第50話・1 ヒュージスライム狩(2)

 朝です、泣き寝入りした妹も朝にはいつもの元気を取り戻しています。


 今日の朝食は、朝から食パンの薄切りに肉のスライスした物と生野菜を挟んだ肉サンドです。

 ほんの少し西洋辛子の入ったマヨネーズを塗っています、このくらいなら私でも食べられます。

 スープは何時もの根菜類を入れたゴロゴロ野菜スープとは趣の違う上品なスープでした。

 琥珀色をした、澄んだスープに緑や赤い色をした野菜を細かく切って入れてあるのが、アクセントと若干の噛み応えを与えてくれます。

 とっても美味しいです。

 でもこれってナミが朝作ったにしては手が込んでいますよね?

 「お嬢さま心配ご無用、これ為るスープはヴィヨン(骨や肉や野菜から取った出し汁)を氷結庫にて瞬時に氷結して保存した物でござる」

 「調理する時に氷結庫から出して粉砕するのでござる、適量の湯に入れて目の細かい布で濾した後具材と煮て灰汁を取れば直ぐに出来るのでござるよ」

 ナミがいつの間にかインスタント料理を作っています。


 食事を済ませて、お茶にしましたが今日で探索は終わりです、ヒュージスライムを退治して昼には帰る積りでいます。

 「みんな、今回予定通りに氷雪の森ダンジョン最後の討伐を行います、相手は大物です攻撃を始めると暴れるかもしれません、それに巻き込まれないように火球砲改2の設置は1ワーク(1.5㎞)は離して設置する積りです」

 皆の顔を見ると落ち着いていて大丈夫だと思える顔をしています。


 玄関の間に火球砲改2を3門用意しています。

 他にも魔石の入った箱や敷物などの今日使う物が置いてあります。

 「では、出発しましょう」

 「姉ねと妹(いも)ちゃんはここで見守っていてね」

 「では、出発です」


 「「「「「はい!」」」」」


 何時ものようにテントの中に出ます。

 各自の確認と周囲の把握に努めます、魔物はこの近くには居ないようです。

 テントの後始末はレタ達に任せて、飛空で空に上がります。

 天気の良い日なので地上から300ヒロ(450m)から周囲を見渡すと70ワーク(100㎞)離れているシルアルビェッカ村の聖樹が3本見えました。

 ミエッダ師匠は今日もお元気そうです。

 『おはようカスミちゃん』ミエッダ師匠が気が付いて朝の挨拶をしてくれます。

 『おはようございますミエッダ師匠様』こんな遠くからご挨拶なんてはじめてです。


 『うふふ、そうね、今日帰って来るのよね待っているわ』とミエッダ師匠が帰りを待っていてくれます。

 『はい、ヒュージスライムを片付けて帰りますね』と今日の予定を伝えます。


 『ええ、待ってるわ』ミエッダ師匠にはヒュージスライムの事もご存じの様です。

 『はい直ぐに退治して帰ります』勇ましくミエッダ師匠に見えを切ってしまいました。


 ぐるりと回りを見回すと、今居る尾根を登った先の更に二つ谷を渡った先に、尾根のほぼ中ほどから上全てがスライムで覆われています。

 見つけました、ヒュージスライムです。

 大きさは一つの山をほぼ覆っていますから最大の大きさのヒュージスライムで間違いないでしょう。


 ふと、呪いの森ダンジョンを思い浮かべました。

 あの森が呪われたのはヒュージスライムがあの森を覆う程大きくなって、自分の重さで核が潰れて死んだことが発端ではないかしら。

 体が残り、今の呪いの森ダンジョン程の大きさが瘴気に染まって呪われて出来たのかもしれません。

 取り留めの無い事を考えてしまいました、今は見つけたヒュージスライムの対処です。


 『レタ、見つけました今の場所から北北東へ8ワーク(12㎞)先の山全体を覆っています』

 レタに見つけた場所を教えます。


 『お嬢さま、それではこれから移動しますが、火球砲改2を設置する場所を選んで下さい』

 『分かった、地図で示すからそこへ移動します、一度家へ入ってね、先ずレタから行きます』


 レタの攻撃地点はヒュージスライムの北、同じ尾根の更に高い山頂です、距離はヒュージスライムまで約3ワーク(4.5㎞)。

 飛空で移動後、家(神域の部屋)からレタとアイが火球砲改2を二人で運んできます。

 アイが射撃用の陣地を作ります、と言っても平たい長方形の地面にするだけです。


 そこにレタが敷物を引いて、ヒュージスライムの方へ向けて火球砲改2の三脚付きを設置します。

 この火球砲改2は今回のヒュージスライムの戦用に地面に設置できるように改造しています。

 砲の重心部分に上下左右へ多少動かせる台を、砲の先端部分に三脚を置いて砲身が地面に付かないようにしています。

 魔石の交換時などで両手を放した時、砲の先端が地面について、魔石交換後最初の一発目が少し先の地面で爆発して巻き込まれるとかになったら大変危険です。

 照準器と引き金は、新に火球砲の左側面に取り付けました。

 寝そべって撃つ姿勢ですからここに設置する方が楽な姿勢だと思います。


 レタの側にナミが魔石の入った箱を置いています、魔石は箱の中に50個入っています。

 簡単な陣地を作って狙撃体制を取るレタに聖域の結界を掛けます。

 攻撃中に他の魔物が襲って来る事への対策です。

 レタが魔石を火球砲改2へセットして砲の横に突き出た照準器で狙いを定めています。


 準備できたようです、アイとナミに家へ入らせると、飛空で離れます。

 次はアイの射撃地点です。


 アイはヒュージスライムの南西、前にヒュージスライムが居たテントを張った尾根の一つ谷を隔てた先にある開けた場所へ陣地を作ります。

 この辺りは谷底まで何処にも木が無く草原や岩場に成っています、ヒュージスライムの通った後なのでしょう。


 距離はヒュージスライムまで約2ワーク(3㎞)、此処から見るとヒュージスライムの厚さが900キュビテ(300m)もあるので同じぐらいの標高なのに見上げるようにしないと天辺が見えません。

 アイは自分で聖域の結界を掛けたことが無いので今回は私が掛けます。


 ナミはヒュージスライムの南東、ヒュージスライムから谷を1つ隔てた尾根の山頂へ、距離はヒュージスライムまで約2ワーク(3㎞)です、ナミと私の二人で火球砲改2を家(神域の部屋)から持ち出して私が土魔術で作った陣地へ設置します。

 魔石の入った箱を取り出しやすい所へと移動させているナミに聖域の結界を掛けます。


 私は配置についたレタ、アイ、ナミから攻撃準備完了の確認をします。

 「レタ攻撃準備が完了できたら知らせてください」

 オーナ姉妹は最終点検を行って返事を返してくるでしょう。

 上空から3人を見ると火球砲改2の砲身をヒュージスライムへと向けています、準備が終わったようです。

 「準備完了しましたであります」

 と、レタが最終確認が終わった事を知らせてきます。


 最終確認完了を受けてレタの方を見ると、敷物を敷いた上に寝そべったレタが火球砲改2でヒュージスライムに狙いをつけています。

 いよいよ戦闘開始です、飛空でヒュージスライムの上へと移動します。


 上から見ると、下一面がヒュージスライムに覆われています。

 唾を「ゴクッ」と飲み込むと、攻撃を開始します。

 『レタ攻撃用意』覚悟を決めて攻撃を始めます。

 『了解!』レタから気合の籠った返事が返ってきます。


 『攻撃開始!』気合の入った返事を受けて攻撃開始です!

 先ず私から火球改2の魔術を行使して攻撃ですわ。

 「火球よ山成すヒュージスライムを穿て!火球!」私が行使した火球がヒュージスライムへと飛んで行く。

 ヒュージスライムの上で大きな火球が「ドッガーッ」と破裂した。

 と、同時に3方から火球がヒュージスライム目掛けて飛んでいき、攻撃が始まった。

 わたしはヒュージスライムの表面を火球で焼き削って行きます。

 オーナ姉妹は側面を火球で切り落とす様に攻撃しています。


 ヒュージスライム討伐が始まりましたわ。

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