誘拐同盟との闘い

第25話 ヴァン国到着

 港町ジュヘイモスにやっと着きました。

 桟橋へ係留するために、桟橋に居た人に手続きについて聞くと、その人が係官でした、入国早々幸先の良い事でしたね。

 その人に入国の手続きをお願いして検査官を待つことにしました。


 ヴァン国はひらがなの”へ”の字を左右を逆さまにして、線を太くしたら似た感じになります。

全長は東西に800ワーク(1200km)、線の太さは南北300ワーク(450km)程になります。

 港町ジュヘイモスはこの長い方の端っこにあります。


 この港はヴァン国で一番大きい町であり、人口も20万と大都市と呼んで良いでしょう。

 副首都として国の行政機能を司る政務宮があります、長は王の一人で養母様です。

 人口の内訳は、人族が最も多く15万人、エルフが4万でドワーフが残り1万以下です。


 ヴァン国全体でも人族が最も多く200万の内130万人になります。

 次にエルフで70万人ほどいます。

 ドワーフは1万人が全人口です。

 妖精族に至っては500人ほどになります。


 ヴァン国の人族は、エルゲネス国と違ってエルフやドワーフ、妖精族との子は少なくて、ほとんどが純粋な人族だと考えられています、これは男性のエルフがほとんどエルゲネス国に居るから人族との間にエルフ系の人族が生まれ無いからです。

 ドワーフの女性も似たような事情で、男性のドワーフが囲い込んでしまい表に出て来る事は殆ど無いのです。


 女性のエルフが生むのはエルフだけですから、夫の男性がどの種族でもエルフは多いです。


 ドワーフは港町ジュヘイモスにほとんどが住んでいます、残りはヴァン国海軍の大半が在る港町オウレ・ンオトに船工房を営んでいます。

 その他には、国内の需要を満たすために幾つかのコースを定めて年に数回は訪れる事が出来るように村々を巡回しています。

 これをキャラバンと言いますが、ドワーフ以外に商人や政務宮の役人も同行しています。


 さて港で港湾管理事務所内にある入国管理所に入国の手続きをする事に成りましたが、関税と検疫検査の為カモメに3人の検査官がやって来て船内を一通り見て回り、私達に体調を聞いて熱などが無い事を聞いてあっさり帰っていきました。


 桟橋への係留費などの支払いの為、港湾管理事務所へレタと訪れると見知った人がいます。

 ヴィラ大使様で今は国に帰ったので前の役職の商工省長官の秘書として働いているそうです。


 そのヴィラ秘書様がなぜここにいるのかと言うと。

 商工省の仕事に関税の管理運営があるそうで、そこから私達の事を知った商工省長官代理から私達の迎えに派遣されたそうです。


 私はそのままレタと一緒に政務宮へとヴィラ秘書が乗ってきた馬車で連れていかれた。

 (お招きすると言ってなかったか? by大姉)

 (引け目のあるヴィラ様に言わせるなんて断れないではないですか by小姉)


 政務宮では商工、農務、魔具、軍務、総務の各省長官代理が出迎えていた。

 一体何事だろうと町の人が集まって騒いでいる、そんな中に馬車で乗り付けた訳だから皆から注目されるのは当たり前だよね。

 (騒ぎになってるけど、態と注目されるように演出してるのかしら by小姉)


 馬車を最後に降りると、長官代理の5人の内総務省長官代理が一人前に居て、後ろに4人が控えて膝をついて出迎えている。

 彼女らの足元には、拡声の魔術陣が書かれているので、大声を上げる必要が無く集まった人々へ声が届くようになっている。


 「カスミ姫様、お帰りなさいませ、姫様のお帰りを一同首を長くしてお待ち申しておりました」

 と5人が一斉に唱和すると、集まった群衆も拡声された彼らの声が聞こえたのか、一斉に歓声を上げた。

 (引くわ!なにこれ、演出過剰よ by小姉)


 仕方なく、総務省長官代理の前で挨拶をする(2度出迎えの人達と目の前の長官代理の人達へカーテシーを軽くする)とはっきりした声で集まった群衆へ帰国の挨拶を述べる。

 「出迎えありがとう、カスミ・マーヤニラエル・ヴァン・シルフィード、ただいま魔術師としての修行を終えて帰国しました。」


 声が聞こえたのか歓声が上がった。

 「「おかえりなさい」」などのこえが聞こえて来た。

 集まった群衆に向かって軽く微笑み、手を振ると、更に歓声が強くなる。

 この政務宮の前に集まった人達は、昨日の海戦を分かって歓声を上げているのだろうか?

 歓声が続く中、戦争の近づく気配を感じて無さそうな平和な人々の顔を見ていると、これから政務宮の長官代理達へ告げなければならない内容とこの演出の差に少し苛立ちを感じる。


 拡声の魔術陣が書かれた政務宮前の一角に立ちながら、今歓迎して呉れている人々が、私が引き起こした事態を知っても私を歓迎してくれるのだろうか、と思っていた。


 集まった群衆に向かって手を振るのを止め、軽く微笑むだけにすると、ゆっくり振り向いて小さく長官代理の人たちに聞こえる声で「お出迎え下さりありがとうございます、どうぞお立ち下さい」と声を掛ける。


 皆で政務庁の貴人の間へ移動すると、改めて帰国の挨拶と、出迎えのお礼を言ってから、長官代理の人達へ報告しなければならない事を纏めて報告する。

 「戦争状態になりました」


 簡単だけど適格な報告をすると、皆ぽかんとした顔でこちらを見ているだけで何を言われたのか理解が及ばないようです。


 辛うじて軍務長官代理のカノニーネと名乗った人が質問することが出来た。

 「姫様それはヴィラ殿の報告にあった件で、とうとう帝国が正式に宣戦布告したと言うことですか?」

 「それにしてもヴァン国へ正式に通達しないで姫様に言ってくるとは、どうなっているのだ?」


 「戦争状態になっただけで、戦争になるのはまだです」

 「それに、戦争状態になったのは帝国だけではなく低地連合国ともです」

 と言ったら、5人が5人とも喋りだして、収集が付かなくなってしまいました。


 長官代理の人達が立ち上がり、私に向かって説明させようと近寄って来たので、レタが前に立ち塞がり邪魔をしたので図らずも盛大なキャットファイトが発生してしまいました。

 長官代理の人達は全てエルフの女性です。


 後ろへ下がってキャットファイトのつかみ合いから逃げようとしたら、誰かに捕まってしまいました。

 そこには、良い笑顔のヴィラ秘書様がガッチリと私を捕まえていらっしゃいます。


 「姫様、言葉がとても足りないようなので、これからじっくり説明していただけますよね」

 笑顔って怖いと心底思いました。


 その日の夜遅くまで、政務庁に缶詰にされてこれまでの旅間での騒動の全てをセルボネの町からビチェンパスト国の首都パストの出来事まで、更に船旅の途中での海賊や魔物、商業同盟、帝国の北洋艦隊との闘いまで思い出せるだけ、根堀葉堀吐かされました。


 「姫様、歓迎の出迎えが気に入らないと、意趣返しに説明を省くなど幼稚な真似を!詰問されて当然ですぞ!」


 「でも、あの歓迎は遣り過ぎだと思います」と私。

 「何をおっしゃる、1国の姫のご帰還に出迎えないなどありえませんぞ!」

 「あれでも事前に連絡があれば最っと正式な型で行えたのですぞ、それを知らせも寄こさずに・・・・」


 「姫様、今一度先ほど言われた事をもっと詳しく説明してください、最初から一つ一つ振り返りながらですぞ」


 「先ほども説明しましたが、襲撃されて仕方なく反撃したのです」と私。

 「姫様、先ほど言われた事の中で襲撃に至る経緯を詳しく説明してください・・・」


 「帝国にヴァン国にも無いような新式の火球砲などと言う物を貸与する事に成ったのは、姫様が言われた事が発端だと聞きましたが」

 「ですから、火球砲はヴィラ大使が穀物との交換に帝国へ貸与する為に作ったのです」と私。

 「姫様、火球砲など誰もそのような物は前の聖樹様の時でも知りませんでしたぞ、性能を聞けばビチェンパスト国へ与えるべきか判断するのはヴァン国の我々ですぞ」


 「姫様、何を一人で判断されているのですか、対帝国はヴァン国の国として対処するのが道理と言う物ですぞ」


 「それは・・・」と私。


 「姫様、あなた様の作られた発明品は素晴らし過ぎて国家に影響が多大な事はお分かりですか?」


 「でも、・・・・」と私。


 「姫様、勝手にビチェンパスト国と取り決めされては困ります、もう一度その内容を話していただきますぞ」


 「・・・・・」;;。


 「姫様、勝手に帝国の北洋艦隊と私闘されるなど、ヴァン国を帝国と戦争させる事になりますぞ」


 「・・・・」;;。


 「姫様、商業同盟への行いは痛快に思いますが、相手の今後の反応を考えるといただけませんな」


 「・・・」;;。


 「姫様、もっと考えて行動なされよ」


 「・・」;;。


 「姫様、判断が甘い、子供ではあるまいに反射的な判断では其の身を危うくしますぞ」


 「・」;;。


 「姫様、もう一度最初からお話いただきますぞ」


 「」;;。


 (もういや、私の耐久力はゼロよ全くのゼロ! by小姉)

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