第7話

「太陽を爆発させてしまおう!」

 博士が突然立ち上がった。

 これにも助手は慣れた様子で、

「太陽、ですか」

 と反応を返す。

「太陽が爆発したら、確かに世界は木端微塵に滅びますね」

「そうだろう? 我ながら完璧な作戦だ」

 博士はゆがんだ笑みを浮かべ、ペンを手にする。

 紙に向かって何かを書いては消し、またペンを走らせる。

 それを数時間くり返して、博士は机に突っ伏した。

「む、無理だ……」

 絶望する博士に、助手が湯気の立つ緑茶を持ってくる。

「どうかしましたか」

「聞いてくれ助手君、実に残念なお知らせだよ」

「はぁ、何です?」

「今の技術では、太陽を爆発させることはできないのだ。不可能なのだよ」

「そうですか」

 助手はそっけない返事をする。

「まあ、人間が滅びる前だったらまだしも、今は人手も素材も無いですし、無理でしょうね」

「うむぅ……」

 博士は不満げな声を漏らし、茶をすする。

「お、助手君、また茶を淹れるのが、うまくなったようだな」

「そうですか。それは良かったです」

 美味しそうに茶を飲む博士を、助手はじっと見つめていた。

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