第55話 オーナ姉妹の雇用

 雇用するのに一番心配したのは国籍の事でした。

 帝国の帝都で作った従者登録されている証明書には私の従者であるとしか書いて無いのです。

 私が作ったオーナ姉妹用のヴァン国身分証明書には妖精族としか書いていません。


 そこで妖精村で新しく妖精族として国籍を作ることにしました。

 工房を出た後、オーナ姉妹の下宿先に寄ってオーナ姉妹と話をしました。

 雇用に付いてと魔具省オウレ工房の授業と実習の助勤に付いてです。

 その後、村に帰った私は、伯父様方に相談しました。


 伯父様方はミエッダ師匠がシルフィードの名を許した事が分かるとあっさりと妖精族として帝国を通って来た東方にある妖精族の村出身として受け入れてくれたのです。


 こうしてオーナ姉妹の国籍がヴァン国に出来たので、次は私が雇用する事になります。

 今してもらっている事をそのまま契約書に書いて、レタ、アイ、ナミ用に一人づつ契約書を作ります。


 レタは女執事として、アイはオールワークスの侍女として、ナミはコックとして契約する事に成ります。


 三人とも賃金は年棒金貨10枚です。

 彼女達の年棒が金貨10枚なのは、私の情報部準備室室長の年棒が金貨100枚だったからです。

 これは、私的雇用人が年棒以外に必要な食事や衣服などの金額が年間金貨15枚必要な事を考えると、ぎりぎり赤字の数字だと思います。


 賃金や衣服に食事代はヴァン国の裕福な商人や国の高官が雇用している人の情報を聞いて決めました。


 実際の所賃金の支払いは全然心配していません、養母様にお願いしてオウレの町で教える件はちゃんと辞令を出してもらえる事になったのです。

 モニター越しに養母様にレタ、アイ、ナミに付いて帝国からの雇用関係をヴァン国でも正式に継続したい事を話して、許しを得ました。


 養母様は私の仕事量が減ってとても良い事だと喜んでいます。

 此の件が妖怪砂掛け婆達に知られた時どのように仕掛けて来るのか不安が在ります。

 それとも、妖怪砂掛け婆達が既に何か手を出しているかもしれないと、あからさまな介入のあれこれを思い出して不安をおぼえます。

 しかし、既に矢は放たれたのです。

 彼女達の誘いに乗ったからには何があっても受けて立つ積りです。


 オーナ姉妹と実際に契約をしたのは次の日です。

 朝何時もの様にシリアルビェッカ村から飛空してきた私は下宿先を訪ねました。

 一度レタの部屋に集まってもらって、神域の部屋へ移動します。

 オーナ姉妹に契約書に魔紋とサインをして貰い、私が全部に魔紋とサインをして契約完了です。

 レタの部屋へ戻って、一度オーナ姉妹全員と一緒に下宿先から出ます。

 工房へ行く途中で、アイは家(神域の部屋)へ戻し、レタとナミを引き連れて魔具省の工房へと歩いて向かいました。


 レタとナミを連れて魔具省の工房へやって来た私は、ケマル魔具省長官様に私の関係者で工房の人達に指導が出来る知識と技量を持つ者達だと告げて、今後私の代わりに教室で教えたり、工房の指導に当たる事が在る事を伝えます。

 ケマル様は単純に人材が増えた事を喜んで居られるようです、レタとナミを歓迎して呉れました。


 授業の前にレタとナミをドワーフの匠達に紹介しました。

 他にも一人アイと言う関係者が居る事も話して、3人が私が来れない時は授業と実習を担当する事を伝えます。

 ドワーフの匠達は知識と技量が在るのなら、多い方が質問し易いと歓迎しているようです。


 予定通り飛行機の構造と動きに付いて講義を行います。

 構造を理解しないと飛行機の動かし方が理解できないので、実際の偵察機を使って動かしながら授業を勧めます。

 彼らからの質問は、なぜ鳥と違って翼が前後に2つ在るのかや尾翼の必要な理由などに集中していました。


 明日からは、各部分毎の働きと魔術陣の解説を行う事を伝えます。


 授業の後は工房の食堂で食事をする事になります。

 昨日は満足に食事も出来ずにドワーフ達から質問攻めに会いました。

 昨日と違って、レタとナミが睨みを聞かせてくれたので、3人だけで食事が出来ましたし、ドワーフ達から邪魔をされることもありませんでした。


 昨日も思いましたが、ドワーフが好む料理はお酒のつまみなのでしょう。

 私は昨日も今日も飲みませんが、彼らはガンガン飲んでいます。

 昨日の料理はお皿より大きなステーキと岩石パンの塊でした。

 今日はソーセージの山と岩石パンの塊です。

 付け合わせは辛子のみです。


 今日はテーブルを一つ3人で使えるように確保して、ナミが岩石パンをスライスしてくれましたし、持ってきたバターやジャムを出してくれたので、それを塗って食べる事が出来ました。

 2人が居なければ昨日のように一口も食べれなかったでしょう。

 食後はレタが紅茶を入れてくれて、やっと一息入れる事が出来ました。


 食後の質問もレタとナミが仕切ってくれて、一人づつ順番に聞く事が出来ました。


 契約の話は、昨日と同じに最初だけ指導して、後の実技の時間をナミに任せて、レタと二人でケマル魔具省長官と話す事にします。

 レタが作ってくれた契約書に魔紋付のサインをしたのは実技の終わる頃でした。


 内容は。


 授業料と工房立ち上げとして金貨百枚で期間は最大1月です。

 提供する魔鋼の道具は1セット金貨千枚、微細書き込み装置は金貨6百枚もらえる事に成りました。

 魔鋼の値段が高いのは魔鉄(アダマンタイト)より硬い物が切れるからです。

 魔鋼の道具は合板用として自警船隊の工廠へも売る積りです。

 ウルの汁で強化した合板には必須の工具に成ってしまいましたから。

 火球砲改は2門セットで金貨5百枚に成ります。


 はっきり言って値段は安すぎ(2割ぐらい)ますが、実費がその位なので私が手出しに成らない値段設定にしました。

 ただし、工房が出荷した年間の売り上げ金額から5%を貰う契約にしています。

 昨日の接着剤は合板の売り上げからロイヤリティを貰う契約ですが、今回はここの魔具省工房全体の売り上げからロイヤリティを貰う事に成ります。


 これでロイヤリティの契約が切れるまでの50年間は収入が入る事に成りました。


 今日はこの後レタとナミを連れて、カモメを引き取りに行こうと思っています。

 カモメを預けたハルク船工房へは、昨日授業が終わった後オスカー(ハルクさんの子)さんに私達が行く事を連絡してくれるようにお願いしています。


 久しぶりにカモメに会えます、とっても楽しみです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る