第30話 シルアルビェッカ村(3)

 1,帝国が艦隊を動かしたらいち早く見つけたい。

 2,偵察バードの行動半径を広げたいので、中継バードを作成したい。

 3,偵察バグを空中投下して運用したい。


 偵察バードが帝国の艦隊をいち早く発見するにはヴァン国の800ワーク(1200km)に及ぶ北の海(外の海の北側)と北洋海(ヴァン国と帝国を隔てる東西に長い海峡)を見張る必要が在ります。


 海上の船を監視して空からの偵察を常時行う事は距離が離れすぎていて魔波の通信では届かない範囲が多くなります。

 そこで考えたのが中継バードです、中継する事により長距離でも偵察バードを派遣して見ることが出来るようにします。


 偵察バグの空中投下は確認したい船を上空がら見るだけでは分からない情報を偵察バグで直接見聞きする為です。


 この3つの目標を達成するためには、偵察バードと中継バードを操作する人が必要です。

 偵察バードで監視して、必要なら偵察バグを投下して情報を集める人と中継バードを操作して常に魔波の中継が出来るように位置を考えて移動させる人の最低でも2人1組となった8組16人が必要です。

 今の所帝国の北洋艦隊を見つけるだけなので、昼の数時間の監視で十分だと思います。

 それに偵察バードが飛べないような嵐などの場合は帝国の船も動けないでしょう。


 そしてこれら中継バードと偵察バードに消耗品の偵察バグを作ってくれる魔道具師も必要ですね。

 これは、魔具省とドワーフの長達の反応から推察すると、オウレの港町に新しく工房を作ることに成るのは確実です。

 私もオウレの町までなら教えに行くことが出来ると思います。

 工房が立ち上がれば、偵察バードも偵察バグも中継バードもそこで作ることに成るでしょう。


 最後に集めた情報を判断し運用する組織が必要です、それが監視局(仮)です。


 情報を集める方法として、通信の中継を7ワーク(1万メートル)以上の高さから行う方法を考えています。

 この中継バードを首都のシルアルビェッカの上空に常に飛ばしていれば北の海から北洋海の東まで中継できます。

 こうして集めた情報は監視局(仮)に集められて、養母様達が判断し指示を出す為のリアルタイムな情報になります。

 偵察バードの情報以外に、自警隊や海軍などから情報は集まると思うので、24時間年中休み無しで監視するような組織を作らなくても良いと思っています。


 ゆくゆくは各市町村に魔通信用魔道具を設置して電話の様に話したり、テレビの様に見たり出来るといいなと考えています。

 その為には地上に通信魔線を全国規模で網羅した設備と冗長性を持たせた運用が必要になるでしょう。


 全国的な通信網と言う目標は莫大な経費が掛かりますので、計画的に広げていければ良いと思います。


 最初に首都シルアルビェッカの監視局(仮)と港町ジュヘイモスの政務宮と港町オウレ・ンオトの海軍本部を繋いだ通信が出来上がれば最初の目標としては十分だと思います。


 さて、私が考えた事を実現する為に少しづつ動く事にしましょう。


 最初にする行動は村の友達の中から100歳以下の友達で遊び仲間の2人を連れてきて説得することから始めます。

 村人は全てヴァン・シルフィードの族名と由来名を持っているので名前だけが他の妖精族から区別する為の自分だけの名です。


 「ニキ、私を助けてほしいの、新しくこの村に監視局と言う名の海を見張る部署を作りたいの」

 ニキとはスオミニキの事で今87歳で私の幼馴染の一人。


 「ねぇカスミ、私眠たいのそんなおっかない名前の部署?知らないわよ」

 とってもつれないです。

 「じゃ名前は見守り隊なら良い?」


 「見守りたい?何をしたいのかなぁ、でも名前がそれなら良いか」

 ニキから了承を貰えたよ、これでフェンも決まりだね。


 「フェンも助けて」

 フェンはフェンスリルの事で彼女も私の幼馴染で今年73歳。


 「ニキがするのならうちも良いよ」

 フェンはニキと常につるんで動くからニキの了承を貰えばフェンが必ず付いてくるのよ。


 これで部隊員2名が決まったよ、後どこかに集まれる部屋か小屋がほしいな。

 でもとりあえず私が使っている部屋でいいかな。


 二人は今家の手伝い以外で若木の集いと言う千百歳以下の若者の集団活動の他に仕事はしていないそうなので明日から私の部屋へ来てくれるように頼んで、最初の人員の募集は終わりです。


 若木の集いとは、聖樹の変以降に生まれた妖精族の若者の集まりで、農作業の手伝いや村の共同作業への参加などの農村で良くある若者の親睦的な会です、参加人数は200人ほどに成ります。

 聖樹の変とは千百年前の聖樹の火災で当時の長達がほとんど死んだ事件を言います。

 この変以降妖精族は意図的に人口を増やそうと頑張っています。


 部屋に戻ると家(神域の部屋)を出してレタに音声画像付与魔道具(モニター)を2台出してもらい、部屋に机も出してその上に設置してもらった。

 これで、ニキとフェンが来たら画像を見ながら説明できるようになりました。

 次に偵察バードを出す、此の偵察バードは最近作った新しい物で偵察バグを収納する箱をお腹に装着出来るように作っています。


 まだ中継バードは作っていないけど、偵察バードがあれば画像と音声で見守りたい活動は出来ます。

 これから毎日24時間はまだ出来ませんが、2人が数時間活動が出来ればそれが内容の見直しなどの参考になるので明日から頑張る積りです。


 と言う事で見守りたいが発足しました、隊長は私カスミです、隊員1号はニキ、隊員2号はフェンが任務に就きます。

 見守りたいの業務内容は偵察バードから送られてきた音声と画像を見て怪しい船を見つける事です。

 その時分からなくても保存した映像から、後で参考になる事が何か無いか研究していくのが目的です。


 隊員も少しづつ増やしていく予定ですが、当分研究と開発が忙しいので現状で行くつもりです。


 部屋に見守りたいの活動用の備品を設置出来たので、次はいよいよ中継バードを作ろうと思います。


 中継バードは対空時間が長い必要があります。

 微弱な魔波を捉えて増幅するか、変換して送信する機能が必要です。

 1万メートル以上の高空を安定して飛行できる性能が必要です。


 以上から飛行機型で風流推進機を備えて、送受信用のアンテナを装備する必要がありますね。

 家の研究室に籠ってその日のうちに1台作り上げました、これが試作機1号になります。


 性能は対空時間が高度8ワーク(12km)で48時間以上飛行可能で地上の偵察バグの送信を先ほどの高度で受信可能です。

 速度を上げるために風流推進機を改良して、空気を取り込む時から回転と圧縮を掛けて段々と圧縮していき後半開放する前に圧縮と圧縮熱で高まった圧力を後方への爆発的な気流として開放する事で推進力にします。

 これで速度を高度8ワークで時速300ワーク(450km/h)まで上げる事に成功しました。

 中継機能は障害物が無ければ600ワーク(900km)先の送受信機と通信が出来ます。


 でも、傍受される可能性は若干でもある為何とか成らないか考えてみたのですが。

 思いついたのが頑固な空間を超えた相関関係です。

 これは、神力を使うので、私達ぐらいしか作れなくなってしまいますが傍受を防ぐだけで無く混信なども防いでくれるので仕方無いでしょう。


 さて作るには時間が係りますね、とりあえず試験運転は今あるこの魔波用中継バードで行いましょう。

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