僕らは愉快に生きていく!

えとはん

まずは1学期!!

第1話(好きな人ができたらしいよ)

それは山田のある一言から始まった。



「好きな人ができた」



高校生活も1年が過ぎ、高2の春、始業式の日の放課後の教室で突然言ってきた。


今までの高校生活、したいことなんてものはなく、ただのんきに毎日を過ごしていた。このままではいけない、とは思いつつも何をすればいいかなんてわからず、行動になんて移せなかった。


そんなときに起こったこのイベント。俺は少しテンションが上がっていた。



「マジで! 誰、誰?」



俺はハイテンションで山田に問い詰める。



「お、同じクラスの清水さん...」



「おお、マジか!え、お前と清水さんって仲いいの?」



清水さん、普段物静かな感じで男子どころか女子とも仲良く話しているところをあまり見かけない、男子にとって一番話しかけにくい女子である。そんな人と山田が知り合いだったなんて...!



「いいや、ほとんど話したことない」



「なんだよ!じゃあなんで清水さんのことが好きになったんだよ?」



まあ確かに清水さんはかわいい、かわいいけれどもそれだけだったら山田は1年生の時から好きになったと言ってくるだろう。



「マラソン大会、覚えてるか?」



「ああ、ちょっと運動できるお前と違って、俺がビリになったあの忌々しい大会のことだろ?」



マラソン大会、持久力のない俺にとっては最悪のイベントである。あのゴール直前の大して心のこもってないみんなの”がんばれ”が一番心にぶすぶす刺さってくる。

来年もあるの、あれ?

 


「あの時、女子が少し遅れてスタートしたにもかかわらず、ゴール直前に清水さんに抜かれたんだ」



「あー、清水さんってなんでもできるもんね」



「ゴールした後、マラソン大会が終わるまでの間、清水さんと暇つぶしがてら話してたんだ」



「ふーん、俺がひいひい走っている間、お前は女子と二人きりでトークですかー? そりゃあ結構なことで」



「まあそう言うなよ。清水さんってさ、男子の中でよく知ってる人なんて全然いなかっただろ。その時初めて清水さんとまともに話をして今まで知らなかった清水さんの一面を知れてもっと彼女のことを知りたいって思ったんだ」



山田は恥ずかしそうにそう言う。



「なるほど…、お前が清水さんのことが好きなことは分かった。けどそんなこと俺に言ってどうするつもりなんだよ?」



そういう前から山田が俺にしてほしいことは大体分かってはいたものの、確認するつもりで少しニヤリとしながらそういった。



「わかってんだろ、俺と清水さんがうまくいくように協力してほしいんだよ。」



はい、待ってきました。学生生活でよくある友達の恋のお手伝い。いいじゃん、学生っぽくなってきたじゃん。



「任せとけ、任せとけ。清水さんと仲良くなるきっかけくらいは作ってやるよ!」



俺は珍しくテンションが上がっている。



「マジかよ、ありがてえ。毎日リア充してえなって言ってたお前ならきっと引き受けてくれると思ってたよ」



なんだか図られたような感じだが、まあいいだろう。



「それでそれで?最初はまずどうすればいいんだよ?」



山田が希望に満ちた目でそう言ってくる。しかし、



「そんなもん分かるわけねえだろ。恋愛経験0の俺にそんなこと聞いてくるんじゃねえ」



元も子もないことを俺は言う。



「なんだよそれ、お前さっき任せろって言ってたじゃねえかよ?」



「まあまあ落ち着けって、仲良くなるのまでは友達作りとさほど変わらねえよ。たぶん…」



最後の言葉だけは山田に聞こえないくらいの声で言ってしまった。



「そうかなあ、そうだといいんだけど」



山田も少し自信がなくなってしまったようだ。ネガティブなオーラって伝わるんだなあ。



「まあとりあえず情報収集だ。清水さんって何部に入ってるんだ?」



距離が縮まるきっかけはやはり部活動だろう。男女問わず部活を通じて仲良くなるなんてもはや定番だ。



「部活?清水さんは確か、写真部だったはずだよ」



「写真部?写真部ってたしか…」



俺はそのキーワードから大きな可能性を見出した。



「おい山田、清水さんと案外早く仲良くなれるかも知んねーぞ」
































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