属性と魔素吸収率
俺はソフィを置いて、アリーナへと降りる。
魔法実技の授業は基本的には各人の好きなように行うようだ。座学で学んだことを元に新たな魔法の習得としていく。魔法発動に際し、分からないことがあれば都度教師に質問するのだそうだ。
クラスメイト達は散り散りになり、好き勝手に魔法を使っていた。
「で、何で俺だけ、先生に見張られながらやるの? 愛沙は?」
俺は適当に端っこの方でサボろうと思っていたのだが、橋間先生は何故か俺の目の前に陣取っていた。
藍紗はというと、他の生徒同様真面目に魔法の自習をしていた。
「お前が不真面目だからだ。転校初日に全ての授業寝て過ごす奴がいるか、普通?」
「いや、だって、こっちはほら、朝早く起きてこっちに来たんですよ? そのまま授業を受けてたら眠くなるに決まってるじゃないですか!?」
「何故、お前はそんな偉そうなんだ……」
橋間先生は呆れたようにため息をついた。
「お前も知っていると思うが、魔法は便利だが、簡単に人を殺せるだけの力を秘めている。悪用するやつに魔法を教えることは出来ない」
少し真面目なトーンで橋間先生が話始めたので俺は反省している体を装い、しゅんとした態度で大人しく聞くことにした。
「魔法が普及するとともに、魔法を悪用した犯罪もそれに比例して例年増えている。最近だと、去年の年末頃に東京で起きた銀行強盗。犯人は既に捕まっているが、その犯人がうちの学校の卒業生だった。あの事件以来、うちの学校への風当たりも強くなってんだよ。まぁ、つまり、何が言いたいかと言うとだな、座学の授業を寝て過ごそうが構わないが、実技の授業だけは真面目にやれってことだ」
「はいはい、肝に銘じて起きます」
俺は適当に返事をして聞き流した。
「お前、ちゃんと聞いてなかっただろ?」
「…………」
橋間先生にそう言われ、すっと視線を逸らした。
「はぁ~、まぁいい。ああ、それと一応お前の面倒を見るのは今日が初めての授業ってこともあってだ。一応、お前の使える魔法の把握をしておかないといけないからな。上蔀、お前の属性は何だ?」
魔法には火、水、風、雷、土、光、闇の七つの属性が存在する。この属性は人によって向き不向きが存在する。
ボイスコマンドを利用した第一位階魔法では、基本的に全属性を扱うことが出来るが、自分に合った属性出ない場合は想定以下の出力となる。
ボイスコマンドを使用せず、自身の演算能力で魔法を使う場合、自分の得意属性以外の魔法は使用できない。
ちなみに光と闇属性に関しては使用出来る人がほとんど確認されておらず、研究が進んでいない為、ボイスコマンドによる魔法は使えない。
この属性は生まれつき決まっているもので、一般的には二種類の属性しか扱えない。
「雷と土っす」
「そうか。あと、魔素吸収率は覚えているか? 分からなければ、今から測るが」
「それなら、一応ここに来る前に測っておきましたよ。二十八%」
デヴァイスによって空気中の魔素を集めるのだが、そのデヴァイスが感知できる魔素は半径百メートルの範囲だけだ。
しかし、その範囲内の魔素を全て自由に使えるわけではない。人によって多少の差異があるがその範囲内で使用出来る魔素量は決まっている。その半径百メートルあたりの魔素量を魔素吸収率と呼んでいる。
魔素吸収率の平均値はだいたい三十%。なので、俺は平均値よりやや低いくらいだ。
「なるほど……」
橋間先生は俺のデータをタブレットに打ち込んでいった。
「それじゃあ、適当に何か出来る魔法を見せてくれ。あ、ボイスコマンドは無しだ」
いきなりボイスコマンドなしを要求してくるのか。まぁ、転入生だしそれくらい出来なきゃ他の生徒に示しがつかないか。
恐らく橋間先生もそれを見越して俺が最低限魔法を使えるところを他の生徒に見せておきたかったのだろう。
「りょーかい」
その後、俺は授業終了まで自分にできる魔法を橋間先生及びクラスメイトにお披露目するのだった。
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