冒険録39 ヒロインはモテモテだぞ!
「……ほいで、受けてくれまっか?」
「もちろんです。だよな、夕?」
「うん」
「よしきた! ほな誓約やな!」
商人は満面の笑みで
「そいで自分らの名前が要るんやけど、まだ聞いてへん――ってこっちもやな、すんまへん。わいは行商人のクリウスや、あんじょうよろしゅう」
クリウスさんはそう言って右手を出してきたので、
「大地です。どうぞよろしく」
「
「えーと……ヤッスだ。よろしくっ!」
ヤスは
「ほな早速書かせてもらうでぇ」
クリウスさんが羽ペンを取ってインクを付け、羊皮紙に誓約文を書き込んでいく。
「『
「「はい」」
クリウスさんは大きく
「待――」「待ってください!」
そこで俺が止めようとしたが、夕が代わりに制止すると、
「巻物での誓約は結構です。そんな重いもの要りませんよ」
そう言いながらブラッディスクロールをサッと取り上げて丸めた。
「え……せやかて、わいが逃げたらどないすんねん?」
「クリウスさんは絶対にそんなことしません。それは先ほどのクリウスさんの真剣な言葉、眼、態度、そして実際にこうして誓約文を書いたことで確信しました。なので、商人としての
「んだな」
さすがは夕だ、俺の言いたいことを全部言ってくれた。
「……ハハハ、なんちゅう甘ちゃん連中や。もうほんっまに大甘やなぁっ! もしこの
「あら、
「嘘やあらへん! ――いや、そないな事言うてんやのうてな……」
「うふふ。ならいいじゃないですか」
「む……」
夕の全てを承知の上での
「……なんやねん、どえろう
「おい!」
記憶が戻る前のヤスと言い、この世界の連中は気になる子がいたら
「ふふっ、クリウスさんってばお上手ですね。でもあたしには心に決めた人が居ますから。それこそ、このホラではない巻物に
夕は手元の巻物をフリフリしながら、俺をチラチラ見てくる。……夕さん? 絶対使っちゃダメですよ?
「――あーこらあかんわ。まさに眼中無しっちゅうやっちゃな! そら中身だけやのうて将来
クリウスさんは少し首を
「まっ、なんしか
「うふふ、クリウスさんは気骨のある商人さんですから、いずれ成功を収めてより良い出会いがありますよ。大志を抱く商人さんらしく、先を
「……ははは、この男あしらいの手慣れようよなぁ…………ユウヅはん、ほんまは大人で若返りの魔法とか
「えっ!? ……あははは、そんな訳ないでしょぉ?」
科学なので魔法ではないが、効果は同じだ。商人の
「んー? なんやあっやしい反応やのぉ?」
「ええと、妹はちょっとおマセなんですよ。俺もいつもからかわれて、ほんと困ったもんで……ははは」
これは割と本音も
「――ハッ、そういうことにしといたるわ。ほいで…………ひぃふぅみぃの……ほい、手付金の金貨十枚!
クリウスさんが小箱から出した金貨六枚をテーブル
「ほな、わいは行くでぇ。善は急げ、時は金なりちゅうてなっ!」
クリウスさんはそう話しながらも、テキパキと道具類を
「はい。お気をつけて! 取引頑張ってくださいね!」
「まっかせときぃ! 目ん玉飛び出るぐらいごっつぅ
「「「ちょ――」」」
盛大なフラグを立てやがった!
「……なんや?」
「いや、別に」
どうやら異世界にはそういう文化はないらしい。
「お兄――いや、ダイチはん」
「ん?」
「(イモウトをあんま待たしたらバチあたるでぇ? ま、わいがあてたるんやけどな!)」
「!」
そう耳打ちしてきた。どうやら兄妹でないことなど色々とバレていそうだ……なんて
そしてクリウスさんは近くの
「ほなな~」
そうして皆で軽く手を振って見送ったところで、
「……最初は
俺から
「まぁ、やたら
「あはは。関西弁のせいもあるかもね?」
「それよ、あのコッテコテの関西弁……今どきあそこまでのは
「せやねぇ」
「ぷぷっ、夕ちゃんまで関西弁になってるじゃん?」
「おととぉ……こらクリウスはんのがうつってもぉたなぁ~? なんてね、えへへ」
おおお、関西弁の夕もなかなか新鮮で……イイ。
「ルナちゃんまでうつってたりして――っあ!」
「おっと忘れてた」
ホリンさんから隠したルナのことを思い出し、慌てて胸ポケットに手を入れて取り出すと……
「むにゃむにゃ……ままぁぱぱぁだいしゅき……」
スヤスヤと眠り姫になっておられた。最初に
「あらら。パパのポケットの中、
「苦しそうにはしてないし、街に入って落ち着くまでここに居てもらうか」
俺はそっとルナをポケットに戻す。不死身なのでうっかり
「――さ、これで大手を振って街に入れるわね!」
「異世界で初めての街かぁ、楽しみだな」
「あっそうだ、今日はとりあえず僕んち来たら? んでその大金でパーッと飲み食いしようぜ! な、なっ!?」
良い案ではあるが、このグイグイ来るヤスは……ああそういうこと。
「……そしたらマスターからのお前の株もあがるってか?」
「たはは、バレたか。……でも信用できる店のがいいだろ? その点うちはお墨付きの店さ!」
「……誰の?」
「僕のっ!」
「だよな!」
「あはは。もぉ~ほんと調子いいんですからぁ、ふふっ」
そうして俺たち
~ 第五章 月と金星と文無一行 完 ~
【185/185(本章での増加量+30)】
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第5章までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。
この幼女お姉さん無敵かっ!? クリウスみたいなヤツ結構好きだぜ! などと思われましたら、ぜひとも【★評価とフォロー】をお願いいたします。
第6章は、酒場での宴会や刺客との決死のバトルが見どころでございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
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