。

 研究所の中を歩き、出入り口を探す。

「見当たらないな……隠されていると考えるべきか……」

 博士は、机の下や棚の後ろを注意深く探っていく。

「あった……!」

 そして、とある棚の後ろに、扉を発見したのだった。

「外に出られるぞ!」

 さっそく、扉についていたボタンを押す。

 扉は鈍い音を立てながら開いていく。光が差し込み、研究所の中に風が入る。

 そして。

「これは……どういう事だ……?」

 その途端、背中に電撃を受け、博士は気を失った。

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