冒険録80 主人公がついに気付いてしまった!
魔法で可愛くも美しい大人の姿に
「うふふ、楽しみだね♪」
それは何気ない一言ではあるのだが……紅潮した
「待て待て、なぜにじり寄ってくる!?」
「ん~? そんなの、大地君に
ヤレヤレと
「ちょぉ……そんな当たり前みたいに言われても、ダメだって!」
「え~、なんでぇ~? 別にドキドキなんて、しないんだよね~? にゅふふ♪」
しないわけ、あるかぁっ! 百%分かってて言ってやがるっ! この夕さんめぇ!
「いや、その…………――っほら! ルナも見てるだろ?」
「ん? ぎゅ〜って
「おー! もっとくっつくのー! ぎゅってするのー!」
「ほらー」
「んな……」
それが意味するところを全然分かっていないルナが、枕の上で横に
「――ごほん。別にくっつかなくても、
俺は努めて冷静を装い、
「むぅぅ~! …………あのね? 私だってすっごく
夕はわざとらしくヨヨヨと
「……大地君は、
「え?」
ナゼここでヤスが?
「ほら、さっき言ってたじゃない……お礼って」
「あー」
助けてもらったお礼に、夕が喜びそうなこと――風呂にでも
「もちろん私は、こうして大地が無事だっただけで
「す、すみません……」
これに関しては弁解の余地もない。夕を泣かせてしまった罪は重すぎる。
「それもあるし、その……欲張り言っちゃうと、ちょっとくらいご
「くっ……」
夕は
それは欲張りでも何でもなく、夕が居なければ俺はとっくに死んでいる訳で、おねだりの一つくらい聞いてあげないと
「そ、その、夕がご褒美とやらで何を望んでいるかは分からないが……全く分からないがっ! その身体がゆづのだって、忘れて……ないか?」
「むっ! むぅぅぅ……くにゅぅぅぅ……」
俺の予感は当たったようで、夕は実に
「それにだ。さっきヤスにも言ったけど、色々と順序ってもんが、あるだろ?」
「そんなの私はとっくの昔に大
夕はもにょむにょ言っており、どうやら説得が効いているようだ。
そう思って少し安心していたところ……
「――あっ! ねぇねぇ、大地君」
ふと何かを思いついたらしく、そこで
「もし全部が上手くトントン
「え、そりゃ、帰るだろ? そのために頑張るんだし?」
こんな当たり前のことを、ナゼわざわざ聞いてきたのだろうか。
「うん。そうなんだけど…………えっと、参考までに聞いてね?」
「お、おう?」
そこで夕は
「もしこの世界でずっと暮らすとしたら、私とゆづ、両方を選ぶこともできるんだよ」
俺が気付いていなかった重大な事実を告げてきた。
「な!? そう、か……」
まさに目から
「もちろんこれは私とゆづの都合だから、大地が望むままに選んでくれたらいいの。私は大地さえ側に居てくれたら幸せだから、大地が選んだ先にずっと付いていくよ。……とは言っても、本当に身体を作れるのかも分からないし、まだまだ先も長いから、今すぐ慌てて決めることじゃないんだけどね?」
「そう、だな」
日本を捨ててこの世界で暮らす、か……夕達のことを第一に思えば、最善の選択ではあるが……もちろん、そう簡単に決められることではない。そもそも俺達が帰らなければ、ルナやカレンやヤスも帰れないかもしれないので、俺の一存で決める訳にはいかないだろう。……まぁヤスは、ほっといてもしれっと帰ってきそうだが。
「それで、何でこんなこと急に言い出したかっていうと……そのぉ……参考になる、かなって……?」
「さん、こう?」
「…………お、お返事の!」
「っ! お、おうよ……」
まったくもって情けないことにも、夕の告白への返事を待ってもらっている状態なのだ。それは俺の気持ちが不確かな事に加えてゆづの事情もあるからで、それで夕も気長に待つとは言ってくれてはいるものの……本当に申し訳ないと思っている。
だが……この世界で暮らすなら、ゆづに
おい……おいおいおい……。
俺は今……なんて?
好きになってもいいって……何だよそりゃ……。
それじゃまるで……。
思考を否定すべく前を向けば、座り
すると不意に、昔の出来事が脳裏を
――パパ、あたしと結婚して!!!
俺は初対面なのに、木から落ちてくるなり、プロポーズしてきた夕。
ああ、あの時は、頭のおかしな子だと思ったもんだなぁ……ハハハ。
――あたしが毎日ご飯作って、パパの
いつも俺のために、最高に美味しい手料理を
愛情が調味料とか小っ恥ずかしいこと言ってたが……まぁ、ある、かもな。
――私、こんな、こんな大地なんて見たくなかった!!!
今よりずっと弱かった
あれは、ガツンときたなぁ……涙を
――またっ、こうしてぇ、お話してくれてぇ……ほんとに、よかったってぇ……
こんな強い心を持ってるくせに、俺の事になると
――くぬぬぅ、あたしの
――うふっ♪ どぉ、どぉ? あたしのスターちゃん、とっても強いでしょぉ?
俺に頬を
一緒に遊んだゲームに勝ち、得意げになって子供のようにはしゃぐ夕。
真面目な時との温度差が激し過ぎて……それがまた夕らしくていいなと思う。
――私とあなたが死で分かたれる、その時が必ず来るとしても!
――その悲しみを
俺の心の闇を
いつか俺も、夕に
――だからそのときは、ゆづを助けてあげてくださいね
もしもの別れの悲しみを必死に
何を
そして……
――大地はいつだって……私が心から欲しいもの、本当に大切なものをくれるのね
――ありがとう 大好きだよ
頬を染めて、ただただ真っ直ぐに
こうして思い返しただけで、再度心臓を
次々と
もう苦しくて、目の前の夕を見ていられない。
「そう、か………………ハハッ、ハハハハ」
自分のアホさ加減に
なんだ
俺はとっくの昔に
落ちてたんだな
思えば
そうと自覚した今となれば、この
「ん~?」
突然笑い出して
「――っっん!?」
ヤバイヤバイヤバイ……ハッキリと自覚したせいか、夕がいつもの百倍可愛く見えてきた。大人夕さんになって二倍、とか言って
「ナッ、ナンデモナイゾォ?」
「うふふっ、へんな大地君♪」
慌てて後ろに下がって誤魔化すが、緊張で声が上ずってしまい、夕にクスクスと笑われてしまった。
でも、その楽しそうな
挙げ句には、それすらも悪くないなと思ってしまう始末で……全くもって救いようのない、不治の病というものか。
【550/550(+27)】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます