冒険録35 住民札の入手は難しいぞ!
仕事熱心なホリンさんには、ヤスの友情パワーも全く通用せず、札が無ければ絶対に通せないと言われてしまった。
「……あのぉ、その住民札はどこに行けば
そこで夕が一歩前に出ると、ホリンさんからの情報収集を試みる。
「おおお? この可愛いお嬢ちゃんは、あんたの……妹?」
「ままなの――っぷ」
「いま女の子の声が……ママナノ?」
「あ、あたしの声ですよ? ママナノは……村の言葉で妹って意味です!」
「ふ、む? あとちっこい何かが一瞬見えた気が……?」
ヤバイ、じっと俺を見てる! せっかく
「ははは、俺には何も見えませんでしたが? きっとホリンさんの見間違えでは? ……
慌てて言い訳を考えていたところ、ホリンさんの目の下に
「ん……そうかもなぁ、ここ最近は深夜に
「すみません……」
どう考えても仕事の
「ん、まぁこれも好きで引き受けてる仕事だ、そう気にすんな? ――んで札だが、もし発行料が
「発行料……あー、ちょっと待ってください」
残念ながら現状
「……なぁヤス、すまんがちょっとお金借りていいか?」
日本では俺から借りる側だったヤスを逆に頼るというのも皮肉な話だが、街に入れない以上はそれ以外に手がない。
「ああ、お安い
ヤスは
「マジ助かるわ――ってユニバ、銀貨?」
布袋を開けば、五百円玉サイズの銀貨がぎっしり詰まっていた。
「ホリンさんがユニバース王国って言ってましたし、この国発行の銀貨ってことですね? それは円
「んー……うちの店だとお酒
「分かりました。おおよそで鉄貨が十円、銅貨が百円、銀貨が千円、金貨が十万円ほどの価値ですね」
そうなると、このヤスのポケットマネーは四万円以上……住民札がパスポートのようなものと考えれば、
「……お待たせしました。二人分の発行お願いします」
布袋片手にホリンさんへと向き直り、早速と札を購入しようとしたが……
「あいよ、発行料はユニバ銀貨四百枚だ」
「よっ、四百枚っ!?」「高すぎませんかぁ!?」
聞き間違えかと思うような額を提示されてしまった。四十万円相当……ヤスのポケットマネーでは
「いやいや、高いと言われても国で定められた額だからなぁ……間違っても
田舎者と思って高値をふっかけてきたのかと思ったが、まさかの定価……これは「もし発行料を払えるなら」という少々大げさな言葉も
「あと、街に入るにはもちろんチャージ料も要る――って、札も知らんのに分からんよな」
俺と夕が申し訳なさそうに頷くと、門番はため息を
「街の中に居る限り、札にチャージした魔力が少しずつ
「なるほどぉ……住民全員でお金を出し合って街を護っているということで、つまり住民税みたいなものですね? それであたしらのような
「う、うむ、まさにその通りだ。……幼いのにずいぶん賢い妹だな? ろくに教育も受けられん田舎者のくせに理解早すぎない? そこのヤッスなんか、ひと月も経つのにまだ理解してなさそうなもんだぞ」
「あはは……そんなことは、ないぞ? ちゃんと分かってるからなっ?」
ヤスはそう言いながらも、目を泳がせている。……ヤスは
「……で、払えるのか?」
「無理です……
「そうか。田舎者には正直キツイ額だとは思うが、頑張って貯めてきな。ちなみに
「親切にありがとうございます」
「ま、一応は友人の友人だ。その辺でのたれ死なれると寝覚めが悪いしよ?」
「ははは……気を付けます」
できることなら野宿は
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