冒険録37 幼女VS悪徳商人の商談バトルが始まった!
取引成立目前でかけられた制止の声に向き直れば……そこに立っていたのはもちろん夕だ。しかし、話もまとまったところで、急にどうしたのだろうか。
「……何かまずかったか?」
「まんまと買い
「うそやろ!?」
話の分かる
「んもぉ~、すっかり口上に乗せられちゃってぇ……しっかりしてよねぇ、お・に・い・ちゃん?」
「
夕は
「――はっはっは、人聞きの悪いこと言うたらあきまへんでぇ? 今おっちゃんはお兄はんとだいーじな取引しとるさけぇ、お嬢ちゃんは後ろでおとなしゅう待っとってなぁ?」
商人は幼い姿の夕の言葉など気にもとめず、手で
「ふんっ。本当に人聞きの悪いことをしてないか、人に聞いてみます? 適正価格だと言い張るなら、別に構いませんよねぇ?」
だが夕は食い下がって、城門の方を指さしながら相場を聞いてみようと提案する。どうやら夕には、この額が適正でないことの確証があるらしい。……あと、俺を
「妹もこう言ってますし、念のため確認しても良いですか?」
言うまでもないことだが、当然俺は夕を信じる。
それで裏がある商人ならば、
「別にええでっせ?」
提案をすんなり受け入れてきた。これは一体……
「――やっぱいい。一般人には判断できないほど希少かもしれないし……それにグルの可能性もゼロじゃないわ。……まぁ、ホリンさんの
「ん……たしかに」
ここでいつも商売をしているなら、こういう場合を想定して事前に口裏を合わせている可能性はある。例えば、騙して
「はあ、ほんま疑り深い嬢ちゃんでんなぁ……せやかて売らなお兄はんらは街に入られへんわけで、
「そうなんだよな……」
こちらは背に腹を代えられない
「いいえ、何が何でも絶対に買うわ。今も
「ほぉ……そんこころは?」
自信たっぷりにそう言い切る夕に、商人はふてぶてしい顔で
「まず、魔晶石はわざわざ価格表にイチオシでデカデカと書くほどに
「なるほどなぁ……」
適正な市場での売買が行われれば、いずれ需要と供給が
「そこで価格表にB級以上について
全くもって
「――という訳で、こんなボロ儲けの
「……ぐぅ」
すると商人は目を泳がせて言葉を詰まらせており、どうやら見事に図星のようだ。
「……せやかてな? なんぼ欲しいちゅうても、
「ええ、それはそうでしょう――本当に無茶な値段ならですけどね?」
「ほぉ……ほならなんぼが無茶やないか、言うてもらいまひょか?」
こうして同じ土俵には乗せられたものの、あくまでこれが適正価格だと言い張る商人。これほど希少な商品となれば、田舎者の幼女ごときに適正価格など分かるはずがないと、
「ええ、見積もりから全部言ってあげますよ。……靖之さん? D級が五㎜くらい、C級が倍の一㎝くらいの
「え、僕っ? ああ、うん。街のお店だとそんな感じ――あ、いい忘れてたけど最近は結構売り切れが多いかも?」
「でしょうね」
理解が追いつかず完全に置いてきぼりを食らっていた様子のヤスは、急に話を振られて驚きつつも答える。俺が商談している間に、夕はヤスから情報の聞き取りをしていたようだ。
「それでDとCの体積比が約八倍なのに価格が十五倍も違うけど、一般市場に出回っている以上は希少性だけでそこまでの差は生まないはず。そうなると魔晶石は、サイズ増加にともなう実用上の付加価値があり、また容易にくっつけて大きくはできない物質とも予想できる――それが可能なら大きくしてから売ればいいだけだし。商人さん、それでよろしいかしら?」
「さ、さいでんな……」
ちびっこ幼女が
「そしてこの直径五㎝厚み五㎜程の魔晶石は、体積比でC級下限の約二十倍、それだけで金貨三枚――これがそちらの言い値ですね? でもさらにサイズ増加による価格
「「「ごくり……」」」
三人で
「金貨十五枚」
「そんなになるのか!?」「マジかよ!?」「……」
そして告げられた額に俺とヤスは
「これでも希少価値の増加分を除いた最低価格よ。流石にそこはあたしには読めないからね? ――さて商人さん、何か言い分はあるかしら?」
夕は片手を
「ぐ、む……あらしまへん!」
商人は
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