第29話 シルアルビェッカ村(2)

 ビチェンパスト国の話をするついでにそこで作ったカモメの事や水流推進機など私達の発明品について話すとドワーフの長達が興味を引かれたのか身を乗り出して、詳しい話をせがむのです。

 詳しく話すとなると一度理論的な基礎から解説していかないと成らないので日数がかかります。

 改めてドワーフの中から数人を選んでいただきその人達に教授する事に成りました。

 日程は今後養母様も含めて話し合ってもらう事にして、ビチェンパスト国の話の続きを話します。


 ビチェンパスト国と取引した内容は程んどが穀物の取引なので、ビチェンパスト国で大型船が作られて船団が出来れば試験航海を兼ねてヴァン国へ来るでしょう。

 それに契約は1年で終わるような金額では無いので、今後10年間新造の大型船で毎年10艘程、1隻が約4300グッシュ(300トン)×10で、船用の排水量に使用する1グンド(約7トン)で言えば43グンド(3000トン)が毎年ヴァン国が受け取ることに成ります。


 これについては、私の発明品に対する対価なので全量を私から国が買い上げる事が出来るか、出来たとしてそのまま市場で売って麦の価格が下がって良いのか、疑問が出されて法律やら行政法やら商業法やらの法律談義に成ってしまった。

 ヴァン国の法律では個人の輸入品へ関税を掛けているが、国が必要として購入する物資については関税の対象外となる規定があります。

 この関税対象外に指定して全額購入しようと言うのが彼らの目的です。

 通常の輸入扱いにして関税を輸出入業者と同じに掛けてそのまま市場へ出すのが市場原理に合っているけど、麦の価格が下がってしまいます。

 これは国民の内、小麦の購入者は喜ぶだろうけど、小麦農家は死活問題になってしまうのが問題なのです。


 これは輸入した後、政府が市場へ小麦を放出する時の価格に反映されるからです。

 業者が輸入した小麦の価格と大きな差が無いように価格を設定しなければならないので43000グッシュ(3000トン)もの小麦はヴァン国の小麦の価格を一気に下げてしまう可能性が大なのです。

 これが問題で何とか市場の価格を若干の下げで止めたい政府に対して大量の小麦が入ってきたことを知っている商人が購入価格を下げて来るのは間違い無いでしょう。


 私に言わせれば小麦の価格は最初から高いので、市場へは業者に値付させて出せば、それでいいじゃないと言いたい、農家が困ると言うけど、小麦農家ってヴァン国にどのくらい居るの?少ないのなら補助金でも出せばいいじゃない。

 と言ったら、小麦の購入が増えればカラス麦や燕麦の購入が減るのが問題だと言われてしまった。


 結局大型の小麦用の保管倉庫を作れば良いとなった。

 此の人達って大げさに騒ぐけど、結局は当たり前の結論になるのが分かっていて騒いでいるのよね。

 付き合いきれないわ。


 夕食はみんなで私の帰国歓迎会となった。

 エルフの4人の長官の人達と話したが、妖怪砂掛け婆の仲間だったので這う這うの体で逃げました。

 出来るだけ養母様や伯父様方の影に隠れて彼女達に合わないようにします。

 魔具省の長官はケマル様と言うドワーフの男性なので、ドワーフの長様達と飲んでいます。


 ドワーフの長の一人ホルト様にご子息にジュヘイモスで会った事やその時リアカーを彼が持ち帰っている事を話すと、喜んで祝杯を挙げて息子を褒め始めてしまい、お酒を飲まされそうになったので、ここも急いで逃げ帰った。


 珍しくドワーフの長達が酔いつぶれたので、宴会はお開きになったのですが、お酒が入った為食後の話し合いは翌日に延びることに成りました。


 やっと寝れるけど、その前に行かなければならないと所があります。

 村を出ると聖樹の一つが植わっている場所へと歩いて行きます。

 ミエッダ師匠は3柱で一柱の神として生きているのでどの聖樹でもミエッダ師匠と話せます。

 今回は最も北にある聖樹へ行きます。


 聖樹の前に着くとその幹へ全身で抱き着いてミエッダ師匠へ話しかけます。

 「ミエッダ師匠様、カスミです、魔術の修行を終えてただいま帰りました」


 すると聖樹から直接頭の中へ師匠が話しかけてくれます。

 「カスミ良く帰ってきました」

 「旅に出た時のあなたと今帰って来た時のあなたの成長と変化は素晴らしい物です」

 「あなたにとって良き旅と成ったのでしょう、お帰りなさい」


 私はあの宙に浮く男の話から始めて、数日前の帝国北洋艦隊との死闘までを師匠に、レタ、アイ、ナミや姉ねと妹の事まで包み隠さずに話しました。

 師匠は私が話す間、時々合いの手を入れながら聞いてくれました。


 私は話疲れて寝てしまい、師匠に起こされて部屋へ返されてしまった。


 翌日朝食にブルーベリーのジャムを黒パンに塗って食べるとミルクを飲んで部屋を出ます。

 村に着く前にレタを家(神域の部屋)へ返していたので、私は一人で行動しています。


 朝の村は早起きです、すでに村人は農作業に出かけて居て残っているのは家で片付けや、稼業の仕事を始めている人達ばかりです。


 しばらく知り合いの村人たちの変わらない生活を見学した後、館へ戻り今日の会議に出ます。

 会議は昨日の続きから始めるように言われたので、海賊との追いかけっこから話を始める事にします。


 海賊はヴァン国の船にも被害が出ているそうですが、実質ヴァン国の国民が乗った船は中の海まで行くことは無いので、仕入れを頼んだ商人の船が被害に合うことが多いそうです。


 海賊に捕まった商人なら買い戻す事は良くある話ですが、同じ船に乗り組んだ乗員はそのまま奴隷として売られてしまうそうです。


 今回その海賊を船毎海に何百隻も沈めたので、当分海賊の被害は無くなると皆の意見は一致しましたが。

 私は海賊=ゴキ**だと思っているので絶対少なくなっても直ぐに増えて無くならないだろうと思っています。


 5級のサメの魔物の件は驚かれましたが、魔物の岩山(マグ・イシグ)近辺では最大級の魔物だろうと教えてくれました、そうすると魔物の岩山(マグ・イシグ)近くの海底ダンジョン(妹命名)は中級ダンジョンなのだろうと思います。


 商業同盟と帝国北洋艦隊との私戦については、ジュヘイモスの妖怪砂掛け婆達(政務宮の長官代理達)と同じ判断で、帝国の行動待ちで、戦争の余裕は3年だと判断する所まで同じでした。


 話し終わった後は、私(カスミ姉妹)の発明品の政府への納品依頼の件が話し合われた。

 レタの応援が、今は期待できないので(レタ、アイ、ナミの事は今は秘密にしている)私が頑張るしか無いと気合を入れて話し合いに臨んだのですが、私の提案がすんなり通ってしまったのです。


 私しか作れない物を、強制して作らせても良い結果が期待できないからカスミの提案通りで良いよ、となったのです。


 すんなり決まって、戸惑いはありますが正直助かりました。

 実はこちらから作った物を渡すのを火球砲改と水流推進機と魔道具の操船魔道具だけにして、偵察バードは改造して気流推進機を用いた飛行機へとする積りです、偵察バグもできるだけゴーレム化して、これで作れる人が増えると期待しています。


 1,帝国が艦隊を動かしたらいち早く見つけたい。

 2,偵察バードの行動半径を広げたいので、中継バードを作成したい。

 3,偵察バグを空中投下して運用したい。


 の3つが今後作りたい私の仕事に成ります、ここに居るヴァン国のトップの皆から承認を貰えればすぐに取り掛かりたいと思っていたのです。

 それが、私の思う通りにして良いと皆からお墨付きが出てしまいました。

 とても嬉しいです。

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