第3話

 この日も博士は、設計図を助手に見せてきた。

「世界中の海の水を、淡水に変えるというのはどうかね?」

 助手は設計図を受け取って、内容を確認する。

「なるほど、こういう仕組みですか」

 しかし、いくつか疑問がある。

「海の水を真水に変えたくらいで、世界って滅びますかね?」

「滅びるよ」

 博士は即答する。

「まず、海の生き物が全部死ぬだろ。食物連鎖が崩壊する。さらに、浮いた魚で海面が覆われるから、太陽の光が遮られて、海藻も育たなくなって……」

 話が長くなると思ったのだろう。博士は言葉を区切った。

「まあ、簡単な話、海が死ぬのさ。海が死ねば陸も死ぬ。簡単なこった」

「はあ、そうですか……」

 詳しい事は分からないが、博士が言うならそうなのだろう。

 助手はもう一つ、博士に疑問をぶつけてみる。

「これだと、世界中の海水を淡水に変えるのに、何十年か何百年くらい、かかりませんか?」

「ふむ……」

 博士は頭の中で式を展開させる。

「まあ、計算上はそうなるな」

 そう答えを出した。

「それだと、世界が滅びる前に、僕たちの寿命の方が来ません?」

 博士は、今気づいたと言うようにはっとする。

「確かに、そうかもしれないな」

 それを聞いて、助手は溜息をついた。

「僕は、寿命で死ぬなんてごめんですからね。自分以外の何かに殺されるなんて、絶対嫌です。自分の死ぬ理由は、自分の意志しか有得ないと思っています」

 助手が言うと、博士は笑う。

「分かっているよ、助手君の事は」

 そしてまた、新たな案を考えるのだった。

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