冒険録24 主人公達が潤いを取り戻した!
「水は魔法で出せるんじゃね?」
「あ」
先ほどまでは
「そうよね! ああんもぉ~、元の世界にはなかった手段だから、うっかりしてたわ。まだまだ異世界に来た自覚が足りないってことねぇ」
「ほんとそれな。――んじゃ、早速作ってみようか」
俺は両の
「【
すると掌の上の空間が青く光り、次いで宙に水球が生成された。
「「……」」
だがそれを見つめている夕の表情は暗く、俺も同じような顔をしていることだろう。
「……ちっさっ!」
出来上がったのは、直径
「……えーとぉ、パパが使う力をセーブし過ぎたんじゃ?」
「あっ、それかも」
戦闘用に力を残しておかねばと、少量の水をイメージしたのはある。……まぁ、イメージより
「確認するね――ってうわわわ、三十分も使っちゃってるよ!?」
「ちょちょ、うっそやろ! どんだけ非効率な魔法なんだよ!?」
僅かな水を得るために激減した力の残量を見て、二人で顔を青くする。
「……ただまぁ、少ないにしろ一応は作れたし……ルナ、飲んでいいぞ?」
「わーいなのー! ――んくんく……ぷはぁっ!」
ルナは掌の上の水球に飛び付くと、
「ルナが満足してくれたのはいいけど、これじゃぁ使い物にならんなぁ」
「んー……多分だけどね、無から何かを生み出すのは
「ああそうか……『
「うん、それだね」
それで水を採取できそうな場所を探して辺りを見回すと……すぐに見つかった。
「確か樹木って、結構水を含んでたな」
俺はそう言って一番近い木へと近寄ろうとしたが、
「あ、待って。もっといい所がある」
それを止めた夕が指を足元に向けた。
「ん? ……ああ、地面の中か」
「うん。木は水を
「ふーん。でも、地下水って凄く深いところにある……よな?」
何mも下の水を吸い出すとなると、それはそれで沢山の力が必要な気がする。
「ええ。でもこういう森の中の
「へえぇ……専門じゃなさそうなのに
「ふふっ、前に地質系の教授とお
「なるほどなぁ」
夕が物知りなのは、普段から色々な
「――よしっ、そうと決まれば地面から水を吸い上げてみよう。んで水を吸う呪文となると……ポンプとかバキューム? んー、いまいち語感がカッコ良くないなぁ……」
イメージや気分が効果に直結するとなれば、詠唱にも
「そうねぇ、他にはsuctionやdrainやdehydrationあたりも近い意味かな」
「んー、ディハイドレーションは
「あ、時計見ておくね?」
「よろしく」
俺は夕の合図を受けて、
「【
すると、直径二mほどの
「――消費は五分よ!」
「よしっ! あとは充分な量の水さえ出てくれれば……」
光る地面を
「すんげぇ!」「素敵ねぇ~」「きれいなのー!」
そうして俺は水を吸い上げ続け、地面からの
「やったな!」
「だねっ!」
この消費量で好きな時に水が得られるとなれば、間違いなく最強クラスの便利魔法だ。長旅になれば水の有無は死活問題だろうし、そのために本来は重い水を運ぶ必要があるのだから。ただ一点、周りに水が一切存在しない場所では使えないが、それはレアケースだろう。
「やはー! ぷーるなのー!」
「こらぁ! ルナちゃん!」
「ひゃぁー!」
ルナは水球に飛び込もうとして
ルナにイタズラされる前に飲もうと思ったところで、一つ気になる事が出てきた。
「……なぁ夕よ。地面から滲み出た水だけど、飲んでも大丈夫なんかな?」
先ほどの無から生み出した水とは違い、元々は
「んー、水だけを吸い出すことをイメージしてるし、土中の不純物は混ざってないんじゃないかしら?」
「それもそうか」
通常なら
「よしっ、飲もう!」
「うんうん、喉がカラカラだよぉ!」
両手と共に水球を上昇させると、俺達は顔を寄せて水を吸い上げていく。
ああ、乾いた喉に命の水が染み渡るぜ……これは夕もさぞかし満足して――っ!?
「「がぼぼば!?」」
「……」
「……」
「あー、その……」
「えとぉ……」
夕は頬を赤らめてモジモジしており、その様子を見た俺はさらに
そう、
それで俺達は
「ヨ、ヨシ。次からは水球を二つに分けて作ろう!」
「エエ、ソウシマショ!」
そう言ってぎこちなく歩きだした。
「むー? ぱぱまま、どーしたのー?」
横で見ていたルナは首を
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