第5話 腐女子の気持ち


「私、考えてみたんだけどさ、

私がBL好きなのって、多分だけど、

自分が男に生まれても男が好きになるくらい、

男好きだからなんだと思う。」


ある日の美術部、

タイ沼でタイBL男優たちの肉体美にやられたミルキーが、

携帯の待ち受け画面のお気に入りのBL男優写真を見ながらそう言った。


「その理論りろんなら

ゲイ・ポルノも好きじゃなきゃおかしくない?」


P'デコの合間を入れない発言にミルキーが発狂した。


「うわあああああああ、

それは違うんだってェえええええ!

BLじゃなきゃ嫌なんだよおおおお!

肌色パンツが必要なんだよおお!」


P'デコはミルキーの肩を叩いて落ち着かせ、


「ストーリー性が重要って事かな?

男女間の友情って成立しにくいけど、

同性同士だと成立するし、

BLには常にそこを超えるハードルの高さがあるよね。

ポルノはもうストーリーそっちのけでヤってるだけだし。

あ、でも私、

カッコイイ系とと可愛い系男子がいっぺんに見れるから、

徳感とくかんパナイと思ってBL見てる時ある。

自分が女だから女の体は見慣れててどうでも良くて、

画面の中にいらなくてさ。

そう考えると、

確かにミルキーの言う男好きってのは認める。

HENTAIへんたいだけど一周回ってノーマルな気分!」


~と、眉一つ動かさずに言った。


「レオ、レオはどう思う?

レオってさ、今一応男の子の体じゃん?」


レオと新作のコスメの試し合いをしていたリカちゃんが、

口コミ1位の毛穴消しパウダーをレオにはたきながら聞いた。


「う~ん。

僕は甘いBLストーリーを見ると、

もしこんな甘い言葉や行動してくれる男の子に出会ったら、

僕も男の子の体のままでもいいのかもな~って見てる。

だから、甘いストーリーじゃなきゃなんか嫌でさ、

でも、そんな甘い相手って世の中にいない気がする。

特に日本じゃ絶対いない気がする。

少なくとも僕のクラスには1人もいないや。」


「だよねぇ~。」


リカちゃんが溜息ためいきをついた。


「BL界だと登場人物全員ゲイ設定展開なの多いけど、

現実は男女のカップルだらけだよ!あ~あ!」


腐の者たちはそれを痛いほど理解していた。


「うちの撮影現場とかにゲイのカップルいたりするけどさ、

BLの世界が全く浮かんでこないのよ。

それがリアルってもんなんだろうねぇ。あ~あ!」


ミルキーも溜息ためいきをついた。


「もし私がレオなら、タイ語を必死に勉強して留学して、

有名BL事務所に応募するな。

レオ、可愛いから絶対いけると思うんだよねぇ。

でも残念ながら私はブサ眼鏡でしかない。

タイ語勉強して貿易ぼうえき外交官がいこうかんか通訳の仕事について、

現地BLタイムリーに見るのがせいぜいな夢だな。」


P'デコは窓の外を遠い目をしてみていた。


「P'デコって堅実けんじつ的だよね。」


リカちゃんの言葉に、P'デコは振り向いた。


「でも生まれ変われるなら、

本橋先輩みたいな肉体派イケメン男子に生まれたかった。

本橋先輩と高木君がBL展開てんかいしてくれたらアロイのに。」


P'デコのつぶやきに皆が飛びついた。


「アロイ!それは尊すぎるっ!」


「男女の体が入れ替わる設定が今ほど欲しいと思った事はない!」


腐の者たちの頭はこの設定にきにいた。




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