番外編1(29円事件)
あれは確か俺が小学2年生の頃...
俺はある日、公園で山田と前田で公園に遊びに来ていた。それは山田のとある一言から始まった。
「ねぇ、めちゃめちゃ暇なんだけど」
俺たちが遊びに来ていた公園は遊具がほとんどなく、ただの空き地のようなものだった。集合してから1時間、さすがに飽きてくる。
「コンビニで駄菓子でも買わない?」
山田がそう言うと、俺たちは自分の持ち物からお金を差し出す。
俺、10円
山田、5円
前田、7円 計22円
小学2年生である俺たちにとっては、これが限界なのだ。
「これじゃあ10円駄菓子2個が限界だよ」
前田がそう言うと俺と前田は山田のほうを見て、
「山田、残念だがお前の分は...」
と、前田は山田の肩に手を置きながら言った。
「なんでだよ、俺も食いたいよ」
「お前が一番もってたお金が少なかったんだから仕方ないだろ」
「俺とお前なんか2円の差だろーが。そんな威張るなよ!」
山田と前田は言い合いを続ける。何かいい案はないものか。
「あっ!!」
俺はあることを思い出し、声を上げる。
「なんだよ、びっくりするだろ」
山田がそう言うと、俺は2人に向かってこう言った。
「なぁ、前埋めたタイムカプセル、覚えてるか」
「はぁ、忘れるわけねぇだろ、たった2週間前のことなんだから」
前田が俺の質問に答える。そう、俺たち3人は大人になったら掘り起こそうと、タイムカプセルを近くの公園に、つい2週間前に埋めてきたのだ。
「あのタイムカプセルに確か俺は少しばかりか小銭を埋めたはずだ」
「なんだって!」
俺の言葉に2人がびっくりしたように反応すると、俺たちは自転車に乗り、タイムカプセルを埋めた公園に向かった。
今となってはなんで小銭のためにタイムカプセルを掘り起こそうなんて考えたのだろうか。
「たしか、ここだ」
俺たちは公園に到着すると、最近いじくったであろう土のあとを見つけ、俺たち3人はスコップでタイムカプセルを掘り起こす。
まさか、大人になって掘り起こそうと埋めたタイムカプセルを、たった2週間後に掘り起こすことになるなんて思いもしなかった。
「おい、これじゃねーか?」
山田がそう言いながら、自分の下の土から少しばかり出てきた金属っぽいものを指さす。
「そうそう、それ。とりあえず掘り起こしてみよーぜ」
俺がそう言うと、俺たちはその金属の物体を掘り起こす。
「はぁー、やっと取り出せた。さてさて、俺は一体タイムカプセルにいくら入れたんだっけな~」
俺はそう言いながらタイムカプセルの蓋を開けると、そこには...
5円玉1枚、1円玉2枚、計7円が入っていた。すべて足すと29円、もう一つ駄菓子を買うのに1円だけ足りない。
「あーもうっ!!なんで1円足んねーんだよ!」
山田が悔しそうに叫ぶ。しかし、前田はそんなことは気にすることなく、憂鬱そうに別の問題を口にする。
「ねぇ、これ、戻すの...」
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「あっはっは、あったなーそんなことも」
山田が懐かしそうに言った。
ある日の放課後、俺たちは美術室で昔のことを思い出していた。
「あのときは笑いごとじゃなかったよ。あのタイムカプセル戻すの大変だったんだよな~」
前田がしみじみとそう言うと、
「で、結局その29円ってどうしたんですか?」
いままで話を聞いていた仲野さんがそう聞いてきた。
「あれっ、結局駄菓子買ったんだっけ?」
「いや、最終的に29円ごとタイムカプセルに埋めたような...」
俺と前田がそんなことを言っていると、
「ならもう一度掘り起こしてみるか!」
「えっ、」
山田がめんどくさい提案をしてきたのだった。
あの時俺たちが来た公園、そこに当時タイムカプセルを掘り起こしたメンバーと仲野さんが集結する。
「あそこだあそこ、今度は分かりやすいようにってあそこの木と木の間に埋めたはずだ」
山田が指をさしながらそう言う。
「また掘り起こすのかよ、タイムカプセルってそんなポンポン掘り起こすようなものじゃねーだろ」
「いいじゃないですか、いまは高校生なんですし、掘り起こすのも前と比べて簡単でしょ!」
前田の文句に対して、仲野さんはそう言い返す。結局俺たち3人はスコップを持って地面を掘っていく。
「そういえば具体的にいつ掘り返そうって言ってたっけ?」
「え~っと、たしか誰かが結婚した時じゃなかったっけか?」
「じゃあ一生掘り起こすことないかもな...」
前田の発言で急に空気が静まり返った。高校生になったことで、小さい頃当然のようにすると思っていた結婚が、できないのではないかという疑念が、悲しいことに湧いてしまう。
「さ、さあ、掘り返せたぜ。早く中を見てみよう」
山田が空気を変えようと話題をタイムカプセルに変更する。
「たぶん20円分だけ使ったんだと思うけどなぁ」
「それじゃあ誰かひとり食えなかったってことじゃねーか。29円ごとタイムカプセルに埋めなおしたんだって」
山田と前田がそんなことを言っているうちに俺はタイムカプセルの蓋を開ける。
さあ、結局どっちだったんだ。
「ぱかっ」
俺たちが中身を覗くと、そこには今となっては腐ってしまっているであろう、2つの駄菓子と、あまりの9円が入っていた。
なんで!?
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