冒険録64 ヒロインを褒めるのはもっと難しいぞ!
俺は夕の衣類一式をまとめて
ランタンを風呂場に置いてきたので、
「ん、倉庫が明るい? ――あぁ大地か。えらい長いこと入ってたな? よっ、あつ湯プロ!」
ちょうど左手の厨房から出てきたヤスと
「いや、ついでに
「だろぉ~?」
そこで小さな足音と共に、
「ごめんね、おまたせぇ――あ」
「「あ」」
三人の視線が交差した。
「え、まさか、夕ちゃんと……? おいおい大地、すげぇじゃんか!? 見直したぞ!」
「チガウチガウ! 夕が入ってる間、俺が見張ってたんだよ!」
「そそそ、そうです!」
「あ、あーそっか。いやぁびっくりした。うーん、早速実行したのかと思ったのに……ったく見直して損したぜぇ」
「ハハハ」
まさに実行されたんだけどな? あと損したは
「んで夕ちゃんも、お風呂楽しめた?」
「はいっ! ほんっと~にもう最高でした!!!」
「おおう!? んまぁそこまで喜んでくれたなら、僕も作った
ヤスは満足気にそう言って、倉庫の従業員用階段へ向かったのだが……なぜか引き返して来ると、俺の
「(おい大地、ちゃんと
「(ん? ……ああ、分かってるっての。てか余計なお世話だ!)」
「(ハハハ、大地のことだしスルーすんじゃねと思ってな? それなら安心したぜっと!)」
ヤスは最後に俺の背をパンと
「(じぃ~)」
振り返れば、夕が少しジト目でこちらを見ていた。
「ほんっと仲いいよねぇ」
「そうかぁ?」
「そうよ! もぉ、なんだか
夕は少しだけ
それでヤスが去り際に言っていたのは、夕の
その髪型の感想だが……正直メチャクチャ可愛いし、同時に
「と、ところで夕」
「えっ、なぁに?」
声をかければ夕はギュンと振り返り、小首を
それで切り出したは良いが……女の子を
「え、えと……あれだ……その髪型も似合ってて、すごく……かっ、可愛いぞ!」
ふいぃ、なんとか言えたぞ。面と向かっては恥ずかしすぎて無理なので、横の壁を見つつなのはご
「え………………えええぇ!?」
勇気を振り
「えと、ごめん、叫んじゃって! パパから『可愛い』って言われるなんて、もうほんと嬉しすぎて、
夕は顔を真っ赤にさせて、両手をわちゃわちゃ振り回している。……よかった、褒め方に難があった訳ではないらしい。
「はうぅ、こんなのクラクラころんってなっちゃいそうだよぉ」
「またなのか!?」
「んやや、例え! そのくらい嬉しかったってことっ!」
そこで夕はトトッと目の前に来て、髪を見せつけるようにクルリと回ると、
「ありがと、パパ♪」
俺を見上げて満面の笑みを向けてきた。
「っ! ……まったく、こんな一言くらいで大げさな」
色々と褒め言葉を考えたものの、緊張して全然上手く言えなかったのだ。
「はあぁぁ~」
すると夕は大きな
「あのね? 照れ屋なパパが、こうして頑張って褒めてくれたこと自体が、あたしはいっちばん嬉しいのっ!」
「お、おお?」
「んとね……実は
――ああ! ヤスとの仲がどうのは方便で、そっちで拗ねてたのかよぉ……――くっ、女心はムズカシイ!
「でもパパだし、頑張っても『似合ってるぞ』くらいかなぁ~、それでもすっごく嬉しいなぁ~……と思ってたところからのぉ、ビックリ大サービス! こんなのあたしには
「わわ、わかったから!」
小っ恥ずかしいことを次々と
俺が不思議に思ったところで、夕はスッと
「うふふ。まだまだにぶちんね、だ・い・ち・くん?」
大人びた声でそう
「んな!? ――ぐ、むぅ……
普段の夕にもからかわれっぱなしだが、こうして気分がノると現れる大人モード夕さんともなれば、まるで弟
「ん~? そこは頑張らなくていいのになぁ~」
「えーと……そのココロは?」
「んふふっ、これならまだまだ安心ねぇ。にっしっし♪」
「???」
夕は口元に
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