第26話 妖怪砂掛け婆

 説明が終わると、内容の精査とダメ出しが始まる予定だった。


 私(姉ねと妹を含む、レタ、アイ、ナミの件は秘密)が発明した件は。

 ・飛空服の作成。

 ・飛空服改造の作成。

 ・火球砲の作成。

 ・火球砲改の作成。

 ・火球砲改2の作成。

 ・カ式連発小銃

 ・合板の作成。

 ・帆走カッターの作成。

 ・水流推進機の作成。

 ・操船魔道具の作成。

 ・偵察バグの作成。

 ・偵察バードの作成。

 ・リアカーの作成。

 ・リアカーの改造と応用。


 出来事は。

 ・迷宮族討伐。

 ・スリ集団の襲撃の撃退。

 ・闇ギルド討伐。

 ・黒の森ダンジョンの子ダンジョン討伐。

 ・イリヤ・オルカ男爵次男襲撃犯の逮捕。

 ・帝都ミンスターでのボネ派3貴族の討伐。

 ・火球砲のドミナント要塞都市での引き渡し。

 ・騎兵50騎の帝国親衛隊の撃退。

 ・リリイとエインと交戦し討伐。

 (二人が皇子アルベルトの側妃でヴァン国エルフのリリイと部下のエルゲネス国エルフのエインだとは、帰国して初めて知った)

 ・帝都で皇子アルベルトの部下ヴァン国ドワーフのバルドと交戦し討伐。

 ・帝都で皇子アルベルトと交戦し瀕死の重傷を負わす。

 ・ビチェンパスト国へ火球砲改の提供50門。

 ・ビチェンパスト国へ火球砲改の操作教授。

 ・ビチェンパスト国へ偵察バードの提供50羽。

 ・ビチェンパスト国へ合板用接着剤のレシピの提供。

 ・ビチェスの海賊と交戦。

 ・アデュパスの海賊と交戦。

 ・サメの魔物討伐。

 ・商業同盟の罠で商業同盟の船2隻撃沈。

 ・帝国北洋艦隊と交戦大型艦が29隻、中型艦が1隻、小型艦が7隻撃沈、大破や中破は分からず。

 ・商業同盟の武装商船(低地連合国の船)を30隻撃沈。


 ここまで話が進んで纏めが終わった頃、私の状態を危ぶんだレタから翌日への延期が申し込まれ夜6時(午後11時)に成っていたので、代理達も渋々了解した。


 (絵柄的に、悪さをした10歳の女の子を母親達が叱っている図に見えるよ by大姉)

 (私、絶対あの人たちの前に出たくない by妹)


 「私から言わせてもらえば、母親に見えると言いますが、代理の人達の中には聖樹と共に降りて来た齢6万歳以上の方々が居られるのですよ!」

 「絶対、口で叶うわけ無いじゃありませんか、私は泣いて良いと思います、最後の方は意識が無かったのでほどんど気絶していましたから」


 『絶対、ご先祖様の妖怪砂掛け婆から目に砂を掛けられて虐められている図が正しいです』

 怖いから、口には出しませんけどね。


 翌朝昼5時(午前10時)より続きの話し合いが始まった。

 今日も、昨日のように精神的に追い詰められて、反撃も出来ずに責められるばかりなのだろうかと、話し合いの場に出るのも嫌で嫌で堪らなかった。


 所が、会議は妖怪砂掛け婆達が言ってきた、私の作った飛空服をヴァン国へ無償で提供させる話から始まったのですが、思わぬ事態が話の流れを変える事に成ったのです。

 切っ掛けは参考に呼ばれたバガーノ・オリガルグ・カーティスと名乗ったドワーフのオリガルグ族の長の息子からでした。


 アイがリアカーに積んで船から持ってきた飛空服に水流推進機や操船魔道具と火球砲、カ式連発小銃、偵察バグ、偵察バードなどの中から、飛空服を最初に部屋へと持ち込んだのです。


 彼は、飛空服を調べて、私に作り方が分からないので教えて欲しいと聞いて来たのです。

 「どのようにしたら飛空服が作られている生地が作れるのか分からん、教えて欲しいのじゃが?」

 「儂にはこのような生地が存在する事自体が想像もつかんのだが。」

 「それに、此の生地に付加されている魔術はさっぱり分からん、こんな魔術はこれまで見たことも聞いたことも無い。」

 「せめて此の生地が何から作られているのかだけでも教えてくれないだろうか?」

 あまりにも切々と言うものだから、ついほだされて原料の加工方法を言ってしまった。


 「それは魔金属4種類をそれぞれ糸状にして魔糸を夫々の魔金属の糸にコーティングして糸としてよりあわせているのです」

 私が生地の作り方を言うと、バガーノ氏は驚愕したのか、張り裂けんばかりに目を開き、首左右に振りながら叫んだ。


 「そんなこと、そんなことは不可能じゃ、い、いったい、糸だと、魔金属を糸にどうやったらできるんじゃ!」

 「ミスリルだぞ!、ミスリルだけでも糸に何かできん!!、精々純度を落として、鎖にするぐらいじゃ、それなのに、糸にするじゃと」

 「そんなこと不可能じゃ!!!」と私に向かって叫んだ。


 正面から大声と唾を浴びることに成った私は吃驚して

 「キャアー!」と情けない悲鳴を上げて逃げ出した。


 レタは何処からかタオルを出してきて私の顔を拭くと、未だに声を上げて飛空服を振り回しているドワーフのバガーノにボディーブローを一発入れた。

 「グォー!!!」と腹を抑えてのたうち回るバガーノ。


 それを見て後ろへと後ずさる妖怪砂掛け婆達、昨日のキャットファイトを思い出したのか、引きつった顔をしてレタとバガーノ氏を交互に見ている。

 結局昨日はレタの壁を超える事は出来なかったのを思い出したのだろう。


 「カスミ様に汚い唾を付けるなど万死に値するでありますです!」と言い放つレタ。


 「グォー、わ、悪かった。」と腹を押さえて蹲りながら、何とか声を出す事が出来たのは、さすがドワーフ頑丈さだけは樹人一番と言われるだけはあります。

 

 此の件が切っ掛けと成って、私しか作れないのなら提供はしないとレタが宣言した為。

 レタを恐れてか、作るのは私しかできないのなら無理に作らせようとして養母様の不興を買うのは不味いと思ったのか分かりませんが、提供の話は振り出しに戻って。


 養母様が帰って来てから話し合いを行って結論を出すのでそれまで保留とか言い出したのです。


 それをレタが「提供する話は今後一切言って来ても無視します」

 とダメを出して無理矢理結論を宣言して終わらせたのです。


 ただ不屈の復活を遂げたドワーフのバガーノ氏が

 「飛空時の翼の働きの理論だけでも教えてほしいのじゃが」

 と言ってきたのには新しい知識への貪欲までの好奇心に驚きました。


 「申し訳無いのですが、首都の長(王)様達とこの後直ぐに話す必要が在りますので、今は時間がありません」と断った為、しばらく休むからとダメージを癒す為に部屋の外へと出て行った。


 一度レタによって及び腰になってしまった事はこの後の話し合いに影響したようで、妖怪砂掛け婆達の腰が引けてしまったようです。


 合板は接着剤のレシピの提供と船工房での試作をする事に成りました。

 ただしビチェンパスト国で既に知られている技術なので、ヴァン国で管理せずに市販を渋々ながら認めて、試作の工房もこちらで選ぶ事になりました。


 帆走カッターは設計図の提供を迫られたのですが、私の発明だとレタがにらむと、腰が砕けたのかこちらの自由にして良い事に成りました。

 まぁ新型とはいえ帆船の船なので、水流推進機を前にして大した事では無いと判断されたのだと思います。


 アイが飛空服を持って部屋から出て行き、リアカーに積んで戻ってきました。

 リアカーには飛空服の他に水流推進機と操船魔道具と火球砲とカ式連発小銃と偵察バグと偵察バードが船から持ってきたまま積んでいます。


 これを見て妖怪砂掛け婆達は此れだけは如何あってもヴァン国へ作成方法の提供と開示を要求すると強気に言ってきたのです。


 所が、復活してきたドワーフのバガーノ氏が再び「これは、ハイドワーフの人達が生きていたとしても作れるようなものではありません。」

 「これと比べれば先ほどの魔金属の加工法の方がまだドワーフに作れる可能性があるでしょう。」

 と既に諦めているのか、今度は冷静に妖怪砂掛け婆達へ説明している。


 妖怪砂掛け婆達も絶対欲しいと迫っていた件が、又もドワーフでも作れない私の発明だと分かり、落胆したようです。


 ここら辺から流れがこちらに有利に進むようになりました。

 妖怪砂掛け婆達が私の発明品の作成方法の開示は諦めたのでしょう。


 でも妖怪砂掛け婆達は提供させる事までは諦めていないようで、後で結論を出すのでそれまで保留したいといってきたのです。


 それに対してレタが「先ほども言ったようにカスミ様の発明した物に対して何を言って来ても無視します」

 「それに今後一切の協力もしません」

 と一方的に宣言したのです。


 その為、ヴァン国の方は軍務省と養母様が帰ってから話し合う事にすると言って来ても無言を持って対応したのです。


 私もレタと同じ気持ちなので無視する積りです。

 もともと私の考えは、火球砲改はある程度提供して、提供する場所と相手はこちらでコントロールする積りでした。


 無言で対応されて、妖怪砂掛け婆達も困ったようですが、強引に次の議題に進むことにしたようです。

 リアカーについて話を進めると言ってきました。


 アイが飛空服や水流推進機、カ式連発小銃、偵察バードなどを積んだリアカーです。


 リアカーは市販する事に急遽なりました。

 あまりの技術的差に気落ちしていたドワーフのバガーノ氏が、リアカーの実物を見た途端市場へ出すのなら自分に任せて欲しいと言い出したのです。

 結局対応はレタに任せる事にして、後で船へリアカーを引き取りに来たいと言ってきたのです。

 結局リアカーでは無く、見本として軽車両の方を提供することに成り、昼12時までに船に取りに来ることに成りました。


 作ったものについては終わったので、ドワーフのバガーノ氏はいそいそとリアカーの作成準備の為に帰って行きました。


 私の発明品の話し合いは私に無視されて終わりました。

 次のやらかした出来事について話し合う事になりましたが、その前に昼の休憩を取ることに成りました。


 長官代理の砂掛け婆達から離れ、私とレタとアイで食事を取る為用意された部屋へ移って食事にします。


 ご飯にとアイが持ち込んだのがこの夏に取れたての新ジャガイモを荒くマッシュしたポテト。

 取れ立ての魚をツミレ風にミンチにして捏ねて丸くした魚のミートボールを入れたスープ。

 薄くスライスしてジャムを塗った岩石パンです。


 食べてみるとマッシュポテトにはバターと野イチゴのジャムが使われていて意外とジャムがジャガイモと会っていて美味しかったです。

 それに魚のミートボールが入ったスープには酸味のあるハーブが混ぜてあり食欲をそそるおいしい昼食でした。


 昼8時(午後1時)から話合いの続きです。

 会議の最初に旅の間の出来事の前半のほとんどは妖怪砂掛け婆達には関係ない事なので、帝国首都へ向かう途中からの騒動から始めると言ってきました。


 最初の方は問題無い事なら何で昨日あんなにシツコク聞いて来たんだと聞くと。

 聞かないと分からんだろうと返されて、理屈だがあそこまで詳細に聞く必要はないはずです。

 (ホントに、何であんなに根堀葉堀聞いたんだと言いたい by小姉)


 実際に会議が始まると、帝都でのボネ派とやりあった件からリリイとエインの件までは、ヴァン国大使の了承の元に行動しており当時の部下達への指示も適正だと認められた。

 (ホントに、以下同文・・・)


 皇子アルベルトとバルドとの私的交戦は、帝国が表沙汰にしていない以上、ヴァン国として何らかの行動をする訳には行かず、判断は保留になった。

 (以下同文・・・)


 ビチェンパスト国との取引は私の発明品であることから、議題を飛ばす事になりました。

 妖怪砂掛け婆達は口や手を出したい様子でしたが、私がこの件について完全に無視したので諦めて次の議題へと変わりました。


 海賊との闘いは問題無く現状を認知して終わりました。

 相手は海賊ですから討伐は称賛こそあれ問題になんてなるはずがありません。

 魔物の討伐も当たり前ですが問題にも成りません。

 次の商業同盟の罠を仕掛けた船2隻の撃沈は魔物の仕業と思われているので、議題に成りませんでした。

 (以下・・・)



 やはり問題は先日の北洋艦隊と低地連合国の武装商船との戦闘ですね。

 一応名前を付けました「北洋海戦」です。


 妖怪砂掛け婆達が懸念しているのは、北洋海戦の敗北で帝国が如何動くのか、商業同盟の出方も不明なのは気になるところです。


 戦力からの判断をするなら、帝国は北洋艦隊の主力を失い、立て直すのに平時なら10年は掛かると見られる程の痛手を被ったと判断できますが、帝国が本気で補充しに掛かれば3年で元に戻るだけの生産力を持っていると見ています。


 低地連合国の方は、商船を武装するだけですから1年もしないで元に戻せるでしょう。

 それに低地連合国とはヴァン国から犯罪へ加担する国として取引の禁止を行っているので今更でしょう。


 問題は帝国の政治的な動きですが、帝国にあるヴァン国大使館には新しい大使が赴任しているので、帝国が交渉をするのは先ずヴァン国大使となるでしょう。

 帝国はヴァン国に大使館などの出先機関を作っていないので、帝国のヴァン国大使としか話し合えないのです。

 その為、帝国の反応を待って対応を考えても遅くないと思います。


 単純に考えても宣戦布告は無いでしょう、ヴァン国への渡航手段の戦力を失っていますから。

 宣戦布告しても制海権を取り戻す為の戦力が戻る3年先まで今と同じ戦争状態が続くだけです。

 カモメが居るので、今帝国が全土から船をかき集めても「北洋海戦」の二の舞になるだけです。


 帝国として取れる手段は、小麦などの輸出を制限するぐらいです。

 幸いなことにビチェンパスト国から小麦を10年間輸入できるので、問題にならないでしょう。

 ヴァン国として不利な条件は3年後にある戦争に備える必要がある事でしょう、戦争ですから負担が大きいのです。

 その中にはカモメ級の船を増やす事も入ります。


 3年後の戦争では帝国の艦船の装備に変更が無ければ「北洋海戦」と同じ結果に成ります。

 帝国は大砲の装備を増やすしか対抗手段がありません。

 大砲だけで無く、ガレー船から推進機関を備えた自行船に出来るかが勝利の分かれ目になるでしょう。


 以上を踏まえてヴァン国の今現在での対応は帝国からの対応待ちとなりました。


 図らずに私が北洋艦隊を壊滅させたことが、戦争を先に延ばす事になりました。

 (実際に戦争が迫っていたのかと言う疑問はあるけどね by大姉)

 (でも北洋海戦の前までは帝国が制海権を間違いなく持っていましたよ、今はヴァン国が持っていますね by小姉)

 (帝国は何時でも攻められる力を持っていたので、ヴァン国は帝国から脅迫されれば戦わずに王族を帝国に引き渡したでしょうね by小姉)

 (その危険性を排除できたのですから、妖怪砂掛け婆達も文句の言いようも無いのですよ by小姉)

 (でもアルベルトが次期皇帝となれば間違いなく攻めてきますよ by妹)

 (それは何年先なんだ? by大姉)

 (分かんない、10年先? by妹)

 (今は3年は戦争が無いと言えるのですから、その間に用意すれば良いのですよ by小姉)


 戦争が避けられない事を妖怪砂掛け婆達が認めることは彼女たちには業腹な事だと思います。

 私は妖怪砂掛け婆達は帝国から王族の姫を寄こさなければ戦争すると脅されて過去に実際に王族の娘を渡した事があるのではないかと密かに懸念しています。

 養母様がそのような事を許すはずがありませんから、密かに事故として処理されているのではないかと(聖樹の燃えた件や父母の事故など、他にも知られていない事件があるかもしれません)彼女達の対応を見て感じました。


 妖怪砂掛け婆達への疑惑は私の単なる感でしかありません。

 首都へ移動したら、その辺も調査してみる積りです。


 さて、会議も終わって、今後3年間私も忙しくなりそうです。

 これで帝国が宣戦布告するのなら、もう一度カモメで帝国の港へカチコミを掛けて差し上げますわ。

 今度は、空からの火球改2での爆撃で工廠毎破壊して差し上げます事よ。

 (だめだこりゃ by大姉)

 (昨日の件が引き金に成ったのね、きっと by妹)

 

 今後は戦争が始まるまでのヴァン国の戦争準備は彼女達に任せ、私は偵察バードと偵察バグを使った警戒網の構築を進めることにしましょう。

 攻めて来る帝国の船をいち早く見つけられるかが重要になります。

 私はその為の権限と施設や人員が使えるように首都へ早く帰って王様達と話し合いをしなければ成りません。

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