第8話(あいつも隠れてやることやってるらしく...)
とある土曜日の朝、俺はまた、最寄りの駅にいた。
しかし、今回は制服である。
まあ最寄りといっても家から自転車で山の上り下りを入れて30分くらいかかる距離ではあるのだが...
前回は車で行っていたため、気にならなかったが、休みの日にもかかわらず、自転車で登校の時とほぼ同じ距離を走らなければならないのはやはりきついものである。
到着してすぐに、ベンチに座って涼んでいると、
「おはよう、今日は来るのが早いんだね」
「”今日は”は余計だ」
未來も自転車でやってきた。
そう、今日は前回言っていたれんげ祭りでの撮影会の日である。
祭りの場所はこの駅から二駅先の場所であり、顧問の先生もそこで合流することになっている。
撮影会の参加者は結局、俺と山田、未來と清水さんの4人だけであった。なので今回は4人でこの駅に集合し、今回こそは電車で移動することになっている。
「今日はいつもと違って、教科書やらの荷物がなかったから早かっただけだよ。あとは、山田と清水さんだけだな」
俺と未來は同じベンチに座って二人を待つ。すると、
「ねえ」
未來のほうから話しかけてきた。
「なんで健一は写真部に入ったの?山田君が入った理由はこの前聞いたけど...」
そういえば俺は、あの時のその場のノリみたいな感じで写真部に入ってしまった。なんでと言われても大した理由などない。
「ん~、山田の恋が面白そうだったからかな、」
「面白い?」
「友達の恋バナってすげー面白いじゃん?今回がさ、恋バナのリアルタイムバージョンみたいなものだったから」
「健一も、好きな人がいるからとかじゃないの?」
「え、俺が?ないない、ないって!それに俺のことが好きになるような、物好きな女子なんかいねーだろ」
俺は言ってて悲しいものの、全力で否定した。すると未來は、
「ふーん、あっそ!」
少し不機嫌そうな表情でそう言ってきた。何か気に障ることでも言っただろうか?
「物好きで悪かったですよーだ」
「ん、今なんか今なんか言ったか?」
「何でもない!」
未來は何か小声で言ったっぽかったが、突っぱねられてしまった。やはり、女子との会話は難しいものである。
それから数分が経つと、
「おはよー!わりい、遅くなった」
山田が清水さんと一緒にやってきた。清水さんとは途中で会ったのだろうか?清水さんは徒歩だが、山田は自転車を押して歩いている。
「遅くなってごめんなさい。カメラの充電を忘れてしまってて」
「大丈夫大丈夫、まだ時間はあるから」
祭りの場所までの電車は1時間に1本の頻度でしか走っていないため、時間には余裕がある。
俺たちはそれから少しすると切符を買って電車に乗る。
あ、ちなみに言っておきますけど、自動改札やICカードみたいな、便利なものはありませんからね。
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目的の駅で降りると、そこではたくさんの人で賑わっていた。
俺たちは、先生と合流すると、各自自由に撮影していくこととなった。
周りを見回してみると、ここに撮影をしに来た高校生は俺たちだけではなかった。
俺たちが着ている学ランとは違う、おしゃれなブレザー着た高校生たちがカメラを持って撮影している。
「しゃれた制服着てんなー」
俺はそうつぶやきながら、俺は学校から借りたカメラを使って撮影していく。
俺と山田や未來は自分のカメラを持っていないため、学校からカメラを借りているが、清水さんだけは自分のカメラを使って撮影している。
すると、山田が清水さんに話しかける。
「何撮る?」
「あそこにいる人たちを撮影させてもらいましょ」
清水さんがそう言うと、二人は祭りに来ている人を撮影させてもらおうとその人たちのところへ行ってしまった。
「あの二人、いつの間にあんなに仲良くなったんだ?」
友達の恋を応援するのは楽しいものの、いざその二人が仲良くしているのを見ると、こっちはむなしくて仕方がない。
「いいなー、羨ましいな」
俺はそうつぶやきながらシャッターを切る。
「どう、いいの撮れた?」
そこで、未來が聞いてくるので、俺は
「よくないよ~、いろんな意味でよくないよ」
と、わけのわからない返事をしてしまった。
「え、どういうこと?」
「いやさ、山田の恋が面白そうだから写真部に入ってみたはいいものの、いざ仲いい姿を見せられるとな~」
「あれっ、あの二人、いつの間に仲良くなったの?」
「俺も分かんねえ」
山田も山田でやることはやっているらしい。
俺は羨ましいと思いつつ、その二人をカメラで撮っていると、
「ねえ、」
未來はそこで、面白そうな提案をしてくる。
「山田君と清水さん、二人きりにしてみない?」
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