第15話(佐藤のとある一日)


皆さんこんにちは、佐藤です。


今日こそは本当に特別何かあるわけではなく、いつもどうり学校で授業があるだけ。今回はそんな普通の日常を紹介したいと思います。



まずは、朝7時、起床。朝ご飯を食べ、学校に行く準備を整えると、学校の開始時間に合わせ、7時50分には家を出る。


まあこれくらいの時間に家を出ると、



「おっは~」



誰かしら途中で出会うことになる。今日は山田だった。



「なんだ山田か...」



「なんだってことはないだろ。なんだ、佐々木さんがよかったか?」



「からかうんじゃねーよ」



そんなことを言いながら俺たちは学校に向かう。


教室に入り、席に座ると、



「おはよう、今日なんか元気ねーな?」



隣の人が声をかけてくる。前の席替えの時、俺と山田は清水さんしか見ておらず、俺の席はともかく、隣の人なんか気にも留めていなかったが、俺の隣は前田だった。


俺たちは女運が悪いらしい。3人中誰も女子と隣の席ではないという悲しい状況である。これから恋愛ストーリーが始まるもんならまずありえない状況だ。


そんなこんなで8時30分を過ぎ、朝のショートホームルームを終えると、授業が始まる。マジで授業のほうは何もないが、一応紹介はする。


今日の1限目は英語。俺は一番前の席にもかかわらず、目立たない体制で爆睡を始める。席替えをした直後は前田から寝るたびにビンタを食らっていたが、ほぼ毎時間寝ていると、さすがに何もしなくなった。


寝ているといっても、先生に当てられる直前になると意識を取り戻し、先生が尋ねた問題には答える。そして、答え終わると、また睡眠に入る。


2限目、化学。当てられることがほぼないので爆睡。


3限目、古文。こちらも当てられることがほぼないので爆睡。


4限目、地理。これに関しては当てられることがないので完全に爆睡。


この時点で、知らない間にお昼の時間になっている。昼飯は男3人で集まってそれぞれの弁当を食べる。



「一日って早いもんだな~」



「そりゃそうだろ、あんだけ寝てりゃあな」



俺のつぶやきに、前田がそう突っ込んできた。



「お前、一番前の席でよく寝れるな、真ん中の席の俺ですら寝るの抵抗あるのに」



山田がそうつぶやくと、俺はこう言ってやった。



「何を言ってるんだ。俺は寝ようと思って寝てるんじゃない、知らないうちに寝ているんだ、寝る寝ないをコントロールできたら苦労はしない!」



「そんなこと、堂々と言われてもな~」



前田がそんなことを言ってくる。


まぁ今日こんだけ寝たんだ。午後は大丈夫だろう。




5限目、物理。言ってるそばからの爆睡。これで上の言葉はフラグとなってしまった。


最後6限目、数学。こればっかしは寝ていられない。先生は、ほぼ毎回当ててくる上、寝ているとブチ切れられるため、この授業だけは寝ていられない。俺は意地でも起きる。



これが終わるとあとは掃除をして放課。これがいつもの授業から放課までの内容。な、別に何もないだろ?



これが俺の普通の日常だ。



後残っているのは部活くらいである。


今日の部活は、写真部と美術部。今日はこの順番に行こうと思っていたが、今回は美術部の顧問が急な集合をかけたため、放課後になったらどちらもすぐに行く必要があった。


そのため、兼部している俺と山田は、俺が写真部、山田が美術部と分担して部活に参加することとなった。



俺はいつもどおり未來と写真部の部室へと向かったが、案の定、大した報告などなく、ごみを捨てに行ったくらいで写真部らしい活動はなかった。


部活を終えると、俺と未來は部室を出る。一応美術部のほうを覗いてみたが、美術部も先生の話を終えると、みんなそのまま帰ったらしい。


結局、俺と未來はそのまま学校を出る。


考えてみれば、未來と二人きりで帰ることはあまりなかった。



「久しぶりだな、一緒に帰るのも...」



「そうだね」



小中の頃はよく一緒に帰ってはいたが、高校にもなると男子と女子で変な隔たりができてしまうもので、一緒に帰ることは少なくなった。



「そうだ、駅前に新しくできたクレープ屋に行こうよ」



未來が珍しく誘ってくる。たしかに、ここらでクレープといったおしゃれな店ができるなんてめずらしく、行ってみたい気持ちはよくわかる。



「いいな、行ってってみるか!」



俺がそう言うと、俺たちはいつもの駅に向かう。





駅に着くと、その隣には、きれいな店が営業中の立札をたてて、存在していた。


店に入ると、中はそんなに広くなく、席は6人分くらいのカウンター席があるくらいだった。メニューを見てみると、



「わぁ、たくさん種類あるね!」



「いや、多すぎだろ?」



未來の言葉に俺はそう突っ込む。クレープの中身はいろんなトッピングの中から、自由に注文できるシステムで、選択肢は山ほどあった。


だから選択肢あればあるほどストレスを感じるっていうのに!



俺は結局諦めて、店のおすすめを注文して外に出ると、いつもどうり駅前のベンチに座り、クレープを食べ始める。すると、



「ねぇ、健一は何頼んだの?」



未來はそう聞いてくる。



「ん、俺は店のおすすめのチョコレートのやつ」



「どんな味?一口食べさせてよ」



「なんでだよ、自分のを食えよ」



俺はそう突っぱねると、



「じゃあ私のいちごのクレープ食べていいから、はい、あーん」



未來はそんなことを言って、クレープを俺の口に近づける。



「あ、あぁ...」



その時の俺は、今までこういった経験がなかったため、おそらく顔は赤かっただろう。そして俺は未來のクレープを一口食べる。



「じゃあ、今度は私ね」



俺は未來の言葉で俺のクレープを未來の口に近づけると、未來も一口食べる。



「あ、やっぱりチョコもおいしいね。私もそっちにしておけばよかったかな~」



未來はそう言うと、俺はまたクレープを食べ始める。



あれっ、これって間接キスじゃね?





俺は食べ終わると、座ったまま空を見上げる。時間はもう7時、いくら夏といっても日が沈んでくる頃だ。



振り返ってみると、小学校まではこの時間くらいまで未來や山田や前田と一緒に遊んだものだ。しかし、中学校、高校になるにつれて、部活だの勉強だので一緒にいる機会が減っていった。


その上周りが、男子だ女子だと、変に気にするようになって、俺と未來にもその変な隔たりができてしまっているのだと思うようになっていった。


まぁ、学年が上がるとそうなるもんだろうとは思うようにはしていたが、やはり寂しさはあるもので。


前回の修学旅行の班決めのときに変なもやもやがあったのは、その隔たりが実際に見えてしまったようで、思うところががあったからだろう。


いつもは俺、山田、前田、未來の4人で過ごしていたのにな。


俺がそんなことを思っていると、



「帰ろっか」



この未來の発言に、俺が返事をして立ち上がる。



「あぁ、暗くなるまでには帰らないとな」



「ねぇ、また一緒に行こうよ」



未來がそう言ってくる。



その時の未來の姿は小学校の頃の未來とあまり変わっていないように思えた。


隔たりとかは俺の思い過ごしだったらしい。いま考えてみると、朝まであった変なもやもやはなくなっている。



「そうだな、今度は山田や前田も誘おうぜ」



「いいね、清水さんも誘っちゃおうよ」



俺たちはそんなことを言いながら家路につく。今はとてもすがすがしい気持ちでいっぱいである。



今日の俺の心情を振り返ってみると、自分でも思うが、男ってなんて単純なんだろう。
























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