冒険録42 ついに念願の住民札を手に入れたぞ!
「さ、オレの話はこんくらいにして、さっさと札作って
「んだね。僕もう腹減りすぎて
ホリンの話が
「ほら、これが住民札だ」
ホリンが机に置いたそれは、
「なるほどぉ、これなら金貨二枚も
夕の試算方法を思い返せば…………うん、魔晶石部分だけで金貨二枚近くになる。
「……ほぉ~、札の存在すら知らんかったくせに一瞬で
「うふふ」
ニコニコと笑顔を返す夕に、ホリンはヒュゥと
「で、これに血を垂らせば所有者に成れる。ちなみに本人が
きっと魔晶石も専用に調整されていて、所有者以外には何の価値もないのだろう。実に上手くできている。
続いてホリンは腰から
「使うか? ちゃんと手入れはしてるぜ」
そう言って机の上に置く。これで血を取れということだろう。
「ありがとう、使わせてもらう」
手に持って
早速と刃先を親指に軽く
「よし、次はユウヅだ」
言われてナイフを手渡すと、夕はおっかなびっくり受け取り、刃先を見つめてゴクリと
「うぅ……自分で指を切るって、怖いわね……」
「ハハハ、ユウヅにも怖いもんがあるんだなぁ?」
「ちょっとぉ、ホリンさん? それはどういう意味ですかぁ? あたしのこと何だと思ってるんですぅ?」
夕はホリンのからかいに、可愛らしく
「あ、いや、あのクリウスをやり込めたこともそうだが……オレがダイチに
「それわぁ……パパを護ろうと必死でぇ……ごにょごにょ」
「ん?」
「な、なんでもありませんよ!」
ちなみに俺がホリンの
「夕、そんな怖がらなくても、本当に一瞬チクッとするだけだから大丈夫。ほら、注射みたいなもんだと思って?」
「そっ、そうね…………えぃっ!」
夕は緊張で少し震えつつも指に刃先を軽く刺し、目をバッテンにした。だが想像より痛くはなかったのか、すぐに目を開いて
「よし。最後にこれをこうしてっと……」
横で羊皮紙に羽ペンを走らせていたホリンは、住民札を羊皮紙に重ねて押さえ、
「んで次はチャージだな。王都では一日で銅貨五枚分
つまり住民札は、発行料が
「とりあえず十日分入れてもらおっか?」
「そうだな。ええと、お
二人分で銀貨十枚となるが、銀貨がないので金貨を一枚渡す。
「おいおい、金貨しかないってのか? ったく一体いくらの取引してきたんだか…………百枚
「ん……そりゃそうか」
コンビニでの一万円札の両替ですら断られるのだ、ましてや金貨=十万円札を千円札に
「んで十日分だな……ほい、ほいっと」
ホリンは机の引き出しから
「この『トランススクロール』で魔晶石から魔素を移せる。さ、貸してみろ」
住民札を手渡すと、ホリンはそれを左の魔法陣に、小粒の魔晶石を右の魔法陣に置いた。すると黒い
ホリンは続けて夕の札を取り、同様にチャージし終えると、使い終わって灰色になった魔晶石を別の引き出しに
「ほい、
「ありがとう」「ありがとうございました」
世間知らずの俺達に色々と手間をかけてもらったもので、ホリンには本当に感謝感謝だ。
「ちなみに、チャージされた魔素が無くなると光が消える。その後は
「ああ、本体部分がうっかりチャージ忘れへの保険も
「ほんとよねぇ」
科学技術はなくとも、魔法を上手く使う技術が代わりに発達しており、住みよい暮らしを作っているのだろう。本当に面白い世界だな。
「――終わったな? もう用はないな? よぉしっ、さっさと帰って飯だー!」
長い手続きにしびれを切らしたヤスが、そう言って階段を
「ハハッ、アイツらしい」
「だなぁ」「ですねぇ」
そうして俺達三人は顔を見合わせると、笑いながら階段を降りて行くのであった。
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