第47話



 更に、いつの間に入ってきたのか別の声がする。


「参りましたね、関わるな、と言ったはずなのですがね」


「ハナダ、訴えてやる」


「貴方には訴える事などできませんよ。私は言いませんでしたか? 多くの機関が関わっていると」


「お前達は・・・、一体」


「それよりも、先生が知りたそうだから見せてあげたのですけどね。最後に感謝くらいはしてもらいたいものですね」


「最後だと、オオサワは何処だ」


「今頃は別の国に着いていますよ。この研究結果を持ってね」


「お前達は何を考えているんだ。何故だ、どうして研究内容を故意に見せようとしたんだ」


「タケダ先生もそうでしたが、他人の研究内容を勝手に見た限りは第3機関に報告しなければなりませんし、その内容を先生方が喋ったとしてもですよ、盗み見をした人の話を信じてもらえるでしょうか? ご質問はもうおしまいです。さ、お帰りください。それと、訴えても構いませんが、ご自分の身の安全のことも考えたほうがよろしいですよ。さ、終わりです。お帰りください」


「モトキ、お前はこれで良いのか? 本当にこれで良いのか」


モトキは、いつの間にか青白い顔をして震えている。


「黙っていてください、貴方が要らぬ考えさえ起こさなければ全てうまく行ってたんだ。とっとと家に帰ってください」


「お前・・・。そうか、分かったよ、帰るよ」


「しかしモトキ・・・、いや、もういい・・・。」


コミネは前室で防護服を脱ぎ白衣に着替え、研究室のロッカーへ白衣を突っこむと家へと向かった。

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