第52話 工房の立ち上げ(1)
シルアルビェッカ村へ帰って来た私は、休む暇なくオウレの工房を立ち上げる為の準備を整えました。
黒板替わりのホワイトボードは教室での授業に使います。
実習で使う部品や材料も用意しました。
偵察機本体は基本木製です。
偵察機の胴体、前翼、尾翼、離着陸用橇。
今回作ったウルの汁で強化した薄板材で作った合板を用意します。
と同時に強化した合板用に木工用の道具も用意します。
ビチェンパスト国で作った合板では使えた鋸やノミやカンナがウルの汁で強化した合板に刃が立たなかったので、魔鋼の合金で何セットか作りました。
ドワーフの方々は既にウルの汁で強化した板材を扱っているので必要無いかもしれませんが念の為です。
操縦系としては、魔術陣を書ける環境は念の為用意しておきましょう。
目や耳となる音声映像魔道具と通信魔道具。
全体の制御を行う通信魔道具からの魔波を各機器へ分波する為の魔道具と逆の働きをする集波用魔道具。
操縦装置一式(通信魔道具、音声画像魔道具、推進力の切り替えレバー、操縦べダルと操縦桿)。
今後は操縦には立体表示できる球体画面を映像通話にはテレビ画像的な平面へ映すモニターが多く作られることに成るでしょう。
動力系は燃料の魔力を供給する魔石から魔力を取り出す魔道具と推進機やモーターの魔道具です
飛行機の推進用として旋風推進機を作ります。
曲面への魔術陣の書き込みが慣れないと厄介ですがドワーフなら直ぐに慣れて作れる様になるでしょう。
動力源の魔石から安定的に魔力を取り出す魔道具は魔道具の定番だと言って良い程、全ての魔道具に必須のものです。
偵察機本体に取り付ける補助翼、方向舵、昇降舵を動かす紐を引く力はモーターで作られます。
魔力で回転する魔道具は昔から作られています、今回も大きさが小さい以外は同じものです。
動力系については心配は無いと思っています。
その他として
計器は、速度計、時計、高度計、対地角度計、魔石用残魔力計などを造れるように用意します。
ペンキなどの塗装や雨水が沁み込まない為のパッキン等も用意しますが、工房が必要か決める事です。
後は7級の魔石を10個位、偵察機用としてはこんなものでしょう。
偵察バグからの音声画像中継機と偵察バグ投下用の箱は別です。
偵察バグの作成が出来るようになってから取り付けられるようにします。
他にも部品の作成用に錬金釜、付加用魔術陣と魔術陣作成用インクとペンにミスリルの合金の板等々。
工具等も含めて用意だけはします。
工房は用意していると思うので、用意していなかった場合に出します。
偵察バグの作成として必要な物はほどんど錬金と付加の魔術陣と魔石があれば出来るので、ラッパ型の超小型魔波通信機の作成用に専用魔道具を提供する必要はないでしょう。
教科書などは用意しません、授業では飛行の原理や特性について教える内容は基本その場限りです。
各自がノートなどへ書き込む事は自由ですが、細かな数字までは教える積りはありません。
ただし検証の方法は教える積りです。
私自身まだ分からない事だらけなので、各々で検証して見ると良いと思います。
オウレのケマル魔具省長官から連絡が来ました、教室が完成したそうです。
早すぎでは?
ドワーフの匠なら魔術を駆使して数日で土台から建屋まで作ってしまいかねないとは思っていましたが、それでも早いですね。
用意が終わっていて良かったです。
明日からオウレで活動する事になります。
翌日昼2時(午前7時)にシリアルビェッカ村を飛空で出てオウレの港町まで飛空します。
早く出たのは、オウレの町に用事があって西の下町へ寄って見たかったからです。
オウレの町は西が下町で東へ行くほど広くて大きい住宅や高価な商品を扱う商店が多くなり広い店構えをしています。
西の下町で人通りが少ない道路へ降ります。
うまく人目を避けられたようです、人が空から落ちて来た、などと騒ぎに成っても困ります。
今日もズボンにシャツとスーツ姿ですけど、軍服に似た前回のスーツと違って日本の教師をイメージしたスーツに紐ネクタイをしています。
授業をするのですから、気持ち的に教師の姿で行いたいと思ってアイに作って貰いました。
髪は飛空する必要から、前回と同じシニョンでお団子です。
今日オウレの下町へ来たのは、レタ達が仮の宿として使う部屋を借りようと思って、オウレの西の町に詳しいはずのオルドヴィン自警船隊長官にお願いして賃貸の部屋を紹介して貰ったのです。
それがこれから尋ねる下宿屋を営むオイナ・リーズさんの下宿屋兼住宅です。
オイナさんは60歳台の人族の女性で、主に自警船隊の女性隊員相手に下宿屋をしているそうです。
住宅から出て来た様に装って、レタ、アイ、ナミを家(神域の部屋)から外へ出します。
4人でオイナさんの家を訪ねます。
家はあちこちへと曲がりながら南から北へと登って行く道の左手側(西)にありました。
「御免下さいませ」
すると家に居られたのか、直ぐに反応があって人が一人出てきます。
「いらっしゃい、話は聞いてますよ、此方へ入って来なさい」
60歳台の人族の女性ですから、此の人がオイナさんでしょう。
「オイナさんでよろしいですか?自警船隊の人事部から紹介をしてもらったレシータ・オーナ・シルフィードと言いますです」
「アイリーン・オーナ・シルフィードです、よろしくお願いします」
「ナミーリア・オーナ・シルフィードでござる、良しなにお願い申す」
「カスミ・ヴァン・シルフィードです、顔を覚えて貰おうと付いてきました」
レタ達の事はミエッダ師匠から認められているので、シルフィードの名を戴いています。
玄関から入った先は少し広さのある部屋に成っていて、そこから廊下が右(北)へと続いて、奥に階段が一つ在るだけのようです。
玄関の間から出入りできるドアは3つ在って、正面奥と廊下の反対側(南)と廊下沿いの北側に在ります。
オイナさんはその奥の扉を開けて、私達を招き入れると、そこは応接室でした。
椅子に座って、入れてもらったハーブ茶を飲みながら自己紹介の後下宿の規則や謝礼の事などを話しました。
今回下宿を借りるのはレタとアイとナミの3人、オーナ姉妹は表向きしばらくオウレに滞在する事に成ります。
オーナ姉妹が工房の立ち上げ期間後も自由に出入りできる部屋を確保するのが目的です。
期間は一応1年として、必要なら延長も出来ると言う事です。
私が一緒について来たのは、顔を知ってもらいオーナ姉妹の部屋に出入りできるようにと考えたからです。
「妖精族の娘さん達が4人もオウレの町に出て来るなんて初めてよ、良い付き合いが出来るようになると良いわね」
と少し好奇心を刺激された様ですが、人の好い笑顔で歓迎して呉れました。
レタ達が借りる事に成る部屋へ案内されて今はガランとした中を見せてもらいます。
一階の廊下の突き当りは東へと上がる階段が在って、階段を上った先は東西へ廊下が在ります。
2階の廊下沿いに4部屋が南向きに在り、内3部屋がレタ達が下宿する部屋に成ります。
一階にはオイナさんの住居となっていて、他には台所に食堂、お風呂(蒸し風呂)とトイレが在ります。
各自の部屋以外の掃除や食事はオイナさんがしてくれるそうで食事が要らないときはオイナさんに事前に知らせて欲しいそうです。
2階の一番東の部屋は今自警船隊で働いている女性が下宿しているそうです。
部屋の家具などの購入と搬入はオーナ姉妹に任せて、私は魔具省の工房へ行くことにしましょう、そろそろ時間です。
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