第69話 執務宮の妖怪(5)

 ヴィチェンバスト王国から来た船団が積んできた小麦は無事ヴァン国内の倉庫へと納めました。

 船団と一緒に来ていた王族の2人は養母様が全て対応していて、私は蚊帳の外です。

 歓迎式典の時に挨拶しただけで、捜査の指揮の為とんぼ返りしましたから、それ以後会って居ません。

 12月に成る前にヴァン国産の魔道具や魔薬(どちらも安全な物です)に魔具省オウレ工房産の偵察バードやモニターなどを購入して帰って行きました。

 養母様は意図的に私に会わせないようにしていた節が在ります。

 なぜそんなに警戒するのか分かりませんが、見送る事も無く帰った事を知ったのは3日後でした。


 年を越しても捜査と逮捕に裁判とする事は山ほどあります。

 まだ終わってはいませんが、最終的に逮捕した数は2千人に及ぶ程の大事件に成りました。

 逮捕者の殆どは、妖怪砂掛け婆達の手下として働いていた人たちです。

 働いていた仕事の中身が、違法な魔薬や魔道具だっただけで犯罪に加担している認識は薄かったようです。

 でも違法は違法ですし、作っていた物はとても危険な物です。


 彼らを収容する刑務所は既に満杯状態で、キャラバン隊の広場を借り上げて臨時のテント村を作って対処しています。

 費用は大赤字ですが出さないわけには行きません。

 押収した今回の資産の中から(お金もあります)出せれば良いのですが、政府の財産として登録できるのは、犯罪の裁判が終わって、政府の押収物として処理出来てからですから来季の予算に間に合うか分かりません期待しない方が良いのです。

 とりあえず借金と臨時予算を組んで予備費を取り崩して対処しています。


 影響の出た執務宮の部署から上げて行くと。


 総務省

 妖怪砂掛け婆達の牙城ですから、トップ以下全ての秘書、その下で働いていた百人程が逮捕されてます。

 このままでは普段の業務や政府の活動費が止まってしまいます。

 仕方が無いのでレタとアイをオウレから呼び寄せた事にして、家(神域の部屋)経由で呼び寄せました。

 ナミにはオウレに留まって貰い、魔具省の工房と自警船隊の工廠を任かせています。

 レタには決済処理を任せて、アイには執務宮の管理全てを任せています。

 その他の事務や書類の作成、他の部署とやり取りする書類をガイア(アーカイブ室のCPU的何か)にさせて、私が管理する事にしました。

 総務とは軍務、商工、魔具、農務以外の全てを行う部署ですから、細かな事柄が多くガイアがとても役に立っています。

 私は偵察バグが事務処理に役に立つなど夢にも思っていませんでしたが、ガイアは偵察バグに必要な要望を探させ、提供した物品の監査まで行わせたのです。

 これも捜査が一段落して、偵察バグを回収していたからできた事だと思います。

 何とか残った人と力を合わせて総務省の仕事をこなせている状況です。


 軍務省

 ジュヘイモスの海兵団が妖怪砂掛け婆達の塒に成っていました。

 逮捕者は50人程ですが、海兵から不名誉除隊されたものは500名に登ります。

 海兵団は解散するしかありませんでした、不名誉除隊させた者達の裁判など今後の対処は海軍本部へ丸投げしています。

 ポッター長官は責任を取って海軍本部長官を辞めるそうです。

 とりあえず今回の処理が終わるまで辞任は待って貰っています。

 養母様は海軍を私の指揮下にしないかと聞いてきています、絶対嫌です。


 商工省

 大使として派遣される者は敢えて妖怪砂掛け婆達の仲間以外の者を選んでいました。

 どうやら、帝国との連絡などをヴァン国大使館経由で行いたく無かったようです。

 ここからは、軍務省と同じぐらいの50人ほど逮捕者が出ています。

 ヴィラ元大使を商工省長官に任命して、任せています。

 何か泣き言を言っていますが、私はもっと大変な総務省の面倒を見ているので無視です、無視。


 魔具省

 ケマル長官はジュヘイモスへ呼び戻しました。

 残りたいとごねていましたが養母様からきつく言ってもらい帰って来させました。

 筆頭秘書のケリシア以外に10人程が逮捕されていますが、大きな混乱は無いでしょう。

 無いはずです。

 無いですよね、ケマル様、何で総務省に入り浸りなんですか?


 毎日私の所へやって来ては飛行機の構造が如何かや揚力を翼だけでなく胴体にも担わせてはどうかとか聞いて来ないでください、私は其れ処では無いのですから。

 (私は泣いて良いですか? by小姉)

 (彼はする事はしているから、文句は言えんよ by大姉)

 (もともとの仕事が少なかったからじゃない? by妹)


 最後の農務省は筆頭秘書のエリネニアと3人が逮捕されただけで、影響は殆どありませんでした。

 長官のハルナニアは続投して貰っています。

 エリネニアはハルナニア長官の妹に成るそうなので、時期が来れば辞任する予定です。


 その他で大きな組織はエルフ学園です、学長と副学長、それに医者や研究者など100人近く逮捕されていますし、罪状が酷くて裁判では死刑が求刑されるでしょう。

 研究と称して人体実験を行っていたので、殆どの者が死刑となりそうです。


 エルフ学園は移転させました。

 エルフの子育ての習慣も直ぐに変える事は出来無いので、託児所や幼稚園、学生宿舎などのエルフ専用の部分は個別の施設を作って対処しています。

 初等部から上の通学していた学校は場所を移し、学校組織はそのままにしてあります。

 専門分野の医学や薬学の組織は逮捕者が多く、残す事は無理がありましたので廃校にさせています。

 今後医学部や薬学部を作るにしても組織の透明性を確保してからになります。

 エルフ学園は存続も含めて対応を考えて行く事に成ります。


 エルフ学園の医学部をつぶしたので中核となる病院がジュヘイモスに必要になりました。

 そこで執務宮の通用門近くに病院を建てました。

 魔薬や魔道具などは私(姉ねと妹)が対応して作っています。

 一月で建てたので、後で改造が必要ですが、入院できる体制が作れています。

 ここは、私が緊急性が高い患者が出た時に呼ばれて対応しています。

 それ以外の時はジュヘイモスの一般の開業医だった人達が輪番で対応しています。

 看護人も派遣して貰っています。

 管理はアイが行っています。


 その他は魔薬や魔道具の工房などが在りますが、全て潰しました。


 これでヴァン国にある誘拐同盟関係は全て潰しました。


 今年はこの名も無い世界で3人となってから3年目になります。

 ヴァン国は今年大きく変わるでしょう、私の周りも慌ただしくなっています。

 でも、妖怪砂掛け婆達は退治できました。

 もちろんまだ逃げた者が居ますし、帝国も商業同盟も健在です。

 しかし、私は自信を持って宣言します。


 私は此処に誘拐同盟撲滅を宣言します。

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