第9話

 設計図をかいていた博士は、嬉しそうに助手を呼んだ。

「助手君、助手君」

「何ですか?」

 近寄ってきた助手に、博士は完成した設計図を見せる。

「世界全土を砂漠にする機械を考えたのだ。今度こそ、世界を滅ぼすぞ」

「砂漠ですか」

「ああ、そうだ。ふふふ、いい案だと思わんかね?」

 博士は自信満々だが、助手は微妙な顔をする。

「砂漠って、今もありますよね?」

「ああ、そうだね」

「砂漠にも、動物とか居ますよね?」

「もちろん」

「世界全土を砂漠にしたところで、その動物たちや、オアシスの植物たちは生き残るのでは?」

 博士は目を丸くして、ぱかっと口を開けた。

「言われてみれば、確かに……」

「これでは、世界は滅びませんね」

「むぅ……」

 この案も却下だな、と博士は設計図を机に置く。

「なかなか難しいね、世界を滅ぼすって」

「博士ならいつかできますよ。自信を持ってください」

「……」

「どうしました?」

「いや、君がそんな前向きな事を言うなんて、珍しいなぁ、と」

 助手は言葉に詰まった様子で、博士に背を向ける。

「別に……僕は助手ですから。博士を支えるのが仕事なだけです」

「ふふふ、そうかい」

 どうやら助手は、あまり素直ではないらしい。

 そんなところもかわいいのさ、と口にはしないながら思いつつ、博士はまた新しい発明品を考えるのだった。

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