第33話 誘拐同盟(2)
2時間後、偵察バグの魔力が切れたのを機に体制の構築をするための動きを養母様達が始めました。
養母様の指揮で指揮所に成っていた私の部屋は、いつまでも此のままなのは如何な物かとの意見が出て移動することに成りました。
誘拐犯たちの呼称も「誘拐同盟」と呼ぶことにしました、商業同盟は帝国や低地連合国の誘拐犯の国の同盟ですからね。
新しい指揮所で、海軍や自警船の通信の中継の為に中継バードをジュヘイモス近海とオウレ沖の北洋海へ送るようです。
養母様は、私から作ったばかりの中継バードを2機引き取り持っていきました。
モニターと偵察バードと偵察バグのコントロール端末を、用意したもっと広い場所へと移動させ、其れと共にニキとフェンも移動(養母様のお願いw)する事に成りました。
移動する前、わたしの方を見て”助けて”と言いたいけど状況が許さないのは分かるので”何とかして”と顔が言っています。
でも私は何もできません、養母様から動いてはダメと言いつけられていますから。
誘拐同盟の船を追っている
その後、襲撃の為に色々準備する必要が在るのですから。
と言う事で”ごめんなさい”と全身で謝った。
それを見て二人は引きつった顔のまま連れていかれました。
ごめんね、ニキちゃん、フェンちゃんこれを機に隊員を増やす方向で養母様へ要望を伝えますから。
私以外の全員が部屋を出て行くと、私は家(神域の部屋)へと入り、中で待っていた妹ちゃんと交代しました。
妹ちゃんはモニターとコントローラー(端末)を幾つか持って館の私の部屋へ入って行きました。
家に入った私は、急いで飛空服を着ると家(神域の部屋)を
これで
(これって疑似ワープ成功だよね by妹)
(ビチェンパスト国で機会があればしたいなぁと思っていたけど、でもこんな事態だと感動も何も無くなっちゃったね by小姉)
(まぁ仕方がないさ by大姉)
今は夏なので少しづつ暗くなっていきます。
薄闇に紛れて少しづつ船に近寄って行こうと思います。
久しく使っていませんが、ナミへコピーして渡した闇魔術を行使して闇に紛れます。
闇魔術は言葉で行使するのではなく動作で行使する魔術陣の行使なので型をなぞれば行使できます。
薄闇に紛れて下降していきます、船が大きくなってきました、偵察バグの調べでは闇魔術師は船に乗っていないらしいですが、誘拐同盟どもに闇魔術師が居ないはずが無いと思っています。
ですからゆっくりと気取られぬように船に近づいていきます。
空間把握で船に何かあわただしいような動きが無いか監視しながら船の後ろへと近づいて行きます。
船の上に大きな動きは無いようです、とりあえず船尾の見張りから見えない手すりの下へ取り付く事が出来ました。
最初に行うのは、家から手だけを出した
次はナミに出てきてもらいます。
人目の無い船尾楼よりの階段脇へ出した家(神域の部屋)から出ると、彼女がするりと船の闇へと消えていきます。
私は船尾から動かず、空間把握で警戒しながらナミの動きを追います。
そしてナミの周囲の人の動きをレタ経由でナミへ知らせています。
ナミが誘拐された二人の部屋へ着いたようです、ナミが見張りの二人を排除しました。
ここから距離がありますが、家(神域の部屋)は神力を多く使う事でこのくらいの距離なら出す事が出来ます。
ナミが二人を闇魔術で判断力を下げてボンヤリせます。
これは急激な状況の変化にパニックを起させない為です。
家(神域の部屋)の扉からアイとレタが出て二人へ話しかけます。
「助けにきました、もう少ししたらここから出てボートへ乗りますよ」
とできるだけ落ち着いた温かみのある声でアイが二人に話しかけます。
「助け・・・ ああ、助かるの?」
「出れるの、ここから出れるの、家へ帰れるの?」
魔術で判断力を下げているのですが、アイの言葉に希望を持ったようです。
アイの誘導に従って二人が部屋から出て、甲板へと移動を始めます。
ナミが先ほど処理した見張りの男2人を二人が居た部屋へ放り込みます。
レタは二人とアイを追い越して甲板への階段がある場所へと移動し、メドロン君の襲撃を待ちます。
それまでの間、近寄って来る誘拐同盟の乗組員を密かに始末しながらナミは後ろで待機しています。
アイは判断力の低下したエルフの少女たちから船に乗せられた経緯を聞いています、待機の時間を紛らわす目的です。
「誘拐されたのは知っているの?」
「ええ、二人で何時ものお菓子屋さんで買い物をしてて、其れから・・・なんだったかなぁ、思い出せない」
「お菓子を貰ったんだよ、お店の人に、でもそれからどうしたのかなぁ」
「うん、気が付いたら暗い、狭い所だったんだよ、とっても怖かった気がする・・」
「船長とか言う男が、言ってた”獲物が一度に2匹も捕れて儲かった”とかなんとか言ってた」
メドロン君が海底から船底へと近づきました、アイに警告させましょう。
「この柱に捕まってね、船が大きく揺れるからね」
アイの声掛けと、手を取って柱へと誘導することで二人が柱へとしがみ付きます。
レタから準備が出来たと合図があり、私は
(
(了解よ、メドロン君行きます by大姉)
次の瞬間、誘拐同盟の船は座礁したような船底から突き上げる衝撃を受けました。
此の後、船の乗組員達は悲鳴や怒鳴り声を上げて、船内のあちこちから甲板へ上がろうとやってきましたが、ことごとくナミとレタに倒されてしまいました。
この甲板中央へ上がる階段へ来たのは5人程でしたが、甲板には他の階段から上がって来た20人位が今の衝撃が何で起きたのか調べようと海上を見まわしています。
階段への視線が無いのを確認して二人とレタとアイは甲板へ上がります。
甲板へ上がると直ぐにボートを係留している舷側へ向かい、ボートに二人を乗せます。
アイがボートの中へ用意してきた水やそのまま食べられる保存食を10日分いれました。
彼女達の動きにやっと気が付いた乗組員たちが、逃亡を阻止しようと近寄ってきます。
「おい!獲物が逃げるぞ!」
「誰だ、裏切り者か?」
「いそげ、ボートで逃げられる!」
ナミが闇魔術で彼らの頭に黒い雲を張り付かせ視界を奪って行動できなくします。
「闇使いだ!」
「応援を呼べ、船長に知らせるんだ!」
と口々に叫んでいますが、目が見えないので手探りでウロウロするだけです。
その間にアイとレタがボートを海上へ下ろし終わり、ボートは船から離れて行きます。
もちろん偵察バグを3匹ボートに乗せています。
これで回収が終わりましたが、ボートに乗ったままの二人の少女を海軍か自警船に回収してもらわなければ終わりに成りません。
レタ、アイ、ナミをボートの係留場所から家(神域の部屋)へと回収します。
私も船から離れます、再び飛空で空へと上がります。
誘拐同盟の船へは手加減しなくて良くなったメドロン君が今度は必殺の船底への食い破り攻撃を行います。
再び船底を、勢いを付けて今度は本気で食い破ります。
上空へと上昇しながら船を見ていると、真っ二つに割れた船が海中に引き込まれるように沈んで行く所でした。
ボートは二人が乗ったまま漂流しています。
見失ってしまわないように闇をまとって私はボートの近くに居ます。
密かにメドロン君を回収しながら、海の上を眺めます。
誘拐同盟の生き残りがいたらボートまで泳いで来るかもしれません。
しばらくは上空で監視していた方が良いでしょう。
それから2時間ほどボートの上空で待機していました。
誘拐同盟の乗組員で生き残りは居なかったようです。
6時間前私が飛ばした偵察バードが近づいて来たのをレタから知らせてもらい、家(神域の部屋)へと引き上げました。
家へ帰ると、直ぐに着替えて館の私の部屋に居る妹ちゃんと入れ替わります。
入れ替わった後、部屋を出て、新しく指令所に成った部屋を探して通りがかりの人に聞きました。
新しい指令所は養母様の執務室の近くにある客人の控え室に作られていました。
室内では偵察バードを操作しているフェンが船を探して海上を探し回っている所でした。
ニキは上空に待機している中継バードの位置を偵察バードから大きく離れないように操作しているようです。
そこへ私が部屋へ入って来たので、フェンが声を掛けてきました。
「いい所へ来てくれたよ、あのね、船が居なくなってるの中継バードの真下まで来たけど居ないの」
「私にコントローラーを渡して、私がやってみるわ」
丁度タイミングが良かったわ、フェンからコントローラーを受け取るとレタにナビゲートを頼みます。
『レタ、ボートの場所までナビをお願いね』
『はい、わかりましてございますです』
レタの誘導でボートを無事見つける事が出来ました、ボートへ接近すると偵察バグを数匹ボートへと投下します。
無事投下した偵察バグが映像と音を発信し始めると、指令室に何事だと俄かに騒動が沸き起こりました。
モニター画面には誘拐されたエルフの少女が2人、ボートに乗っています。
ボートには他に誰も乗っていません、船は如何したのでしょう?
と言う事で、ボートの凡その位置を調べると、上空に中継バードを貼り付け、海軍で近くにいる船と自警船で魔波通信魔道具を持っている船と連絡を取りました。
今回の件で通信の中継が大きな働きをした事は、ここヴァン国の首都から遠く北の海の北部へ凡そ600ワーク(900km)離れた船まで通信の魔波を直接繋げる事が出来たのですから、間違いありません。
誘拐同盟の船を追いかけて来た海軍の船が中継バードの誘導でボートまで近寄って、ボートの彼女達が助けられたのは其れから5時間ほどしてからでした。
全てのミッションコンプリートです。
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