第8話

 助手が倒れた。白い床に力無く転がり、ピクリとも動かない。

「助手君……助手君!」

 博士は、助手の肩を強く叩くが、反応は無い。

「助手君、起きろ。早く起きてくれ、頼むから……」

 しばらく助手を呼んでいたが、博士はやがてうなだれた。

「……そうか、君はもう、動かないんだね……」

 博士は今にも泣きそうな顔で、動かない助手を抱き上げ、顔を押し付ける。

「……起きてよ、ねぇ……私を独りにしないでくれよ。独りは嫌だよ……」

 その言葉は、空しく静寂に消えていくだけだ。

「君が居なくなった時が、私にとっての世界の終わりかもしれないな……」

 博士は長い事その姿勢でいたが、しばらくして顔を上げた。

「よし、久し振りに悲痛な気分にも浸ったし、そろそろ燃料を入れてやるか」

 どっこいせ、と助手を膝から下ろして床に置き、博士は鼻歌を歌いながら、助手の燃料を取りに行くのだった。

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