第5話
「何をしている!!」
現れたのシルビアの婚約者、アルファード・ランベルだった
彼は無言の令嬢達やシルビアに業を煮やしたのか4人の元まで歩いて行き令嬢達とシルビアの間に割って入った
そして
「答えろ、何をしていた?」
再び問いただした
シルビア《婚約者》を
シルビアは驚かなかった。
またかと内心息を吐き
「いえ、なんでもありません。彼女達とお喋りしていただけですわ」
「こんな人目のないところでか?」
「ええ、女には殿方に知られたくない秘事が一つ二つあるものなのです。ねぇ、皆様?」
シルビアが自身に暴言を吐いていた令嬢達に同意を求める。
「え、ええ、そのとおりですわ、ですが殿下が来られてしまいましたし、本日はこれで失礼させていただきます」
「シルビア様、本日はありがとうございました。また後日改めてお話させてくださいませ」
「それでは失礼しますね、またパーティーでお会いしましょう。では」
「「「おほほほほ!!!!」」」
そう言うや素早い変わり身で退散していく令嬢達・・・
残されたのは不機嫌そうに顔を顰めるアルファードと疲れと憂鬱を顔に出さまないと必死に堪え笑顔で令嬢達を見送るシルビアの二人だけだった。
令嬢達の姿が完全に見えなくなるとアルファードが口を開いた。
「問題ないな?」
いつもと変わりない質問
婚約者に最初にかける言葉とはとても思えない
シルビアは笑顔をアルファードに向け
「はい、何も問題ありません」
と答える
彼はこれ以外の答えを求めていない
「ならばいい、私は忙しいのだ。貴様にかける時間はない。」
「はい、承知しております。お手を煩わせてしまい申し訳ありません」
「分かっていればいい。それとついでだ、今夜のパーティーではマリアをエスコートする。貴様は体調を崩したとでも言って欠席しろ」
「畏まりました。」
「ふん、ではな」
そう言って立ち去るアルファード
シルビアはアルファードの姿が見えなくなるまで頭を下げていた。
「ふぅ・・・」
アルファードが去った後、シルビアはゆっくりと息を吐く。
アルファードが言ったパーティーは彼が隣国に出た海竜を討伐し凱旋した祝賀パーティー、主役の彼の隣で微笑むのは婚約者である自分ではなく
別に今更アルファードに嫉妬心はない
あの事件がきっかけでアルファードとは心が離れてしまった。彼がシリル・クロス伯爵令嬢と懇意なのも知っている。二人で街を歩いたり、学内で仲睦まじく過ごしている姿を度々目撃もしていた。
この様子なら婚約破棄も近いと思われる。
アルファードとの婚約破棄、それが今のシルビアの希望だった。アルファードと婚約破棄になればこの辛い日々を終わらせる事ができる。父であるカスパー公爵は激しく叱責するだろうがもう気にならない。シルビアの中で父はあの日から死んだのだ、婚約破棄されたシルビアは恐らく修道院に送られるだろう。いや、学内では影でシルビアがシリルを虐めていると噂されている事もあるからもしかしたら死刑かもしれない。
そう思った時、シルビアは笑った
学園で虐めにあっているのは私なのに・・・ね
と、シルビアは壁に寄りかかり亡き母に昔歌っていた歌を歌う。
今から急いで戻らなければパーティーの支度に間に合わないが知ったことか、アルファードに欠席せよと命令されている。これで行ったら激しく叱責されるし、行かなければ行かないでカスパー公爵にに叱責される。
ならばどちらでもかまわない。
誰かが探しに来るまでの間、安らぎの時間を
とシルビアは目を閉じ、ゆっくりと歌う
それの歌には歌詞とは別に
ここにはいたくない、いなくなりたい
と言う思いが強く込められていた
「~♪~♪」
「ねぇ、君」
「~♪っえ!?」
暫く歌っているといつから居たのか一人の男子生徒が立っていた。
彼は驚くシルビアを気にした素振りなく自身の髪を掻き上げ不機嫌な表情で
「さっきから耳障りなんだよね、悪いんだけど何処か別の場所に行ってくれる?」
「っ!!」
その男子生徒の言葉がシルビアの最後の壁をトドメを刺した。
私に居場所はないのですね・・・
滲む視界、溢れる涙、乱れる呼吸
シルビアは嗚咽し、座り込む
そんなシルビアへ男子生徒は一言
「なんで座るの?」
俺はモブ人生を謳歌します 伊佐波瑞希 @harukikouhei
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