第8話 腐女子の歓喜

ミルキーが安藤先輩から得た情報によると、

今日の夕方、本橋先輩は高木君をグラウンドに呼び出し、

色々聞いてくれるらしい。


腐の者たちは人目につかないように、

木陰こかげしげみに隠れ、

その瞬間を見逃すまいと、スタンバって、

2人が現れるのを待っていた。


「本橋先輩がサッカーゴールの所にいる!」


「あ、高木君が来た!」


「高木君、なんか照れてるよ!尊い!」


「この学園モノ2ショット尊い!」


「あ、LINEか電話番号交換したかも!尊い!」


「なにこの綺麗きれいな世界!」


「アローイ!」


腐の者たちは、時間にしたら10分程度ていどの2ショットに感激していた。


2人が帰った後、もうダッシュで美術部に戻り、

ミルキーを囲んでいていた。


レオとリカちゃんは手を取り合ってピョンピョンね、

キャーキャー言っていた。


「ミルキー、ありがとう!ありがとう!」


「あれはもうリアルBLの世界だよ!ありがとう!」


「この2ショットをリアルで見れただけで、

ご飯3杯食べれます、アローイ!」


その時、ミルキーの携帯に安藤先輩からのLINEが飛んできた。


安藤安奈:高木君、彼女いないって。携帯番号とLINE送るね。


「P'デコ、この後どうすりゃいいのさ!」


ミルキーはあわてていた。


「とりあえずお礼して、

《やっぱり勇気ない。なんか怖いし、恥かしい。》

って送っといて。

きっと心配してもっと取り持ってくれようとするよ!

女子って大概、人の恋愛に首突っ込むの好きじゃん?」


ミルキーがP'デコの指示通りに返信すると、

すぐまた返信が飛んできた。


安藤安奈;一応今回はミルキーちゃんの名前出してないけど、出そうか?


ミルキーの携帯をのぞき込んでいだP’デコが言った。


「ヤバい!そうきたか!

《事務所的に恋愛禁止だから、名前はまだ伏せておいてほしい。》

って送って!早く!」


ミルキーがその通りに送ると、またすぐ返信が来た。


安藤安奈:そっかぁ、つらいよね、任せて!力になるから!


「安藤先輩、マジ良い人だよねぇ。」


「うん、なんかこう…申し訳ない気が…」


腐の者たちは、いまさらながら、

自分たちの不純な目的のために、

優しい先輩を利用している事に、少しだけ罪悪感を覚えていたが、

すぐに今日放送予定のタイBLドラマを見る下準備に、

使用率の高い英単語の復習に取り掛かったのだった。

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