第2話(とりあえず写真部に入ります)


「案外早くってどういうことだよ、教えろよ」



俺は山田の質問を無視して廊下を早歩きで目的地もなく移動する。


数分ほどしてある人影を見つけると俺は立ち止った。



「お、いたいた。おーい、未來、未來!」



「あ、健一、どうしたの?」



彼女の名前は佐々木未來、あまり明るい性格ではなく、男女共に自分から話しかけてるところはほとんど見ないが、俺にとってはそういった性格のほうが話しやすく、今となっては俺の唯一の幼馴染である。


身長は150センチくらいのロングヘアーで前髪が長いからか普段はあまり顔が見えず、目立たないキャラであるため、あまり男子の話題に出ることはない。近くでよく見るとかわいい顔をしているのだが...。非常にもったいない。


まあ今となっては自分から気兼ねなく話しかけれる女子は未來くらいしかいないのだ。



「お前って確かさ、写真部だったよな?」



「え、そうだけど」



「え、佐々木さんって写真部だったの!」



山田が驚いたように横から言ってきた。



「なあ、俺ら写真部に入ろうかなって思ってるんだけど部室の場所教えてくんない?」



「え、別にいいけど。写真部に入りたいって、どうしたの急に?」



まあ当然理由を聞いてくるだろう。すると俺はニヤリとしながらこう言う。



「聞いてくれよ、山田の奴がさ、清水さんのことが好き…」



「わー!わー!わー!」



すると山田が大声をあげて俺の声を遮り、俺を体ごと後ろ向きにし、小さな声で話してきた。



「なんで言っちゃうんだよ、恥ずかしいだろうが!なんだあれか、友達の秘密とかすぐ言っちゃうタイプか!お前は!」



「そうじゃねーよ、でもさすがにこれから男2人で女子に近づくのは無理があるだろ。女子の協力者もいないと、な?」



俺はなだめるようにこう言うと



「まあ、たしかにそうだけどさ、でも...」



「清水さんと仲良くなりたいんだろ。これも大事な作戦だ、受け入れようぜ!」



すると山田はしばらく悩んだものの、こう言った。



「まあ、そうだよな、これも大事な過程なんだもんな。わかったよ」



あらやだ、簡単に信じちゃって。噂好きの人だったら終わりよ、あなた。


とりあえず山田を納得させると未來のほうを向いて話を進める



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「なるほどね、清水さんとお近づきになるために写真部に入りたいと」



未來が納得したようにそう言うと



「そういうこと、写真部で清水さんなら、結構可能性があるだろ?」



「たしかに、ほんとにお近づきになることは簡単かも」



「ん、どういうことだ?何2人で納得してんだよ」



会話の内容がよくわからないのか、山田が間に入ってきた。



「ま、入ってみればわかるよ、とりあえず部室行こうぜ、たしか毎週月曜日はミーティングだって言ってたよな。その時に入部の手続き済ませちまおうぜ」



「おい待てよ、当事者は俺だぜ、俺が一番よくわかってなきゃダメだろうよ」



俺と未來は山田のことはほっといて部室へと向かった。



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「すいませーん、写真部に入部したいんですが」



俺と山田は未來についていくように部室へ入り、そう言った。



「はーい入部希望ね。はいこれ入部届。これに書いてある項目を記入してね」



4月だからか顧問の先生が慣れた手つきで入部届を渡してきた。俺と山田は入部届にある項目を埋めて入部届を提出する。



「はーい入部完了ね、それじゃあミーティング始めまーす」



提出し終えると俺と山田は部室全体をみて目を丸くする



「おいおい佐藤、部員めっちゃいんじゃん!、これでどうやって清水さん特定で仲良くなるんだよ!」



未來から話は聞いていたがまさかこれほどとは。部室にはこれだけで1クラス作れるんじゃないかってくらいに人がいた。ざっと数えても30名はいるだろう。



それから先生はミーティングの内容について話し始める



「これから2週間後、近くでれんげ祭りが開催されるのでそこで撮影会を行います。参加希望者はこちらの紙に自分の名前を書いてください」



れんげ祭り、れんげが咲くところで毎年この時期に開催される祭りである。れんげをバックに祭りを楽しむ人たちを撮影するのだろう。


そしてあと少し話をし終えると



「それでは、今日のところは解散で」



先生がそう言うとみんな一斉に部室を出ていき、帰っていく



「え?」



山田がまた目を丸くしている


そりゃ無理もない、週一のミーティングがたった数十分で終わってしまったのだから。それに、れんげ祭りに参加しなければ部活自体も今月はミーティングのみとなってしまう。


それにもかかわらずみんなは先生が置いていった、れんげ祭りの撮影会の参加希望の紙に一切目もくれずぞろぞろと帰っていく。山田はあまりに部活があっさりと終ったことに驚き思わずこう言った。



「え、こんだけ?」



そう、この学校の写真部は部員が多いものの自主的に活動しなきゃほとんど活動がないといった部活なのだ。写真部の内容は以前から未來から聞いている。


そして俺と山田はミーティング中、人の影で見えなかった清水さんのほうに目を向ける。俺自身、清水さんの姿を見たのは久しぶりであった。


未來と同じくロングヘアーではあるのだが身長は170センチと高く、山田の身長が165センチであるため二人並ぶと清水さんのほうが高くなってしまう。


清水さんはみんなとは違う方向に歩きだし、れんげ祭りの撮影会の参加希望の紙に名前を記入しだした。


山田はきょとんとした顔でこう言う



「へぇー、清水さんは参加するんだ」



これもまた未來から聞いている。清水さんは積極的に部活に参加する。つまり、この部活は自分から積極的に参加すれば必然的に清水さんとお近づきになれるのだ。


俺たちも続いて参加の紙に自分たち3人の名前を記入し、帰路につく。



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「な、わかっただろ、清水さんと案外早く仲良くなれるかもしれないって言った理由が」



俺が学校の帰り道にこう言うと、



「わかったけど、清水さんとうまく仲良くなれるかなあ?」



山田は自信なさげにこういった。



「何言ってんだ、マラソン大会の時にたくさん話したんじゃなかったのか?」



「そ、そうだけど。あの時はたまたま運がよかっただけで...」



山田は急に清水さんと仲良くなるきっかけができたため、自信がなくなってしまったらしい。


ふっ、やはり今の山田には特訓が必要なようだな。


俺はこう思うと山田にこう言った。



「おい、山田。今週の日曜日、都会に行こうぜっ!」
























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