第20話(わかるだろ、だってAなんだぜ!)
「なんでお前がここにきたか、分かるな?」
ある日の休憩時間、俺は先生に呼ばれたため、学校の社会科準備室に来ていた。
「いや、あの...」
俺が言いあぐねていると、
「あ、呼ばれたからというのはなしだからな」
先生はそう俺にくぎを刺してきた。
いや、直接的にいうと呼ばれたからなんだが。
先生は俺を呼んだ理由を俺の口から言ってきてほしいらしい。今日の社会の授業の後に先生から、
「お前はあとで社会科準備室に来るべきだからな」
という、はたから見れば、何を言っているのか分からないような言葉を残して教室を去ったため、こうしてそのあとに社会科準備室に来てみたのだが。
たしかに俺が呼ばれる理由は十中八九分かっている。分かってはいるが、確信がない限りあまり言葉にしたくない俺の性格から、言葉を言いあぐねていたわけだ。
しかし、先ほどの先生の言葉から意を決し、俺が呼ばれたであろう理由を口にした。
「あの、俺が期末で赤点を取ったからです...」
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「あっはっは!さっきの先生がお前を呼んだ理由それだったのかよ!」
今日の放課後、ことのあらましをいつもの男2人に伝えると、山田が大きな声で笑ってきた。
そう、期末テストが終わり、様々なテストが返却されている今現在、俺は世界史Aのテストで28点という見事な赤点を取ってしまったのだ。
「笑い話にはならないだろう。で、結局どうなったんだ?」
「あぁ、成績のほうは中間と合わせて評価したら大丈夫とは言われたよ」
前田の質問に俺はそう返す。結局、社会科準備室ではというと、国公立受けるのなら地理Bは使う、世界史は地理とも直結するからやらないなんて選択肢はない、と言われてしまった。
俺は金銭的理由から、私立の大学を受けるという選択肢はなかったので、先生の論からすると、世界史を勉強しないという道は存在しないことにはなる。しかし、
「やっぱりさ、地理Bじゃないんだぜ!やる気は下がっちゃうよ」
俺は4人にそうつぶやく。俺たちの学校は2年生から1、2組が文系に、3、4組が理系へと別れる。また、組の分け方は、それぞれ成績がいいほうが2,3組になるようになっている。
まぁつまりだ、4組である仲野さんも含めて、俺たち6人は全員理系ってことになる。
そんな俺たちはどんなに受験科目が多い大学を目指したとしても、社会の科目が2つ求められるなんてことはまずない。
また、俺たちが受けている授業は地理Bと世界史Aのみ、もし世界史で受験したいと思ったとしても、Bではない世界史Aでは、受けられる大学は少ないだろう。
まぁつまりだ、
世界史A単体では受験とは一切関係ない。
たしかに先生の言いたいことも分かる。しかし、地理Bにつながるからという理由で確かにな、世界史Aも頑張ってみるか!と、言えるやつは少ないだろう。だって俺も言えないし。
「でもさ、お前って歴史めっちゃ好きじゃなかったっけ?」
前田がそんなことを言い出す。すると、
「そうだよ、お前小中の時、めっちゃ歴史勉強してたじゃん!あの時なんか帰り道でも楽しそうに江戸時代はどうだとか話してたじゃね~かよ」
山田も前田に乗っかって話し出した。
「あぁ、確かに俺は歴史が好きだ。歴史関連の動画を見たことは何度もある」
そう、俺は小中学校の頃、歴史がめっちゃ好きで、中学校の頃、社会科の先生に、
お前は将来、歴史系の仕事に就くんだろ、と言われたほどだという自負はある。
しかし、
「でもな、動画を見たり、本を見ることで得られる歴史の魅力は授業では味わえないんだよ」
俺はそう口にする。歴史系の番組や解説動画は自分から見に行っていたにも関わらず、なぜか授業中は1番前の席で最初から爆睡を始めてしまう。さっきも先生から今まで3組で毎回寝てる奴なんか見たことないと言われてしまった。なぜ寝てしまうのか、1時間目だからだろうか...
「はぁ、そうなものかねぇ...」
俺の発言に対し、前田がそうつぶやく。
「そういえばさ、クラスのやつらはテストの件になると嘘つきばっかだよな。俺たぶん赤点やわ~、とか言ってるやつらみんな結局赤点じゃないからね」
俺は話を変え、クラスの話を始める。こういったことはあるあるなのだろうか。みんなの言っていることは自分の点数を予想する判断材料に全くと言っていいほどならない。
「ま、みんな多少は頑張ってるってことだ。お前と違ってな...」
「うるせぇ」
俺の発言に前田がそう皮肉を言う。
俺は周りを見ているわけではないため分からないが、みんなは口ではやってないと言ってはいるものの、最低限のことはやっているようだ。
俺はそう言ったことは気にせず、勉強するときは勉強し、寝てしまうときは残念ながら寝てしまっている。そう考えると結構自由気ままなのだろうか。
みんなの生活はどんな感じ?
僕らは愉快に生きていく! えとはん @etohan
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