冒険録51 ヒロインと妖精さんが世界を救った!
――れ
ん……ここ……は……?
身体が……動かない?
――のー!
たしか、夕が
ホリンが毒矢と……。
俺は、どうなってしまったんだ?
――ぁれ
くっ、指一本動かせ――あれ? 少し動くぞ?
それに左胸と腹の辺りがとても温かい。
「――ひぐっ……げんきになぁれぇ……、だいちぃ、っく、しなないでぇ……わたしを……おいてかないで……げんきにっ……なぁ、れぇ……ぅ……ぁ……」
「おわあぁっ!?」
夕の泣き声が耳に届き、
「なんだとぉっ!?」「こいつぁおったまげたナ……」
すると目の前では、ホリンとバコスさんが
「だい……ち?」
俺の身体に
「夕、俺は大丈夫――」
「だいちぃぃ!」
「ふがっ」
夕の胸にぎゅっと抱き
「わたっ、わたし……もうダメかと……あああ、よかったよぉ……」
「ちょ、夕!?」
夕がさらに力を込めてきた! ぐはっ、これはマズイ……夕の甘い匂いがして、それに凄く温かくて
「んな大げさな! 俺はもう大丈夫だから、その、離して……もらえます?」
「やだぁっ! もう離さないもんっ!」
夕は
「ほ、ほら……みんなも、見てるし、さ?」
「…………むぅ」
そこで夕は少し冷静さを取り戻したのか、
「その、心配かけたようで、ごめんな?」
「うん……すっごく、心配したんだからぁ……」
夕は真っ赤になってしまった目から
「えーと、俺そんな危険な状態だったのか?」
「おいおい何言ってやがる、呼吸止まってたんだぞ!? 助けは呼んでるが……普通なら絶対助からねぇし……それでオレを
「なん、と……」
ガチの命の危機だったとは……夕がここまで取り乱すはずだ。それで今は、俺の手をひたすらさすって気を落ち着かせていると。
「ン。この
「トリカブト……」
確か現代でも解毒不可能な最強の毒素を持つ花で、その毒で
「しかも
「うむ……確かにオレは水の加護もあるから、それでも即死はしないが……そんな状態で戦ってもやられていただろう。そういう訳で――」
そこでホリンは
「ダイチ
「!?」
右手を胸に当てて深く頭を下げてきた。騎士の作法は全く知らないが、最大級の敬意を払われていることは分かる……何とも恐れ多いことだ。
続いてホリンは夕へ向き直ると、同様に夕へ頭を下げる。
「ユウヅ殿、
「っそそ、そんな、頭を上げてください! 騎士様にそんなことされると、
騎士様モードのホリンにあわあわする夕を見て、
「…………――フフッ、オレも
ホリンはゆっくりと身体を起こすと、顎の古傷をさすりつつ口角を上げる。
「それとユウヅが居なければダイチは助からんかった訳で、同時に感謝もしているんだ。命の恩人を助けてくれて、本当にありがとう」
「は、はい!」
「……そうか、やっぱり夕が治してくれたんだな」
夕の元気魔法は、
「ありがとう、夕!」
夕の両手を握り返し、まだ涙が残る
「あはは……改まって言われると、なんだか照れちゃうわね。あたしはただ、お兄ちゃんを助けたかっただけで……それにあたしだけじゃないし、ね?」
夕はそう言って俺の胸ポケットに目線を移す。……ああ、目覚める時に胸が温かいと思ったが、ルナも一緒に俺を助けようとしてくれていたと……いわば娘達の願いの結晶、か。俺の死はこの世界の死と同義なので、夕とルナは世界を救ったとも言えるな。
そこでポケットを少し開いて中を覗いてみれば、ぐでぇっと休んでいた
「むふー! るなもがんばったのー! ほめるのー!」
なんと飛び出してきた!
「――ちょ、ルナ!」
慌てて
「いや、別に隠さなくていい。さっきダイチが
ホリンがそう言って静止してきた。
「
なるほど、未知の友好的な生き物が居た場合、異世界ではそういう
「むぅ~! るなはつかいまじゃないのー! ままとぱぱの
「ハハッ、おちびちゃんに随分と
「ちびじゃないのー!」
怒ったルナがオーロラ色の羽を広げて
「むー! なまいきなのー! はなすのー!」
ルナはジタバタと
「ルナ、助けてくれて本当にありがとな」
「むふー! るなもぱぱをまもるのー!」
俺が
俺はその小さく愛らしい姿に口元が
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