第10話 BLの神様


「僕、最近自分がワケ解んなくなってきた。」


いつもの美術部、

腐の者たちが集い、

最新のBLドラマ情報をリカちゃんのIPadでチェックしていた中、

急にレオがそう言った。


「なんで?」


仲のいいリカちゃんが最新のリップを塗りながら尋ねると、

レオは少しもじもじしながら答えた。


「僕、最近リカちゃんのことがすごく好きなんだ。」


腐の者たちは一瞬固いっしゅんかたまった。


「それって、恋愛的な?」


「そうなんだよ。

でもコスメや女の子の服や小物大好きだし、

女の子になりたい気持ちも変わらなくて、

カッコイイ男の子見るとドキドキするし、

BLも好きだし、何なのコレ?って思ってる。」


腐の者たちはこの複雑なシチュエーションに、かなり悩んだ。


「え~と、

まとめると、レオは、

男の子のままでも、

女の子の体を手に入れたとしても、

ジェンダー的に、曖昧あいまいかバイ?

思春期の性って流動的りゅうどうてきだから、

変わりやすいって聞いた事があるし、

レオは今そのど真ん中にいるのかも?

もしくは単に

リカちゃんだけが好きな人…かな?」


P'デコがメガネをきながら答えた。


リカちゃんはちょっとれていた。


「リカもレオの事は好きだけどさ、

恋愛の好きじゃなくて、

何というか…親友の好きなんだよねぇ。」


リカちゃんの答えに、レオはちょっとガッカリしているのが解った。


「あのさ、僕がもし男の子のままなら、チャンスある?」


レオは本気らしかった。


「う~ん。

レオ、一緒にいて楽だし、

趣味も被ってるし、

見た目も悪くないし…

アリ…かな?」


レオはガッツポーズをした。


確かにこの2人は格段に仲が良いので、お似合いのカップルになるかも知れない。


その時、ミルキーの携帯にLINEが飛んできた。


安藤安奈:ミルキーちゃん、ちょっと良いかな?

ミルキー:安藤先輩(ハートの絵文字)いいですよー♪

安藤安奈:あのね、相談があるの。

ミルキー:うちもお世話になってるし、何でも話しちゃってください♪

安藤安奈:実は、私の彼氏、浮気してるかも知れなくて‥-。


「えっ?本橋先輩が?」


ミルキーの携帯をのぞき込んでいた腐の者たちは、

思わず全員一斉いっせいに声をあげた。


ミルキー:彼氏って本橋先輩ですよね?どうしてそんな?

安藤安奈:女の勘?なんか違うの。ミルキーちゃん、何か知らないかなぁ?

ミルキー:いやいや、全然面識ないんで知らないです。

安藤安奈:そうだよねぇ。あのさ、17日の日曜、どこか行った?

ミルキー:撮影があって朝からスタジオにいましたけど。

安藤安奈:スタジオかぁ。ごめんね?うたがうみたいで?

ミルキー:いいですよ。うちマジ話したこともないんで、大丈夫です。

安藤安奈:うちの彼氏はミルキーちゃんの事知ってるから…ごめんね。

ミルキー:先輩~!うちが好きなの高木君ですよー!

安藤安奈:だよねぇ。ほんとゴメン。またね。

ミルキー:またです!


さぐりだったか…。安藤先輩、実は案外あんがい怖いキャラな気がしてきた。」


ミルキーが携帯を机に置いて身震みぶるいするような動作をしたので、

レオとリカちゃんがミルキーにって両側からハグをした。


「ミルキー、美人だから疑われやすいよねぇ。」


みんなの横で、P'デコが携帯をスライドしてニヤついていた。


「ムン!BLです!BL展開きたーーーー!」


P'デコの携帯には、駅のプラットホームに一緒に並ぶ、

私服の本橋先輩と高木君が写っていた。


「17日です!17日の写真です!BLです!」


腐の者たちの目はその写真にくぎ付けになった。


「きゃあああああああ。

つまり2人で内緒で出掛けてたってことぉ?

きゃあああああああ。」


腐の者たちから黄色い歓喜かんきの声が上がる。


「P'デコ、よくそんな写真撮ってたね。」


「BLの神様が、従弟いとこんちに行かなきゃいけない用事をくれましたあああ!」


「尊い!」


「リカ、この白線になって2人を見ていたい!」


「僕このガードわくになって見ていたい!」


「尊い!」


「アロイ!」


腐の者たちはきにいていた。


スポーツ観戦かんせんとかコンサートとかジムとか、

女子にはつまらない場所に、

たまたま2人で出掛でかけただけであろうとかまわない。


腐の者たちにとって、それは登場人物が必ずゲイ展開するBL世界なのだった。




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