第18話(来たよ、暇なひと時が...)
皆さんこんにちは、佐藤です。
私は今、学校の非常階段に座っています。非常階段のすぐ横のグラウンドでは、運動のできる男たちがバレーの試合に一生懸命臨んでいることでしょう。
一方で、俺たちのような、たった一回戦で出番を終えてしまう者たちは階段に腰掛け、決勝戦が終わるのをただ待つだけなのです。
「試合がないのって、こんなにも暇だったんだな、俺知らなかったよ」
いままで一回戦で負けたことのなかった山田は、今回のあまりにも長い暇な時間に嫌気がさしてしまっているらしい。
俺たちの場合は、学校でのどうでもいいような話をするのが普通だが、それが特別楽しいというわけでもないため、今回は山田と前田の3人で静かに座って下を向いている。
「マジで暇だよ~!なぁ、体育館にでも行って、女子の試合を見に行こうぜ」
あまりの暇さ加減に俺は2人に提案する。
「ここにいたって暇だし、行くか」
前田も山田を賛成し、俺たちは女子のいる体育館へ向かった。
「お、女子の方も白熱してるね~!」
山田がそう言うと、俺たちは試合が見やすいように2階へと向かう。すると、
「お、あれ清水さんじゃないか?」
「え、どこどこ?」
前田の発言に山田はすぐに返事をする。前田の指さす方へと視線を向けると、そこには清水さんと、未來とクラスメイトの6人でのチームで試合に参加していた。
「この時間でも参加してるってことは、あの2人のチーム、1回戦突破したんだな」
「いや、トーナメント表からみて、3回戦っぽいぞ」
「なに!」
山田の発言から俺と前田は思わず声を上げる。1回戦突破できるのかという俺たちに比べ、あの2人は1回戦どころか、2回戦も突破しているのである。あの2人とは見る世界が違うのだ。その上、
「おい、あの2人、めっちゃうまいぞ!」
中学でバレー部だった未來はもちろん、さすがは清水さんである。勉強どころか運動でさえも秀でていた。速いフローターサーブを相手コートに的確に打ちつけ、レシーブ、ブロック、スパイク全てを的確に行う。
清水さんのチームは難なく3回戦も突破し、残りは決勝戦のみである。
試合が終わると、俺たちは2人のもとへ向かう。
「お~い、お前ら決勝までいったのか。すごいな!」
「あれ、健一、男子の試合のほうは大丈夫なの?」
「あぁ、そのことなら永久に大丈夫...ってこっちの話はどうでもいいんだよ!」
「はいはい、負けちゃったんだね。それなら、決勝での応援、期待してる」
女子の方はあとは決勝戦のみであるため、もうひとつの準決勝が終わり次第、決勝が始まる。
「もうひとつの試合はまだ終わるのに時間がかかりそうだし、一回外に出るか」
前田の提案で、俺たちはもう一度外に出る。
外に出てみると、たくさんの女子がコートを囲って応援に来ている。男子の方もいよいよ終盤のようだ。
「お、おい、俺たちのクラス、準決勝まで行ってるぞ!」
トーナメント表を見に行った山田が俺たちに駆け寄りながらそう叫んできた。
「まじで!運動音痴のオンパレードみたいな俺らのクラスが!」
「それは言いすぎだろ、少数だけど運動が得意な奴は俺らのクラスにもいる」
俺の発言に前田がそう返す。
「ピピー!」
俺らがそう言い合っているうちに、試合終了の笛が鳴った。
点数表を見てみると、俺らのクラス側に25の数字が書かれていた。
「マジかよ!スゲーな」
俺らが驚き合っていると、
「お~い、お前ら~」
俺らのクラスのやつが俺ら3人のもとへ駆け寄ってきた。
「どうしたんだ、お前らのチーム決勝までいったんだろ、すごいな」
俺がそうつぶやくと、
「あ、ありがとう。でも、今はそれどころじゃないんだ...」
「は?」
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30分後、
女子は準決勝が終わり、いよいよ決勝が始まろうとしていた。
俺は体育館に行き、決勝前の未來と清水さんのもとへ駆け寄る。
「やぁやぁお二人さん、決勝も頑張って~」
「ありがと、あれ、山田君は?」
俺の発言に、未來はそうつぶやく。
たしかに俺の隣には、前田しかいない。それに関しては、清水さんも首をかしげる。
「あぁ、山田は大いなる使命をしょって、戦地に向かったんだよ」
「何言ってんだよお前は!山田はただ、俺らのクラスの助っ人に行っただけだろ」
俺の意味深な発言に前田がそうツッコむ。
「ん、どういうこと?」
「俺らのクラスの男子のチームが決勝まで行ったんだけど、準決勝でチームの一人が突き指しちゃって出られなくなったから、山田はその埋め合わせとして試合に行っただけだよ」
未來の疑問に前田はそう説明する。
山田は決勝が始まるまで、みんなと息を合わせるために少しの間だがチームのみんなと練習を行っているのだ。
「へぇ~、そうなんだ。それなら私たちも試合が終わったら応援に行こうかな」
未來はそう言うと、清水さんと一緒に決勝のコートに向かい、俺と前田の二人きりになる。
「なぁ前田、俺らって漫画で言うと完璧サブキャラだよな」
「あぁ、俺らはただ、栄えある主人公たちをただ眺めるだけなのさ」
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