第13話 #エド政矢

P'デコの計画通り、みんなの英語の成績が異常に爆上ばくあがりしたせいか、

リカちゃんのママをはじめ、みんなの親たちも全員、

今や恒例こうれいとなったリカちゃんちでの英語勉強会ことタイBL鑑賞会かんしょうかいを、

邪魔じゃましないどころか喜んで推奨すいしょうしていた。


夏休みには毎日のようにプールぎわで、

または熱海あたみにあるリカちゃんちの別荘で泊りがけで世界のBLを堪能たんのうした。


熱海あたみの海は透明度とうめいどが高くて綺麗きれいだったので、

たとえそこに干物屋ひものや看板かんばんが立ち並び、イカや魚がされて、

お爺ちゃんお婆ちゃんの売り子たちだらけであろうと、

腐の者たちはそれをスルーする脳内ドローンを飛ばして、

美しい海の”リアル現地ロケ”を楽しんだ。


それにリカちゃんの家の洋館や別荘自体、

かくパーツがBLドラマに出てきそうな感じにロマンチックだったので、

みんなの妄想もうそうはそれだけで限界を知らずにふくらんだ。


「So, are you a my boyfriend now?」

(で、今、君は僕の彼氏なの?)


レオが階段の上の手すりにもたれて踊り場にいるリカちゃんにそう言い、

リカちゃんは窓の外をアンニュイに見ながら答える。


「Don't ask it to me, because you knowing my heart.」

(そんなこと僕に聞かないで、僕の心を知ってるくせに。)


「はい、カーット!P'デコ、上手く撮れた?」


「うん、同じに撮れてる。

ここでそれぞれのアップが入るからそれも撮らなきゃだよ。

そしたら次は噴水ふんすいのシーンだね。」


腐の者たちはドラマで出てきたのと似たような場所を見つけては、

そこで英字幕のセリフの名場面のマネをして録画して遊ぶこともあり、

相変わらず英語力0のリカちゃんのママ&お手伝いさんたちは、

斬新ざんしんで素晴らしい英語の勉強法だと上機嫌で皆の面倒を見てくれた。


リカちゃんいわく、

ヤバいのは数か国語が出来るお父さんと執事しつじさん、兄・政矢まさやさんなので、

鉢合はちあわせたら大人おとなしくしなければならないらしい。


幸いお父さんと執事さんの仕事は真夜中近くまで続いて出張しゅっちょうも多く、

休日もゴルフなどの仕事上の交流こうりゅうでほぼ家におらず、

リカちゃんと一回ひとまわり年の違うお兄さんは、小早川財閥こばやかわざいばつぐべく、

世界中を飛び回っていて、年に1-2度帰国するだけなのだと言う。


腐の者たちは、1度だけ、

そのリカちゃんのお兄さん・政矢まさやさんと鉢合はちあわせたことがあった。


リカちゃんを男性にしたみたいに線の細い、上品さのただよ政矢まさやさんは、

秘書けんボディーガードだというエドワード、

通称エドと言う名のハンサムなイギリス人男性をしたがえていた。


腐の者たちがリカちゃんの家に着いた時、

政矢まさやさんは丁度エドのエスコートでリムジンの後部座席に乗り込むところだったが、

腐の者たちは、行儀ぎょうぎよく並んで挨拶をしつつ、

電光石火でんこうせっか早業はやわざでこの美味しいシーンの写真や動画を撮りまくった。


「リカちゃんのお兄さん、エドとカップルだったらいいのに!」


撮ったばかりの2人の写真や動画を見ながら、

登場人物全員ゲイ設定にれて頭がいている腐の者たちは溜息ためいきをついた。


政矢まさやお兄ちゃんもエドも婚約者フィアンセいるよ。」


「ですよねぇ~。」


腐の者たちは納得なっとくしかけたが、ガチぜいのP'デコの脳内は違った。


「ムン!甘い!

婚約者フィアンセくらいなんですか!

家に帰れないほど忙しい生活の中、

苦楽くらくを共にする2人の方が

婚約者フィアンセより親密しんみつと考えるのが、

自然と言うものじゃないですか!

サブストーリーとして、

#エド政矢まさやもありなのが腐女子道ふじょしどう

義務的ぎむてきにフィアンセを持ったり結婚しなきゃならない

財閥御曹司ざいばつおんぞうし×秘書けんボディガード、じつにえる!」


そう言うP'デコはプールサイドでやるのが夢だったと言う目的のみで、

有名BLドラマで主人公がプールサイドでいていた曲を、

いつの間にかギターでがたれるようになっていて、

みんなは大いにいた。


「会社同士の利害りがい関係か商品開発の秘密盗用とうようごとが起きてさ、

地元のギャングとか出て来て銃撃戦じゅうげきせんとかある中で2人は結ばれていくんだよ。」


敵対勢力てきたいせいりょく会社のイケメン御曹司おんぞうし何故なぜか好かれて恋敵こいがたきになったりもするハズ。」


「飛行機のトラブルで未開の地に不時着遭難ふじちゃくそうなん

2人だけで助け合って数日間生き延びるサバイバル・シーンも入れて欲しい。」


「結婚式の日に会場を2人で抜け出して逃避行とうひこうするのがロマンチック。」


夕焼けの中、プールサイドに並んで座る腐の者たちは、水に足をけ、

ワインのかわりにグレープジュースを注いだバカラのグラスをかたむけながら、

いつしか#エド政矢まさやの世界を股に掛けたワールドなBL妄想世界を夢見て、

延々えんえんと好き勝手に話を作りあげていた。


そして、

腐の者たちの頭の中では最終的に#エド政矢まさやは今、

仲良く手をつないでエアーズロックのいただきにって座り、

この夕日の中をお互いの目を見つめて微笑ほほえみ合っているのだった。

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