第43話 氷雪の森ダンジョン(2)

 レタがアイとナミに指示して、隊形を取らせます。

 先頭はナミ、次にアイ、そして私、最後尾がレタです。

 縦一列になって、氷雪の森ダンジョンを進みます。


 最初に出会ったのは迷宮毛長白色狼(8級)の群れ6匹です。

 「狼系の魔物です、北より接近6頭です」

 と、レタの警告で、接近する狼の群れは2キロ先から分かっていました。


 近寄って来た所を、ナミのカ式連発小銃で一掃されて終わりでした。

 ドロップは8級魔石6個、迷宮毛長白色狼の毛皮2枚です。


 更に奥へと踏み入れます。

 白マググレイトベア(7級)が出ましたが、レタが警告する前にナミが見つけて1発で仕留めました。

 7級の魔石とグレイトベア(白)の毛皮1枚です。

 どうやら目的地の中級が多い場所へと着いたようです。


 まだ1時間と歩いてないので、まだ昼4時(午前9時)前です。

 空間把握に魔木が見つからないか、注意しながら進みます。

 「レタ、其れらしい魔木が見つかった?」

 と聞いて見ます。


 「お嬢様見つかって居ないでございますです」

 レタにもまだ見つからないようです。


 「よしもう少し奥へ行ってみましょう」

 魔木は魔物の少ない岩場や湿地に多いと聞いています。

 ここは森の木が多いので更に奥の山裾を登った岩の多い場所を目指します。


 2コル(30分)程進むと森の木がまばらになって来て岩の露頭が多くなってきました。

 これまでに狼ばかり出てきて8級の魔石18個に迷宮毛長白色狼の毛皮10枚が手に入りました。


 「お嬢様、魔木らしき魔物を見つけました、右手北東へ1㎞の場所に木の形をした魔物がいますです」

 とレタから発見の報告がありました。


 確かに形は木でも魔石の物質と違う魔力の塊特有の質量が感じ取れます。

 後はトレント系の魔木なのか確かめればわかるでしょう。

 「レタ、初めての魔物よ、注意して進みましょう」

 と自分にも改めて注意喚起を込めて言います。


 魔木の近くなのか他に魔物は居ないようです。

 200mぐらいに近づいた時から魔木の姿が見えてきました。

 「そこらの木と違いが分かりませんね、擬態でしょうか?」

 とレタが不思議がっています。


 魔木の近くの地面にはドロップ品の毛皮や角、牙などが散らばって埋められています。

 魔石が無いのは吸収したか、どこかに口が在って食べたのでしょう。

 「魔木は魔物しか襲は無いのかしら」

 つい口に出してしまいましたが、周りの普通の木や草が刈られていないので植物は食べないのでしょう。


 「お嬢様、枝をご覧ください、動いていますです」

 と、レタが指さして教えてくれます。

 私たちが近づくのを何らかの方法で感知したのでしょう、正確に私達の近くの枝がゆっくりと持ち上がるのを見る事が出来ました。

 感知したのがスキルなのか、振動などの感覚器官による物なのか分かりませんが、何らかの方法で感知したのは確かです。


 100mまで近寄ると最初に動いた枝の周辺の枝もゆっくりと持ち上がり始めました。

 「レタ、初めての魔物ですから、私の土魔術の土砲で魔石を撃ちぬきます」

 と指示を出す。


 「分かりました、お嬢さまお気をつけてくださいです」

 レタ達は周辺の警戒を続けるようです。

 私を中心に三角形を作りました、魔木の方へはレタ、左後ろにアイ、右後ろにナミです。

 「土の形代に円を描け、土のつぶてを放てよ今」

 「土砲」

 初めての魔術の行使なので言の葉で行使します。


 目の前に金属的な1スン(3㎝)程の幅で長さは3スン(9㎝)の円柱が作られて音速で打ち出されました。

 音は「パスッ」とでも言った小さな音でした。

 しかし効果は抜群で、魔木の魔石を抉って魔木に穴を穿ちました。


 魔石が無くなった魔木が枝が全て地面に垂れて動かなくなりました。

 地面の中に張っていた根が縮まって地中から出てきました、やがて「ザザッ」と言う音と共に魔木が倒れてきます。

 地面に「ドォォン」と轟音と地響きを立てて倒れてしまいました。


 魔石を壊すと魔物の体は残るようです。

 この魔木からはどのくらいウルの汁が取れるのでしょう。

 とっても楽しみです。


 近くに魔物が居ないので草を刈って空き地を作りいつものように溝と盛り上げ部分を作ってテントを張ります。

 倒した魔木からどのくらいウルの汁が取れるのか、やってみる事にします。


 魔木は根っこと枝が動けるように動物的な筋肉組織に成っていて、胴体部分が木質で木と同じように年輪があります。

 ウルの汁が取れる部分は、漆の様に木質の樹皮の部分から樹液として取れるようですが、根っこと枝の部分の方がウルの汁を多く含んでいました。


 これは困りました、用意した容器は水なら1グッシュ(約7キログラム)位入る大きさの水甕(木製)です。

 錬金の手ごたえからもっと大量に採れそうです。


 緊急事態なので、近い場所に生えているヒノキの大木を切り倒します。

 私の権能(イオン粒子線)で加減しながら慎重に切り倒しました。

 メドロン君で解体に使ってて良かった、今なら加減がわかります。

 輪切りにした木を刳り貫いて、外も内側も火で焼き、水で洗い、乾燥させます。

 上から乗せる蓋を作って100グッシュ(700㎏)でも余裕で大丈夫なタンクが3個出来ました。


  やっと錬金できます、タンクをトレントの直ぐ横まで転がして行って置いてから、トレントの木に錬金していきます。

 ウルの汁はタンクへと錬金で出していきます。


 根っこと枝から錬金で分離したウルの汁は此の魔木から実に100グッシュ(700㎏)も取れました。


 このウルの汁があってこそ、魔木はトレントとして根っこで歩いたり、枝を鞭の様に振れるのでしょう。

 ウルの汁が強化素材に成るはずです、トレントの動きを強化して1グンド(約7トン)はあろうかと言う重さの木を動かす元なのですから。

 胴体の木質部分も良質な木材に出来そうなので、全て回収します。

 樹皮を剥いで、樹皮からもウルの汁を回収します。


 魔木の事を研究するために、今日はここでキャンプをしましょう。

 魔物は聖域の結界が在れば大丈夫でしょう。


 さて大きな獲物を回収するために必要な物は何でしょう?

 神域の部屋の扉の大きさは出来た時から変わりませんし、変化もありません。

 扉以上の大きさの物を入れる事は出来ませんし、インベントリの魔術を扉に掛けようにも神域の結界が跳ねのけてしまします。


 と言う事で前から考えていた、インベントリの収容力の大きなカバンを作って持ち込むことにします。

 大きさの目安はカモメを収納出来る事です。

 この事があってオウレの町でカモメに会いに行くのを遅らせたのです。

 インベントリのカバン自体の大きさは神域の扉を人が持って通れる大きさが目安に成ります。


 次に重量物を移動させる為のクレーン魔術も作ったので行使します。

 魔術で空間に足場を作り、幾つものクレーンを使って重量物を持ち上げます。

 後は移動してインベントリのカバンへゆっくり入れていくだけの操作が出来れば良いのです。


 カモメを収容する時は船台に成る骨組みを先に入れて置く必要が在りますね。

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