第4話

ルシル達4人(?)が楽しくお茶会をしている頃


ニルバーナ魔法学園、魔法練習場の裏には一人の女生徒とそれを囲む3人の女生徒達

女生徒達は取り囲んでいる女生徒に罵声を浴びせていた。


「あんた生意気なのよ!!」

「そうよ!!いくら魔法が上手いって言っても所詮はSクラスにも入れない落ちこぼれの癖に!!」

「あんたみたいな女が婚約者じゃあアルファード様が可愛そうよ!!」


責められている女生徒、シルビア・カスパーは涙を必死に堪えながらただただ浴びせられる暴言に耐えていた。


「ほんとよね~、アルファード様には聖女様がいるのだからあんたなんてお呼びじゃないのよ!!」


聖女、それは自分の婚約者であるアルファード・ランベルが自身も在席するSクラスの生徒達を鍛え上げ設立した特殊部隊「ソード」に在席している女生徒、シリル・クロス伯爵令嬢の事を指していた。彼女は元々治癒魔法に得意としていたがアルファードの指導を受けその才能を開花させた。昨年起きた魔人の襲来、突如現れた魔人達に人々は蹂躙されるしかなかった。そこへアルファード率いるソードのメンバーが駆けつけ次々と魔人達を屠っていく、シリル・クロス伯爵令嬢は戦闘を他のメンバーに任せ怪我人の治療に専念し、その振舞から後に聖女の異名を賜わった。さらにその時治療で魔力をほとんど使い満身創痍なシリルをアルファードが優しく介抱した、傍から見たらそれはまるで想い合う男女のようだったと後に世界中へ広まった。

英雄と聖女の恋模様に世界中が湧いた、しかしそこである問題が浮上したのだ。英雄には婚約者がいた。その婚約者は


「あんたなんて公爵家という家柄しか取り柄がないのだから潔く身を引きなさいよ」 

「そうよ!!アルファード様の婚約者の座だって権力とお金に物言わせて就いただけの偽物が、いつまでもアルファード様に迷惑かけないで!!」


シルビア・カスパー公爵令嬢

それがシルビアの本名だ

彼女たちの言葉は半分あたりで半分ハズレであった。

シルビアの父、現カスパー公爵は別に野望家などではなく民から慕われるほど温厚な人物だった。娘であるシルビアの事も大切にしていた。だが、王家から第二王子の婚約者にと打診を受けアルファードがその才能を開花させてから彼は変わってしまった。

アルファードが次々と功績を上げていくにつれ高まる称賛と発言力、それは婚約者の父であるカスパー公爵も例外ではなかった。

彼は自身の高まる評価、贈られる称賛にいつしか恐怖した。もしもなにか過ちを犯せばこの高まる評価、称賛が罵詈雑言になって自身に降りかかると、彼はアルファードが裁いていった罪人達の末路を見て自分はああはなるまいと決心した。そこからは彼はより仕事に慢心し民達には今まで以上に真摯に対応した。傍から見ればそれはとても良い変化と言えるだろう。

なぜならその日よりカスパー公爵はアルファードの婚約者であるシルビアに厳しく対応し始めたのだ。


「シルビア、君はアルファード殿下の婚約者なのだから将来殿下をお支えしなければならない。だから今よりももっと勉強をしなければならい」


そう言って今までの10倍の勉強をシルビアに課した。さらに


「シルビア、君は殿下の婚約者なのだからダンスなど、立ち居振る舞いに粗野があってはいけない」


と言い、ダンスや食事マナーなどを徹底的に叩き込む、出来なければ厳しい罰を与えた。

さらにカスパー公爵がシルビアに求めるものはどんどんエスカレートしていった。

元々父親が好きだったシルビアは頑張れば父が褒めてくれると努力を重ね、アルファードに対しても真摯に対応した。そして何より彼を愛そうと寄り添ってきた。

だが、どんなに努力しようと、愛そうとしてもアルファードには近づくこともできなかった。

彼は次々に功績を上げていくが対する自分はどうだうか?

公爵家の令嬢としてシルビアは万点以上の成績を収めていた。しかしアルファードは軽々と世の英雄、賢人たちの上を行ってしまう。


彼に自分は必要なのか?


そう疑問を持ち始めた時だった

アルファードを慕う令嬢達から嫌がらせを受けるようになったのは・・・

最初は小さな嫌がらせだった。それに対しシルビアは教師に教えられた様に毅然とした対応を見せた。しかし嫌がらせは無くならず、そしてある日令嬢達に強めに叱責している様子をアルファードに目撃されてしまう。アルファードはシルビアが他の令嬢に叱責している様子を見てシルビアが令嬢達を虐めていると誤解し婚約者に嫌がらせした令嬢を庇ってしまった。衆人監修の場で・・・その状況がどこで捻れたのか貴族子女達の中でシルビアを卑下に扱っても許されるという噂が広まった。

そしてその後決定的な事件が起きた、シルビアが15歳になり魔法学園入学に際し、彼女はSクラスになれなかった。

そのせいで影で噂されていた、シルビアを卑下にしても問題ないのでは?がより確実な物になり、彼女が入学した頃より様々な嫌がらせを受けるようになった。しかしシルビアは嫌がらせを《それ》を婚約者であるアルファードや父であるカスパー公爵には言わず一人耐えた。

なぜなら以前叱責していた場面をアルファードに見られ咎められた際彼は


「何をしている!!君は私の婚約者だろ!?ならば他者に対し慈しみの心を持って対応してはどうなのだ!!このように怯えさせるなど恥を知れっ!!」


事情を聞かれることもなく怒鳴られた


だが別に怖いとは思わなかった

彼はなにかに怯えているように見えたからだ

それに、彼よりも父の言葉の方が酷かった


「このゴミがっ!!なぜアルファード殿下を怒らせた!!お前は我が家を潰したいのか!?この穀潰しが!!お前など生まれてこなければよかったのだ!!」


父の言葉を受け、シルビアの中で何かが壊れた。それ以降シルビアは他者に助けを求めることを無意識に拒み、何をされても何を言われてもただただ我慢するようになった。

今日も同じだ

ただひたすら我慢して嵐が過ぎるのを待つだけだ

そう思った時だった


「何をしている!!」


自分を囲む令嬢達の後方より聞き慣れた、今一番聞きたくない声がシルビアの耳に響いた

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